かく語る『スラムダンク』とは……読んだ人の多くがそうであるように、アルコ&ピースもまた、独自の視点で『スラムダンク』を捉え、日常に活かしている。日々、一発勝負のステージに立ち、生き馬の目を抜く芸能界をサバイブする芸人にとって、『スラムダンク』とは? アルコ&ピースは、かく語る。
アルコ&ピース●[左]平子祐希(1978年生まれ/福島県出身)。[右]酒井健太(1983年生まれ/神奈川出身)。2006年結成。YouTubeチャンネル「アルピーチャンネル」も人気。平子さん著書に『今日も嫁を口説こうか』(扶桑社)。酒井さんは、昨年11月に結婚したばかり。
「人マネの投げ方でやっても ちっとも入る気がしねえ!!」
平子 仕事中も、『スラムダンク』のシーンやセリフが降りてくることはたくさんありますよ。
『スラムダンク』(14巻)
例えば、海南戦で桜木が下手投げでフリースローを決めるところ。
「人マネの投げ方でやっても ちっとも入る気がしねえ!!」っていう。バラエティやお笑いのネタにも様式美があるけど、
とりあえずやってみて自分に合わなかったら、オリジナリティを追求するしかない。そういう感覚的な部分に背中を押される感じはしますよね。まあ、工夫したとしても、そんなにうまくいかないんですけど。
あとはええと、何巻だっけな。
山王戦で20点差くらい離されたときに、
安西先生が「私だけかね…?まだ勝てると思っているのは………」って言うやつ。これも強く残ってますね。
ネタ4分間の中で、前半スベっても「まだいけるよ」って自分を引っ張ってくれるというか。結果、スベるんですけど(笑)。『スラムダンク』って、あきらめないシーンのレパートリー、たくさんあるじゃないですか。
周りがあきらめムードの中で、そこを率いていかなければならない人が学ぶべきことが、たくさん詰まってる漫画だと思いますね。
酒井 それこそ、『
スラムダンク』がなかったら芸人辞めてたかもしれないですよね。「あきらめない」ということにおいて、作品が持っているバイブスがすごいと思う。
平子 赤木の同学年の部員がみんな退部届けを出していくシーンがありますけど、
最終的には踏ん張った赤木と木暮が最強・山王に勝って結果を出すっていうのもそう。芸人も同じなんですよ。
周りがみんな辞めていくのをたくさん見てきたから……。だからモチベーションを保ち続けると言う意味では、『スラムダンク』ってひとつの軸になってますよね。
『スラムダンク』(29巻)
酒井 安西先生が天国の谷沢に語りかけるシーン、あるじゃないですか。「お前を超える逸材がここにいるのだ……!! それも…… 2人も同時にだ………」って。
あの“2人”って、アルピーだと思ってるんですよ、僕は。
平子 じゃあ谷沢は誰なんだって話だろ。
酒井 有吉さん。……って、死んだことになっちゃうか(笑)。
平子 安西先生もいいけど、僕はやっぱり
山王の堂本監督だね。
酒井 指導者とはちょっと違うけど、僕は
沢北の父ちゃん! 自由に、楽しく、退屈じゃないバスケを沢北に教えたあの父ちゃん、格好いいですよね。ちなみに僕、甥っ子に『スラムダンク』全巻プレゼントしました。それ以来ハマって、バスケも始めましたよ。
平子 ウチも小4の娘がバスケを始めたタイミングで、新装版の分厚いのを全巻。嫁と話し合って、「『スラムダンク』を買ってあげよう」って。
ベッド脇にいつでも読めるように置いてあります。今2周くらいしてるのかな。最初は桜木が好きだったけど、
読み進めているうちに「赤木が好きになった」って言ってました。なんでかわからないですけどね。
酒井 すごいですよね。
今の子供たちとも同じ話ができますからね。--{}--
「陵南の福田は大喜利強いです、絶対!」
平子 もし『スラムダンク』の登場人物とコンビを組むなら、僕はあいつ。湘北の体育館を襲ってきた不良の中でボーダー着てた……。
『スラムダンク』(7巻)
あ、竜だ! コイツいい雰囲気持ってるよな~。あのクールな雰囲気、いいですね。シュールコントができそう。
見取り図のリリーっぽい。
ああいうやつが急に大声出したりすんのも面白い(笑)。意外と桜木軍団はハシャギすぎてカラ回りしちゃいそう。
酒井 うん。漫画で目立ってるやつは、たぶんつまんないですね。
沢北とか絶対つまんないです。
平子 そうそう。文化祭とかの賑やかしはできるけど、実際舞台に立つってなるとね。
酒井 陵南の福田は大喜利強いです、絶対。めちゃくちゃ面白い大喜利すると思いますよ。いっぱい喋ったりするやつはね、面白くなさそう。ちょっとミステリアスなやつの方が、ポロッと面白いことが出てきそうだし。
平子 内に秘めてる方がね。
酒井 そうそうそう。海南の清田とか、学校にいてもたぶん、あんまり喋んないと思う。
平子 「芸人になればいいじゃーん」とかいって周りに乗せられて、なったはいいものの、
ああいうタイプって1カ月でやめるんですよ。あ、オレ彦一のお姉さん好きだったなー。ショートカットで大阪弁で、彦一自体がすごく距離感が近いキャラクターだから、
「知り合いの友達のお姉さん」みたいな感じでドキドキしながら見てましたね。そういう意味では、
三井が入院していた病院の看護師さんもいい。可愛いし、「おねーさんかわいがってあげようかしら…♡」って思ったら、人形と入れ替わってて、「あのクソガキャ…………」って怒る看護師さん、色っぽかったですね。
酒井 (単行本を読みながら)晴子さん、めちゃめちゃ可愛いな~。
『スラムダンク』(3巻)
平子 僕は晴子さんの後ろでチョロチョロしてるショートの子がいい。ショートボブの子、好きなんですよ。何か短大とかに入って髪伸ばしてさ、のちに街でバッタリ会って「あれ?」なんつって。彼女は化ける可能性ありますよね。
『スラムダンク』(29巻)
酒井 あ、これ好きなセリフ。
「沢北じゃねーか…どあほう!!」って、「要るソレ?」っていう。仙道と流川が1on1してるだけで十分格好いいシーンなのに、「要るソレ?」みたいな。なんか、そういうシーンたまにありますよね?
平子 話が止まらないね。僕にとって『スラムダンク』は「一生読める青春」ですかねえ。
酒井 僕が『スラムダンク』をひと言で言うなら……「世代を超えて人をつなぐ漫画」かなあ。
◇アルコ&ピースのお二人ならではの『スラムダンク』観。芸人らしい、独特かつユニークな捉え方はさすがだけど、その理由を聞くと、妙に頷いてしまうから不思議だ。きっと誰の『スラムダンク』語りを聞いても、「ああ、わかるわー」となるのだろう。世代を問わず、読んだ人それぞれに一家言を授けてくれる作品なんて、他に見当たらない。
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[前編]アルピーが『スラムダンク』木暮たちから学んだこと「かく語る『スラムダンク』」とは…… 映画公開も控えたバスケ漫画の金字塔『スラムダンク』。作品の持つエネルギーは凄まじく、それは時に人生を左右するほどの影響力を持つ。実際に触発され、全国区へ駆け上がったオーシャンズ世代の同志はこの漫画をどう読んだのか。男たちは、かく語る。
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