丸善 日本橋店 社会書担当・髙木亮一さん

最近、本屋さんに行ったのはいつですか? 「書店」という場所の魅力は、検索ワードだけでは辿り着けない思いがけない出会いがあること。この連載では、全国のさまざまな店舗で働く書店員さんが、プロの目線で担当ジャンルの「お金の本」をセレクトします。

今回お話を伺うのは、丸善 日本橋店で社会書(ビジネス書)を担当する髙木亮一さんです。



日本有数のビジネス街、金融街でもある日本橋で、目の肥えたビジネスパーソンたちと向き合う髙木さんが選ぶ「お金の本」とは?

元保険営業マン!金融街のビジネス書担当がリアルに推す「お金を...の画像はこちら >>


元・生命保険の営業マン 異色の経歴の書店員

私は2019年に丸善ジュンク堂書店に入社しました。本を読むのは昔から好きで、学生時代に書店アルバイトを経験していたものの、就職したのは別の業界。そこから何度か転職を経験していまして、生命保険の会社で営業マンなどを経て、今に至ります。

現在は「丸善 日本橋店」で社会書、いわゆるビジネス書を担当しています。個人的にはミステリーやホラーなどの文芸書を読むのが好きです。

ビジネスパーソンと家族連れが交差する土地

私が働く「丸善 日本橋店」は、2007年に改装して新しくなった店舗で、地下1階から地上3階まで売り場があります。丸善創業の翌年から店舗を構えているため、世代を超えて長くご贔屓にしてくださるお客様も多くいらっしゃいます。

場所柄、平日は近隣のビジネスパーソンのお客様が非常に多いです。東京証券取引所が近くにあり、関連する企業も集まっているため、金融業界の方はよくいらっしゃいます。

元保険営業マン!金融街のビジネス書担当がリアルに推す「お金を学ぶ一冊」は?
社会書(ビジネス書)売場

一方で、土日祝日になると客層がまた変わり、今度はお子様連れのご家族がたくさんいらっしゃいます。日本橋エリアの百貨店やレストラン、「ポケモンセンタートウキョーDX」などを訪れるついでに寄ってくださるご家族も多く、平日と休日でかなり違う顔を持つのが当店の特徴ですね。

全体として、売上の大きな柱になるのはやはり社会書(ビジネス書)。限られた売り場面積の中で、いかにラインナップを充実させてご満足いただけるかを考えています。

元保険営業マン!金融街のビジネス書担当がリアルに推す「お金を学ぶ一冊」は?
売れ筋の生成AI関連の書籍をまとめたフェア棚。
通常であれば、技術書、ビジネス書などそれぞれのコーナーに分かれてしまうものも一緒に並べている

スピード命!お客様のニーズを素早くキャッチ

ビジネス書はとにかく「スピード感」が命です。注目の新刊が出た時のお客様の反応の速さは、書店員も驚くほど。「今日読みたい、今日手に入らないと意味がない」という方もいらっしゃるので、仕入れには日々気を配っています。ビジネス書の棚は、実は毎日のように回転していて、たった数日で違う顔を見せているんですよ。

日々たくさんの本が発刊される中で、棚に並ぶすべてに目を通すのは無理な話。正直なところ、私よりもお客様の方が圧倒的に詳しいです。だからこそ、私は「お客様の感性を信じる」ことを大切にしています。

書店員としておすすめを押し出すというよりも、お客様が今何を求めているか? を素早くキャッチして、ニーズに合わせてリアルタイムにお届けすること。「この本がこれだけ売れるなら、こんな本やこんなテーマが求められているはず」と次の展開につなげることを大切にしています。

金融街の書店ならでは プロに支持された入門書

金融業界の方も多く来店される当店で、よく売れた「お金の本」を3冊ご紹介します。

元保険営業マン!金融街のビジネス書担当がリアルに推す「お金を学ぶ一冊」は?
「日本国債入門」服部孝洋(著) 一般社団法人金融財政事情研究会

まずは2023年に発売された『日本国債入門』(金融財政事情研究会)。「国債」という渋いテーマにもかかわらず、当店ではとてもよく売れました。タイトルには「入門」とあるものの、あくまで知識がある方向けの入門書。3000円を超える専門書の類なのですが、初回入荷分がすぐになくなってしまい慌てましたね。



経済や金融政策に関する本は多くありますが、国債についてしっかり扱った本はそこまで多くありません。著者の服部孝洋さんはSNSでも発信を続けていて「解説がわかりやすい」と評判の経済学者です。わかりやすく、かつ、金融関係者が手に取りたくなる読み応えもあり、ここまで評判を呼んだようです。

より易しい解説としては、同じ著者が『はじめての日本国債』という新書も著していて、こちらも売れています。

日銀総裁の頭の中を知る

2冊目は、少し柔らかめの入門書シリーズから『大学4年間の金融学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)を紹介させてください。タイトルの通り、大学生にもわかるような筆致で書かれた解説書ですね。

元保険営業マン!金融街のビジネス書担当がリアルに推す「お金を学ぶ一冊」は?
「大学4年間の金融学が10時間でざっと学べる」植田和男 KADOKAWA/角川文庫

著者は現・日本銀行総裁の植田和男さん。2017年に出版された本ですが、2023年に総裁に就任された際に再注目され、当店でもよく売れました。日本の金融政策のトップである彼の思考のセンスや国際金融への感覚を知ることができる内容で、ニュースへの理解も深まるかもしれません。

最近はNISAやiDeCoが普及し、株や投資を始める人も増えています。だからこそ、一度立ち返って「そもそも金融って何なんだ? どういう仕組みなんだ?」という土台を学ぶのにおすすめです。

金利って何? 有名著者のわかりやすく読みやすい入門書

3冊目は『0からわかる!金利&為替超入門』(ソシム)。経済アナリストの森永康平さんによる著作です。見開きで1つのテーマを解説する一問一答形式で、全ページフルカラー。

視覚的にも内容的にもとてもわかりやすいです。

元保険営業マン!金融街のビジネス書担当がリアルに推す「お金を学ぶ一冊」は?
「0からわかる!金利&為替超入門」森永 康平(監修)  ソシム

「銀行の金利は誰が決めているの?」「円高・円安はどっちがいいの?」などの素朴な疑問から、「為替の知識を投資に活用することはできる?」など実生活に生かせるような考え方まで、幅広く取り上げられています。

メディアで活躍している著者の知名度で手に取られている部分はもちろんありますが、それだけではなく、「超入門」の言葉通り、学び始めた読者が知りたい情報が充実しています。
時事問題に直結するテーマも多く、2023年の発売から今までコンスタントに売れ続けている1冊です。

「こんな本を読みたい」とぜひ声をかけて

丸善 日本橋店では、本だけでなく、雑貨なども取り扱っており、「知の総合商社」としてさまざまな商品を取り揃えています。特に丸善名物「ハヤシライス」はおすすめです!
期間限定のポップアップストアなども開催しており、本を探すついでにいろいろな出会いを楽しんでいただけます。

店内を駆け回る書店員は常に忙しそうに見えるかもしれませんが、本を探すお手伝いは大歓迎! こんな本を探している、こんなことを学びたいなど、ぜひ気軽にお声がけください。

編集部おすすめ