都市計画税とは、1月1日時点において市街化区域内で土地や家屋を所有する人に対してかかる税金を指します。都市計画事業や土地区画整理事業を進めることを目的とする点が、特徴のひとつです。
都市計画税は固定資産税と一緒に納めるため、あまり意識されにくい税目ですが、実は「支払い対象となるエリアが限定されている」「目的が決まった税金である」など、特徴的な側面があります。また、近年は都市整備や再開発が各地で活発化しており、都市計画税の役割があらためて注目されています。
本記事では、都市計画税の計算方法や特例についても解説します。
都市計画税とは
都市計画税とは、市街化区域内の土地や家屋に対し、市町村が課す税金です。ここから、納税時期や納税義務者について解説します。
納税時期
一般的に、都市計画税は第1期・第2期・第3期・第4期の4回に分けて支払います。
2025年度の東京23区の場合、納期限はそれぞれ6月30日・9月30日・翌年1月5日・3月2日です。自治体によっては、納税通知書が届く日と第1期の納期限の間隔が短いことがあるため、支払い漏れのないよう注意しましょう。
なお、納税者が希望する場合は、一括払用(全期用)納付書などを使用して1年分をまとめて支払えます。
納税義務者
都市計画税の納税義務者は、1月1日時点で市街化区域内に土地や家屋を所有している人です。
都市計画法が指定する都市計画区域には、「市街化区域」と「市街化調整区域」があります。市街化区域は「すでに市街地を形成している」区域と「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき」区域を指すのに対し、市街化調整区域は「市街化を抑制すべき」区域です。それぞれが居住する市町村の発展のために、市街化区域内の土地・家屋に対して税金が徴収されています。
なお、総務省によると、2024年度は土地に2,247万人、家屋に2,818万人が都市計画税を納めているとのことです。
居住エリアが市街化区域内か確認する方法
これから住居を構える予定がある場合や、住宅を新築・購入したばかりの場合は、不動産会社に尋ねれば市街化区域内に該当するか教えてもらえます。また、自治体の窓口に連絡することでも、確認できるでしょう。
さらに、調べる自治体によっては、ホームページで市街化区域に該当するか、市街化調整区域に該当するか自分で確認できることがあります。例えば、横浜市では「iマッピー(横浜市行政地図情報提供システム)」を使用して、どちらに該当するか確認可能です。
参考:横浜市「横浜市行政地図情報提供システム」
都市計画税と固定資産税の違い
都市計画税と固定資産税の主な違いは、対象となる固定資産です。都市計画税は土地・建物が対象であるのに対し、固定資産税は償却資産の所有者にも税金がかかります。
また、都市計画税はかかる対象が「市街化区域内」に限定されている点も違いです。固定資産税は、物件が所在するエリアにかかわらずかかります。
さらに、税金を使う目的があらかじめ決まっているかも、都市計画税と固定資産税の違いです。都市計画税は政策目的を遂げるために使途が定められている「目的税」であるのに対し、固定資産税は使途が定められていない「普通税」に該当します。
なお、建築途中の家屋は課税の対象外である点や、不動産売買の際に買い手が売り手に税金の日割り精算分を支払うことが一般的である点は、都市計画税も固定資産税も共通していることです。固定資産税の詳しい内容や日割り精算が必要な理由などについては、以下の記事をご確認ください。
固定資産税とは支払時期・計算方法や納税の流れについても解説
都市計画税を使う事業
自治体は、徴収した都市計画税で以下の事業を進めます。
・都市計画事業
・土地区画整理事業
各事業について、解説します。
都市計画事業
都市計画事業とは、都市計画施設の整備に関する事業と市街地開発事業の総称です。
都市計画施設の種類には、交通系・公共施設系・生活系があります。交通系の具体例は道路や駐車場、公共施設系の具体例は公園・広場・墓園、生活系の具体例は上下水道・電気・ガス・ゴミ処理場などです。
一方、市街地開発事業の種類として、工業団地造成事業や市街地再開発事業などがあります。工業団地造成事業は、工場を計画的かつ集団的に立地した工業団地を造ることを目的に、敷地造成や道路・排水施設などを整備する事業のことです。また、市街地再開発事業とは、市街地で老朽木造建築物が密集している地域で敷地の統合・公共施設の整備などを進めて、土地の合理的かつ健全な利用や都市機能の更新を図る事業を指します。
土地区画整理事業
