ストライキの意味とは?意味・方法(やり方)や要件をわかりやす...の画像はこちら >>


ストライキとは、労働組合の要求が通らなかった場合に、労働者が労働を拒否する行為のことです。会社側との交渉を有利に進められる可能性がある点が、ストライキに入るメリットです。



ストライキは、団体行動権に該当する行為として、日本国憲法などで保障されています。日本におけるケースは多くないですが、実施された場合に経済や日々の生活に影響を及ぼすことがあるため、正しく理解しておきましょう。

本記事では、ストライキとはどのような行為なのか説明した上で、実施する方法や要件についてもわかりやすく解説します。

ストライキとは

ストライキ(strike)とは、労働組合の団体交渉がうまくいかなかった場合に、要求の実現や抗議を目的として労働者が集団行動を実施する(労働を拒否する)争議行為のことです。同盟罷業と呼ばれることもあります。

ストライキは、日本国憲法第28条に規定がある労働三権のうち、団体行動権(争議権)で保障されている行為です。ただし、日本でストライキが実施されるケースは決して多くはありません。また、厚生労働省によると、1974年に「半日以上の同盟罷業」が5,197件実施されたのに対し、2023年は39件で減少傾向にあります。

ここで、ストライキについてより理解を深めるため、ストライキの種類や実施するための要件について押さえておきましょう。

ストライキの種類

ストライキの種類は、主に以下の通りです。

・全面スト
・部分スト
・指名スト

全面ストは、すべての労働組合員がストライキに入ることを指します。一方、部分ストは労働組合員のうちの一部でストライキに入ることです。部署単位・業務単位などに絞って実施します。

また、指名ストは、指名された特定の労働者が、ストライキに入ることです。

ひとりもしくは少数の労働組合員が実施します。

その他、実施する時間によっても分類可能です。

ストライキを実施するための要件

以下の要件を満たしていないストライキは、原則として違法と判断されます。

・労働者単独ではなく、労働組合として実施する
・団体交渉の目的を達成するために実施する
・正当な手段に基づく
・正当な手続きに則っている
・直接無記名投票により、労働組合員の過半数の同意を得ている
・会社と労働組合で締結している労働協約に反していない
・法律上禁止されたストライキではない

要件からもわかるように、基本的にストライキは労働組合が主体となって実施する行為です。労働組合についてより詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。

労働組合とは?目的・種類や作り方についてわかりやすく解説

ストライキと混同しやすい用語

以下の用語は、ストライキと混同されることがあります。

・ボイコット
・サボタージュ
・ロックアウト

それぞれの意味やストライキとの違いについて、ここで押さえておきましょう。

ボイコット

ボイコット(boycott)とは、何らかの行動や参加を拒否することにより、特定の国・企業・人に対して抗議の姿勢を示す活動です。例えば、特定の企業のやり方に抗議して、製品の購入を避けることがボイコットにあたります。

ストライキが労働者が労働を拒否するのに対し、ボイコットは主に消費者が購入や参加などを避けることが異なる点です。

サボタージュ

サボタージュ(sabotage)とは、労働者が団結して故意に生産性を低下させて会社に損害を与えることにより、労働紛争の解決を促すことです。「怠ける」ことを意味する「サボる」の語源にもなっています。

ストライキとサボタージュの違いは、労働組合員による労働の内容です。ストライキは労働を完全に止めるのに対し、サボタージュは質を下げる点が異なります。

ロックアウト

ロックアウト(lockout)とは、労働条件などで争っている最中に、会社側が工場などを閉鎖して労働者を締め出し、労働組合に圧力をかけることです。労働者のストライキへの対抗手段として、会社が用いることがあります。



ストライキが労働者による行動であるのに対し、ロックアウトは会社が実施するものである点が違いです。

ストライキを実施するメリット

会社側に圧力をかけることで、交渉を労働組合にとって有利に進められる可能性がある点が、ストライキのメリットです。生産活動が滞り損害を被るため、ストライキをできるだけ早くやめさせようとして、会社が賃上げや労働時間の短縮などの条件を呑むことがあります。

