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このころ、高校を卒業して、4月からはコンピューター専門学校への入学も決まっていたので、このとき初めて奨励会を辞めようと思い、例会後に天王寺駅をさまよっていると、木下晃七段にバッタリと会った。今日は奨励会でしたと先生に言うと、元気がないのを察してか夕食に誘ってくださった。我慢していたが、正直に奨励会を辞めようと思っていますと言うと涙がこぼれてしまった。
先生は困ったと思うが「私に勝つにはどうしたらいいと思う?」と聞かれた。「得意戦法で戦う、ですか?」と答えたが、「それでは私を倒せない」と言われた。
20歳で三段になったが三段リーグの対戦表がすでにできていて途中参加ができないので、半年待って21歳から三段リーグ初参加となる。低空飛行を続けていたが、24歳のときに見かねた師匠の森信雄(もり・のぶお)七段に一人旅に行くことを勧められた。精神力を鍛えてこいという訳だ。
ほかに印象に残っているのは弟弟子の安用寺君が三段になって、私と三段リーグで対戦する数日前のこと。師匠の家で10番勝負をするように言われた。
師匠の家ではいろいろなイベントをしていただいた。クリスマス会や花火大会の観賞会。外に出てハイキングなど。ほかの門下のことはよく知らないが、家族的な雰囲気で集まるのは少ないと思う(師匠の奥さんの影響が大きい?)。
■『NHK将棋講座』2015年2月号より