土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地における公共施設の整備改善や宅地利用の増進を図るために、土地の区画形質の変更・公共施設の新設などを進める事業のことです。事業は、土地区画整理法に従って進めなければなりません。
なお、都市計画税を課税するかどうかは、各市町村の判断に委ねられています。ただし、課税する場合は、別途条例を制定していることが必要です。総務省によると、2023年度における都市計画税の税収は1兆4,102億円でした。
都市計画税の計算方法
都市計画税を自分で計算できるように、計算式や計算例を紹介します。
計算式
都市計画税の納税額は、以下の式で計算します。
・都市計画税(円) = 土地・家屋の課税標準額 × 税率(0.3%以下)
課税標準額とは、固定資産課税台帳に記載されている評価額に基づき算出する額のことです。課税標準額の合計額が免税点(土地:30万円、家屋:20万円)に満たない場合は、固定資産税も都市計画税もかかりません。
なお、税率は各市町村で異なりますが、0.3%を超えての設定はできません。自分で計算する際は、必ず対象の自治体の税率を確認しておきましょう。
計算例
土地の課税標準額が350万円、家屋の課税標準額が400万円のケースで、税率を0.3%と仮定して都市計画税を計算してみましょう。いずれも免税点を上回っているため、都市計画税がかかります。
土地の都市計画税は1.05万円で(350万円 × 0.3%)、家屋の都市計画税は1.2万円(400万円 × 0.3%)です。そのため、合計で2.25万円の都市計画税がかかります。計算の過程で端数がある場合の処理は、課税標準額の時点で千円未満切り捨て、税額で百円未満切り捨てです。
なお、特例を適用できることがあるため、自治体によって計算方法が異なる場合があります。
都市計画税を納税する方法
都市計画税は、固定資産税と一緒に納付します。自宅に納税通知書が届いたら、納税の手続きを進めましょう。
固定資産税・都市計画税の主な納税方法は、以下の通りです。
・スマートフォン決済(バーコード読み取り・QRコード読み取り)
・クレジットカード払い
・口座振替
・窓口支払い(金融機関・自治体の役所・コンビニエンスストアなど)
なお、領収書が必要な場合は、窓口での支払いが必要です。
都市計画税が減額される特例
都市計画税が減額される特例は、主に以下の通りです。
・小規模住宅用地の特例・一般住宅用地の特例
・自治体独自の特例
それぞれ解説します。
小規模住宅用地の特例・一般住宅用地の特例
住宅用地の場合は、小規模住宅用地の特例や一般住宅用地の特例を適用して固定資産税と同様に税額を軽減できます。
都市計画税における小規模住宅用地の特例とは、住宅1戸当たり200平方メートル以下の住宅用地に対する課税標準額を3分の1にする制度です。また、都市計画税における一般住宅用地の特例とは、住宅1戸当たり200平方メートルを超える住宅用地に対する課税標準額を3分の2にする制度を指します。例えば、190平方メートル以下の住宅用地で評価額が300万円の場合は、課税標準額が100万円です。
なお、軽減できる割合は、固定資産税と都市計画税で異なる点に注意しましょう。
自治体独自の特例
物件が所在する自治体によって、独自の特例を適用できることもあります。具体例は、「東京23区内の小規模住宅用地における都市計画税の減額」です。
2025年度に、東京23区では住宅1戸当たり200平方メートル以下の住宅用地にかかる都市計画税について、税額の2分の1を減額しています。そのため、仮に都市計画税の課税標準額に基づき小規模住宅用地の税額が2万円と算出された場合でも、実際にかかる税額は1万円にまで減額されるでしょう。
都市計画税は市街化区域内の土地・家屋の所有者にかかる税
都市計画税とは、市街化区域内の土地や家屋の所有者に対してかかる地方税です。1月1日時点で、登記簿などに所有者として登記されている人が課税されます。
都市計画税は目的税のため、使途が定められている点が固定資産税との違いです。また、都市計画税は「市街化区域内」と限定されているため、土地・家屋を所有していても所在地によって固定資産税しかかからないことがあります。
納税義務者は、都市計画税を毎年4回もしくは1年分をまとめて納付しなければなりません。納期限に間に合うよう、スケジュールに入れておきましょう。
参考:東京都「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
参考:総務省「都市計画税」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。