また、要件を満たしている限りストライキは合法なため、罰則や処分を受けることがない点もメリットです。

ストライキを実施するデメリット・注意点

ストライキを実施する際の主なデメリットや注意点は、以下の通りです。

・ストライキしている間は給与が発生しない
・違法なストライキに該当すると賠償請求されうる
・公務員はストライキできない

それぞれ解説します。

ストライキしている間は給与が発生しない

ストライキに入っている間は、原則として労働者に給与が発生しない点がデメリットです。

労働基準法第24条や民法第624条などを根拠に、労働には「ノーワーク・ノーペイの原則」があるとされています。つまり、労働者が働いていない分に対しては賃金が発生しません。ストライキが長引くほど受け取る賃金が減るため、従業員の生活にも支障を来たすでしょう。

なお、部分ストや一部ストの場合、ストライキに入らず通常通り勤務している従業員については、労働組合員であっても給与が発生します。

違法なストライキに該当すると賠償請求されうる

違法なストライキに該当すると、会社から損害賠償を請求される可能性がある点もデメリットです。

ストライキの実施に伴い生産性が低下した企業は、損害を被ります。そのため、違法なストライキに対しては企業が損害分を請求することがあるでしょう。

ただし、適法なストライキに対して、企業は労働者を解雇したり損害賠償を請求したりするなどの対応はできません。

また、違法なストライキを実施したことで会社から解雇されたり、刑法上の罰則を受けることがある点にも注意が必要です。ストライキを実施する際は、必ず要件を満たしていることを確認しなければなりません。

公務員はストライキできない

公務員には争議行為が認められていないため、ストライキが禁止されている点に注意が必要です。国家公務員法98条第2項や地方公務員法第37条第1項で、争議行為を禁止することが規定されています。

公務を止めて国民全体の利益に悪影響を及ぼさないようにすることが、ストライキ禁止の主な理由です。その代わり、公務員のために勤務条件の改定について国会や内閣に勧告する中立的な第三者・専門機関「人事院」が存在します。

ストライキの実施方法・やり方

一般的に、ストライキを実施するまでの流れは以下の通りです。

1. 団体交渉をする
2. ストライキの適法性を確認する
3. 予告後にストライキを実施する

それぞれのやり方について、詳しく解説します。

団体交渉をする

ストライキの前に、まずは団体交渉を実施します。団体交渉とは、労働者が集団で労働条件について会社と交渉することです。

労働者は憲法第28条で、労働三権のひとつである団体交渉権を与えられています。企業は、正当な理由がない限り、労働組合からの団体交渉を拒否できません。

団体交渉を十分に尽くしたのにもかかわらず交渉がまとまらない場合に、ストライキの準備を進めます。



ストライキの適法性を確認する

ストライキを検討し始めた段階で、適法性を確認します。要件を全て満たしているかをチェックしなければなりません。

適法性を確認できたら、ストライキ権を確立することについて労働組合員のうち過半数の賛同が必要です。投票は、組合員か組合員から選出された代議員による直接無記名投票で実施します(労働組合法第5条第2項第8号)。

予告後にストライキを実施する

過半数の組合員の賛成を得たら、会社の経営者に対してストライキを予告することが一般的です。ただし、労働組合と会社側で締結している労働協約で、通告方法に関する決まりが定められていることもあるでしょう。

通告後、スケジュールや規模などを決めた上で、ストライキを実施します。ストライキを実施してからも、会社と交渉を続けて双方にとってよい出口を見つけることが重要です。

ストライキとは労働組合が団結して労働を拒否すること

ストライキとは、団体交渉がうまくいかなかった際に労働者が労働を拒否する争議行為です。団体行動権にあたる行為として、日本国憲法などで保障されています。

ただし、要件を満たしていないストライキは違法とみなされるため、注意が必要です。違法なストライキを実施した場合は、会社から解雇されたり損害賠償を請求されたりする可能性があります。

今後、ニュースなどで労働者によるストライキを見る機会があれば、何を要求してどのように実施しているのかに注目してみましょう。

参考:厚生労働省「労働組合」
参考:厚生労働省「令和5年労働争議統計調査の概況」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。

後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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