近年のブームで、調味料の1つとしてすっかり定着してきた「塩こうじ」。塩こうじは文字どおり、「塩」と「こうじ」でつくられる調味料。
みそやしょうゆ、酒、みりんなど、日本の調味料のほとんどがこうじによってつくられています。身近な存在なのに、実はよく知らない……。そもそも“こうじ”って何なのでしょう?
「こうじは蒸した穀類や豆類に、こうじ菌(コウジカビともいう)と呼ばれる微生物を繁殖させたもの。米でつくれば米こうじ、麦なら麦こうじ、大豆は豆こうじとなります。日本人はこうじ菌という食べられるカビを見つけ、古くから“こうじ食”を習慣にしてきました」と教えてくれたのは、こうじの研究をしている東京農業大学応用生物科学部醸造科学科准教授の前橋健二(まえはし・けんじ)さん。
「昔の日本では家庭でみそをつくるのが当たり前だったように、こうじに塩と水を混ぜた漬け床をつくっていました」
近年、「塩こうじ」という名前で配合を調整してつくられるようになりましたが、そのルーツは日本に昔からあったのですね。

「防腐剤も冷蔵庫もなかった時代、こうじには食品の保存性を高める役割があり、同時に、食品のうまみを増す、という効果がありました。こうじが優れているのは、消化酵素を出して食材を変える力があるということ。こうじはその食品を栄養にするために、消化酵素を出して成分を分解しながら生きていきます。こうじが生み出す消化酵素には、数えきれないほどの種類があります」
なかでも三大消化酵素とされるのが、でんぷんを糖に分解して甘みを出す「アミラーゼ」、たんぱく質をアミノ酸に分解してうまみを出す「プロテアーゼ」、脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解して脂っこさをなくし、あっさりとさせる「リパーゼ」です。
「これらの消化酵素が働くことで、塩こうじに漬けると肉や魚は柔らかくなり、野菜もただの塩漬けより、中まで味が浸透しやすくなります。また、米2~3合に塩こうじ約小さじ1を入れて炊くと、ご飯の甘みがグッと増します。
いろいろな料理に塩の代わりに入れると、塩味だけでなく甘みやうまみ、こうじのほのかな発酵の香りが加わって、一段とおいしくなるんです」
肉の下味つけ、魚の塩焼き、煮物や汁物の仕上げなどに、使ってみると本当に便利。塩こうじを日々の料理に気軽に取り入れて、いつもの味をランクアップさせてみませんか。
■『NHKきょうの料理ビギナーズ』2014年1月号より