最近、テレビで海外ロケの映像を見かけたり、SNSで世界各地を旅する投稿を見かけたり。海外旅行を検討する人が、じわじわ増えてきているなと感じます。
実は筆者もそんな一人。まずは、気軽に楽しめそうな台湾はどうかな♪と思っていたのですが…8月23日放送の『世界の何だコレ!?ミステリーSP』で、気になる話を耳にしました。「台湾には道端に赤い封筒が落ちていることが…拾うと大変なことになるらしい」っていうんだけど、いったいどういうこと⁉詳しく調べてみました。

【リカちゃんの新キャラ】56年の歴史でついに母方の”おじいちゃん”初登場!「香山浩」のお仕事は?趣味は?

赤い封筒を拾った人は死者と結婚!?
 
【都市伝説では…ない】台湾では道端に「赤い封筒」が落ちていることが…絶対に拾ってはダメ!拾うとどうなる⁉

画像出典:photoAC

紹介されていたのは、番組内の『巷で聞いた気になるナゾを調査 ミステリーインタビュー』というコーナー。街頭インタビューで、台湾の大学に留学中という日本人女子学生が、こんな話をしていました。
 
「台湾では、道端に赤い封筒が落ちていたら拾ってはダメだと言われていて。拾ってしまうと、死んだ人と結婚させられるんです」
 
なんと、赤い封筒を拾うと、物陰から亡くなった人の家族が現れ、どこかへ連れて行かれるのだとか!
そんな学生の話を受け、番組では台湾の大学で助教授を務める、林和君(リン・ホゥージュン)氏が登場。それが「冥婚(めいこん)」という風習の一つであると、詳しく解説をしていました。
 
「冥婚」とは何か?
筆者が調べたところ、未婚で亡くなった方の霊を結婚させる、”冥界婚”のこと。死霊結婚・死後結婚などとも呼ばれていて、東アジアの各地に、そうした風習が見受けられるそうです。
 
林助教授によれば、未婚の女性が亡くなると、その家族は赤い封筒に故人の写真や髪の毛を入れて、人が通る場所へ置いておく。そうして封筒を拾った男性に、亡き娘と「冥婚」するよう頼むんですって。

番組スタッフが、拾った男性が既婚者だったらどうするのかを尋ねると、「結婚しなければならない」と、きっぱり。
「それだけ思いが詰まった、古くからの風習なのです。台湾の人は、拾わないようにしています」
 
さらに、林助教授は”赤い封筒”についても言及していました。
台湾では、結婚式などでお金を包む時、「紅包(ホンパオ)」という赤いご祝儀袋を使います。そのため「冥婚の封筒とご祝儀袋が同じ赤い封筒だから、落ちていても見分けがつかない」そう。それは、勘違いして拾う人がいてもおかしくありませんね。
 
ちなみに番組では、拾った人がその後どうなるのか触れていなかったので、少し調べてみると…。
拾ったからといって、すぐ結婚!ではなく、拾った人と亡くなった人の相性を占い、その結果がよければ結婚することになる、とされているようです。
さらに、実際に入籍をするわけではないので、実生活でのリアルな結婚も可能。林助教授の「既婚者でも結婚(冥婚)できる」とは、冥婚を受け入れにくくさせないためなのかも…。
また、一説によれば「冥婚」をした男性は開運するとも言われるんですって。

本当に台湾の人は「赤い封筒を拾うな」と言われている?
 
【都市伝説では…ない】台湾では道端に「赤い封筒」が落ちていることが…絶対に拾ってはダメ!拾うとどうなる⁉

画像出典:photoAC

でも、台湾の人は本当に、この「赤い封筒を拾ってはいけない」を、知っているのでしょうか?テレビが大げさに取り上げているだけでは?
そんな疑問を持った筆者は友人に頼み、台湾とダイレクトにつながる人に、聞いてもらうことにしました。

 
【1人目:台湾の男性と結婚した日本人女性】
まず1人目。台湾の男性と結婚した女性は、台湾に来た当初(20年ほど前とのこと)、語学学校で聞いたような記憶があるそう。旦那さんにも赤い封筒について尋ねてくれたところ、「もちろん知っている」という返答だったとか。さらに彼女は、他の日台カップル何組かにもリサーチしてくれたのですが…。奥様方(すべて日本人女性)はみんな知らず、台湾の男性陣は、みんな当然のこととして知っていた、という結果に。そのため、彼女の見解としては「台湾人なら、みんな知っている常識ということで問題ないと思う」とのことでした。
ただし、台湾で小学校に通っていた息子さんは、学校でそんな話は教えられなかったと言っていたそうなので、ある程度大人になってから、耳にする話なのかもしれませんね。
 
【2人目:台湾によく行っている日本人男性】
2人目は、現地在住経験もあり、今も出張で台湾へ行く機会があるという、筆者友人の旦那さん。仕事仲間の台湾人男性に聞いてくれたところ、「普通にあるらしい」との回答が。さらに、「都会、台北にもあるみたいですね。赤い封筒はお金が入っているイメージがあるから、間違って拾う人も」と、林助教授と同じような供述をしていました。
併せて、冥婚をテーマにした映画もあると教えてくれたのが、こちら。
『僕と幽霊が家族になった件』です。
 
‍ ┈┈┈┈┈┈┈┈

今年度台湾No.1ヒット作
#僕と幽霊が家族になった件
    絶賛公開中

┈┈┈┈┈┈┈┈ ‍

笑って泣ける冥婚コメディ!
ぜひ劇場でお楽しみください

主演#グレッグ・ハン#リン・ボーホン

詳しい情報は公式サイトへhttps://t.co/9UNwRm5Lqp pic.twitter.com/OOCdgoQkqk— 映画『僕と幽霊が家族になった件』公式 (@Marrymydeadbody) August 4, 2023
 
映画の公式X(旧Twitter)によれば、内容はコメディのよう。なるほど。映画のモチーフにもなるくらい、「冥婚」は台湾ではよく知られた風習なのですね。

「冥婚」はいつから始まった?
 
