火災保険の2025年問題とは、2015年に10年契約を締結した人が2025年に満期を迎え、更新時には最長でも5年間までしか契約できなくなることを指します。更新の手間や保険料の値上がりなど、影響は少なくありません。
近年、自然災害の激甚化やインフレの影響により、火災保険料が全国的に上昇傾向です。さらに、保険期間の短縮や2025年の大量更新を背景に「何も対策をせずにいると無保険期間が発生してしまうのでは」と不安を感じる人も増えています。
本記事では、火災保険の2025年問題の背景や発生する課題、そして更新時に押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。住宅を保有している方や更新時期が近づいている方は、ぜひご参照ください。
そもそも火災保険とは
火災保険とは、住まいが火災の被害にあった際の損害を補償してもらうために加入する保険のことです。一般的には、火災に加えて水災(豪雨による洪水や土砂崩れなどの被害)や風災(強風や暴風による被害など)も補償対象に含まれます。
ここで、火災保険の仕組みや関連する保険について押さえておきましょう。
仕組み
火災保険は、補償対象の災害の被害にあった場合に、契約時に設定した保険金額を限度額として、保険金が支払われる仕組みです。契約者は、保険期間中に一括・年払・月払で保険料を支払います。
火災保険で損害が補償される可能性がある主な災害・事故は、以下の通りです。
・火災
・落雷
・破裂・爆発
・風災
・ひょう災・雪災
・水災
・水漏れ
・盗難
・破損・汚損
保険商品などによって補償内容が異なるため、契約時に必ず確認しておきましょう。
なお、火災保険は損害保険の一種に分類されます。
関連する保険
火災保険の補償対象として、建物と家財があります。
「建物のみ」で契約すると、高価な家電や家具の被害については補償されません。テレビ・冷蔵庫・ソファなどの補償が必要な場合には、家財補償(家財保険)もセットで加入します。
また、火災保険だけでは地震による被害をカバーできません。地震・噴火・津波による損害の補償を受けるためには、地震保険への加入が必要です。地震保険を契約する場合も、建物のみを対象にするケースと、家財もセットで対象とするケースがあります。
なお、火災保険に加入せず、地震保険単体だけでの加入はできません。
火災保険の2025年問題とは
火災保険の2025年問題とは、火災保険に関する保険期間が「2015年10月に最長36年から10年まで短縮されたこと」と「2022年10月に10年から5年に短縮されたこと」に伴い、2025年に生じうる問題のことです。
まず、2015年に契約した人たちが、10年後の2025年に一斉に満期を迎えます。また、2022年にさらに保険期間が短縮されたため、今回の更新時では長くとも5年でしか契約できません。
2025年問題で困ること
火災保険の2025年問題で困ることは、主に以下の通りです。
・更新に手間がかかる
・保険料が高くなる
それぞれ解説します。
更新に手間がかかる
契約者は、2025年問題が発生することに伴い、更新に手間がかかる点で困るでしょう。
無保険で災害リスクをカバーできなくなることを防ぐため、満期を迎えるまでに更新や切り替えの手続きが必要です。一般的に、更新手続きは以下の流れで進めます。
1. 契約している保険会社から満期の知らせを受け取る
2. 補償内容を確認する
3. 更新する
更新する際は、「書類に記入して郵送する」「インターネットで入力する」「保険代理店の担当者と対面で手続きする」などの方法があります。2025年問題で更新する人が続々と現れて担当者が対応しきれない可能性があるため、対面での手続きを希望する場合は早めに代理店に相談しなければなりません。
なお、契約内容によっては、特段手続きをしなくても自動更新されることがあります。
保険料が高くなる
2025年問題に関連して、火災保険の契約者は保険料が高くなる点でも困るでしょう。
住宅総合保険の参考純率について、損害保険料率算出機構は2019年10月に平均4.9%、2021年6月に平均10.9%、2023年6月に平均13.0%の引き上げを発表しています。そのため、前回の契約もしくは更新時と比べて、保険料は高くなっている可能性が高いです。
更新後に家計への負担が重くなることを考慮し、あらかじめ対策を立てておかなければなりません。
火災保険料の参考純率とは
火災保険の参考純率とは、損害保険料算出機構が保険会社から収集した火災保険に関する契約や支払いのデータなどを活用し、算出する数値です。建物の構造や建物の所在地に基づくリスクに応じて、料率の区分が決められています。
保険会社が保険料を計算する際に使う保険料率は、純保険料率と付加保険料率に分類可能です。「純保険料率」は災害や事故が発生した際に支払う保険金にあてる部分、「付加保険料率」は事業を営むために必要な経費にあてる部分を指します。
保険会社は、純保険料率を決める際に参考純率を使用することが一般的です。そのため、参考純率が上昇すれば保険料も高くなる傾向にあります。
火災保険料が上がっている理由
近年、火災保険料が上昇している理由は、主に以下の通りです。
・自然災害の激甚化
・インフレーションの影響
・建物の老朽化
各理由について、詳しく解説します。
自然災害の激甚化
自然災害の頻度が増えたり、災害規模が大きくなったりしていることが、火災保険料が上がっている理由のひとつです。
近年、大きな被害をもたらす自然災害が毎年発生しています。2024年も、能登地震・梅雨前線による大雨・台風第2号・第7号など多くの災害が発生しました。
災害が続くと保険会社の保険金支払いが増えるため、火災保険料も上昇する可能性があります。
インフレーションの影響
インフレーションによる影響も、火災保険料の上昇に関係しています。
インフレーションとは、モノの値段が上がることで相対的にお金の価値が下がることです。日本では、2024年に前年比較で消費者物価指数が2.7%上昇しており、インフレーションの傾向が見受けられます。
インフレーションの局面では、資材の価格や人件費も上昇することが一般的です。資材の価格や人件費が上昇すると、災害後に住宅を修理したり、再建築したりする際の費用もかかるため、火災保険料が上昇する可能性があります。
建物の老朽化
建物の老朽化も、火災保険料の上昇につながる要素です。
築年数が古い物件は、設備の老朽化が進んでいて火災や水漏れの事故が発生する可能性があります。そこで、築年数が古い物件が増えるほど、リスクを考慮して保険料が上昇していくでしょう。
将来的には、2000年度以降都市部で増えつつある高層マンションが、老朽化の課題を抱える可能性もあります。
火災保険を更新する際のポイント
保険料が値上がりすることを考慮し、火災保険を更新する際は以下のポイントを押さえておきましょう。
・保険金額・補償範囲を見直す
・各社の保険料を比較する
・割引サービスを調べる
各ポイントについて、詳しく解説します。
保険金額・補償範囲を見直す
火災保険を更新する際は、保険金額や補償範囲を見直すことがポイントです。
一般的に、補償内容が充実しているほど、保険料も高額になります。「重複している補償はないか」「必要のない補償は含まれていないか」「保険金額は過大でないか」などを確認しましょう。
ただし、目先の保険料だけ優先して補償範囲を狭めすぎないよう注意が必要です。範囲を狭めたり、保険金額を減額したりすると、災害時に資金が不足して原状回復できなくなる可能性があります。
各社の保険料を比較する
各社の保険料を比較することも、火災保険を更新する際のポイントです。
保険会社によって、火災保険の補償内容や保険料が異なります。更新までに複数の会社から見積りを取り、内容を比べてみましょう。
現在契約している保険会社から提示された更新後の内容より、充実したものが見つかった場合は、乗り換えを検討することも大切です。ただし、乗り換えの際は無保険期間が発生しないように、極力満期日と同じタイミングで保険を開始しましょう。
割引サービスを調べる
割引サービスを調べることも、火災保険を更新する際のポイントです。
商品によって、オール電化住宅に対する割引やインターネットで契約した場合の割引、建物・家財のセット割引などが適用されることがあります。適用できるものがないか確認しましょう。
なお、地震保険については建築年数や免震・耐震などによって保険料の割引を受けられることが一般的です。
火災保険の2025年問題で契約できる期間が短くなる
自宅を所有している場合は、無保険期間が発生しないよう火災保険の満期が到来した際は更新手続きをしなければなりません。2025年問題とは、2015年に火災保険を契約した人が2025年に一斉に満期を迎えること、更新時に最長でも5年の保険期間でしか契約できないことです。
また、2025年以降に更新する際は、一般的に以前よりも保険料が上昇しているでしょう。家計の負担が気になる場合は、保険の見直しを検討することも大切です。
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。