【都市伝説では…ない】台湾では道端に「赤い封筒」が落ちていることが…絶対に拾ってはダメ!拾うとどうなる⁉

画像出典:photoAC

「冥婚」がいつ頃から始まった風習なのか、書籍やネットで調べてみると…。
 
例えば中国では、「冥婚」は漢代(紀元前206年~西暦220年)には、すでに存在していたらしく、未婚で亡くなった男性の家族が女性の死者を探し花嫁として合葬した、などの話が残っているそうです。
時代を追う中で、形を変えながらその風習は続き、生者同士の結婚と同じような仲人職(鬼媒人と呼ばれたそう)が存在していたことも。ということは、それなりの数が執り行われていたのでしょう。
また、先に話した合葬のような死者同士以外に、「生者が亡くなった婚約者と”冥婚”をする」「婚約することなく亡くなった子どものために、家族が人を雇って”冥婚”を執り行う」など、いくつかのパターンがあったようです。

そのような「冥婚」の風習の根本にあるのは、”人は結婚してこそ一人前”という考え。それに紐付いて、以下2つを大きな目的としているそうです。
まず一つ目は、結婚の喜びを知らずに亡くなった子の霊を慰めるため。
そしてもう一つは、未婚で亡くなり、この世に遺恨を残してしまった霊の祟りを避けるため。
さらに女性の場合は、未婚で亡くなるときちんと供養を受けられなかったそう。それが哀れであると同時に、そのために生きている家族を祟ることがある、などとも考えられていたようです。

今回の話の舞台である台湾でも、中国同様、「冥婚」は古くから行われている風習のようでした。
 
けれど、今の時代は、幸せの定義や自分らしい生き方が、人それぞれで異なります。
結婚=幸せではないし、ましてや結婚して一生を終えるのが人として正しい生き方、なんてことも全くない。これからはますます多様化が進むはずで、「冥婚」もそれに伴い、数も形もどんどん変わっていくのではないでしょうか。
 
「冥婚」は実在するけれど「赤い封筒」は…
 
【都市伝説では…ない】台湾では道端に「赤い封筒」が落ちていることが…絶対に拾ってはダメ!拾うとどうなる⁉

画像出典:photoAC

台湾には実際に「冥婚」という風習が存在していることがわかりました。
 
『何だコレ!?ミステリー』に登場していた林助教授の調査によれば、2000~2017年の間にそうした「冥婚」がニュースなどで報道された件数は、200以上もあったそうです。結構な数で、驚きますよね。
 
ただ…。「道端に赤い封筒を置く」という行為には、少しだけ疑問が残ります。

 
実は、この「道端に赤い封筒を置く」が広まったのは、「冥婚」をテーマにしたドラマや映画の影響が大きいのでは?という説もあるよう。
 
また、台湾ルポライター・田中美帆さんのコラムでは、「冥婚」を研究していた方が、親が大切な娘をよく知らない男性に嫁がせるはずはなく、赤い封筒が道端に置かれることはない、と断言。
確かに親であれば、生きていた頃の娘が実際に結婚相手として選ぶような、娘のことを大切に想ってくれる方を選んで、お願いしたい…。そう考えるのが、自然な気がします。
 
もしかしたら「赤い封筒を道に置く」は、映画やドラマを見た人たちが広めた都市伝説的なところも大きいのではないかな、という印象を受けました。
 
ただし!実際に置かれている可能性は、ゼロではありません。
もしもあなたが、台湾を旅行中に道端に赤い封筒を見つけたら。
それが「冥婚」の目的でも、そうでなくても、誰かが何かしらの意思を持って置いたものには違いありません。
何が起きても受け止める覚悟がなければ、拾わないのが無難。間違っても興味本位で拾ったりせず、その場を立ち去るほうがいいでしょう。
 

【参考資料】
<WEB>
『訪日ラボ~冥婚(めいこん)死者との結婚・台湾「赤い封筒」は何を意味する?拾わないよう言い聞かされて育つ台湾人~』
https://honichi.com/news/2020/06/12/ghostmarriage/
 
『まとめん~台湾の赤い封筒の秘密 ~冥婚とは?拾ったら注意点とその意味~』
https://omatomen.net/archives/1-6959.html
 
『SNSでバズった「冥婚」 台湾の伝統的風習のホントのところ』(田中美帆)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d1358f94521dded108f389b7d4aa7a481f924b2a
 
『ウィキペディア~冥婚~』
https://ja.wikipedia.org/wiki/冥婚
 
<書籍>
『民俗小事典 死と葬送』(吉川弘文館)
『中国の傳承と説話』(研文出版)
『死者の結婚~祖先崇拝とシャーマニズム』(北海道大学出版会)
編集部おすすめ