「知らないと怖いカラダのサイン」とは…… 

不惑を過ぎて「最近、朝勃ちをしなくなった」「アソコの勃ちが悪くなった」と感じている人は少なくないはず。

「勃起障害(ED)はいわば“血管のイエローカード”。

心筋梗塞や脳卒中といった重大な血管の病を発症するサインである可能性もあるんです」。

そう語るのは、ED治療を行う「プライベートケアクリニック東京 東京院」院長を務める小堀善友先生。 今回は、勃起障害が示す健康のリスクについて、先生にうかがった。

話を聞いたのはこの人
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小堀善友●プライベートケアクリニック東京 東京院院長。専門は男性性機能障害、男性不妊症。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)など。https://pcct.jp/repro/



勃起と血管の深い関係

――そもそもEDと血管にはどんな関係があるんですか?

まずは勃起のメカニズムを簡単にお話ししましょう。

 勃起は脳の視床下部という部分が視覚や聴覚などによって、性的興奮を感じるところからスタートします。脳はその興奮を指令に変えて、脊髄を通して腰のあたりにある勃起中枢という神経に伝えます。

すると海綿体というスポンジ状の組織の空洞に血液が流れ込み、その血圧によって硬く勃起するんです。

ちなみに、朝勃ちは、睡眠中のレム睡眠時に、自律神経系の働きが不規則に乱れることで起こるもの。通常の勃起は脳が性的刺激を覚えるところからスタートしますが、朝勃ちはそうしたステップを必要としない無自覚な勃起です。

――要するにペニスの血管が詰まると勃起障害が起こりやすくなると?

はい。
勃起には、心臓から送り出される血液を全身に運ぶ動脈が深く関わっています。ペニスの動脈の血流が阻害されると、海綿体に血液が流れ込むことができなくなり、結果、EDを引き起こします

特に陰茎動脈の太さは約1~2mmほどしかなく、大腿動脈(約6~8mm)や内頸動脈(約5~6mm)といったほかの動脈と比べて非常に細いんです。つまり、男性の体の中で、もっとも最初に詰まりやすい血管がペニスの動脈なんです。


EDに潜む大病の影

「朝勃ちしなくなった」は 、心筋梗塞や脳卒中を発症するサインと言われる深いワケ



――なるほど。では、ペニスの血管に不具合がある場合は、ほかの血管もヤバい可能性が高いと……。


その通り。動脈の血管が硬くなって弾力性が失われると、血栓やプラークなどによって血管が詰まりやすくなります。これがEDの原因のひとつにもなる「動脈硬化」と呼ばれる症状です。

この動脈硬化が起きる場合は、ペニスだけでなく体のあちこちで同時進行しているケースがほとんど。

動脈硬化が進行すれば、EDどころではなく、心筋梗塞や脳卒中になるリスクも高まります

――勃起がしにくくなったら、血管の不調を疑った方がいいですね(汗)。

血管に問題があると、当然、勃起障害が起こる可能性は高まります。
勃起障害には大きく分けて、体の問題で勃起が物理的に阻害される「器質性ED」、ストレスなど心理的・精神的要因から起こる「心因性ED」、両者の要因が混じった「混合性ED」の3タイプが存在します。

このうち、もっとも多いのが器質性EDで、主な原因は血管と神経にあります。勃起に関係する動脈が詰まって血流が確保できなくなったり、糖尿病などで勃起をつかさどる神経がやられたりすることで勃起に悪影響が出てしまいます。

――糖尿病も関係が⁉

糖尿病によって高血糖状態が続くと、血管や神経を痛め、動脈硬化や神経障害につながります。もちろんペニスの組織にもダメージを与えるため、EDの一因にも。

実際、糖尿病とEDの関連を調べた調査によれば、糖尿病患者のED有病率は71~86%と報告されています(一般社団法人日本性機能学会『ED診療ガイドライン』参照)。

つまり、糖尿病患者のほとんどが、程度の差こそあれ、EDを患っているといっても過言ではないのです。
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勃起改善薬が血管にアプローチ


「朝勃ちしなくなった」は 、心筋梗塞や脳卒中を発症するサインと言われる深いワケ


――ちなみに現在のED治療はどんなことをするんですか?

ほとんどの場合、ED治療は、バイアグラやシアリスといった勃起改善薬による投薬治療のみ。その効果は目覚ましく、私の経験では、不妊治療に訪れたED患者の8~9割の症状が改善しました。

勃起改善薬が狙うのは、ペニスの海綿体に存在する「PDE5」。この酵素は血液の流れを悪くしたり、海綿体に血液が貯まらないようにしたりする働きを持っています。

EDの一因になるこの酵素の働きをブロックすれば、血管が拡張され、勃起も促進されるという仕組みです。


――勃起改善薬も血管に作用するんですね。

勃起改善薬自体は、陰茎の血管を拡張して血行を良くする、というシンプルな薬です。ほてりや頭痛といった一過性の副作用もまれにありますが、多くの人にとっては、ほとんど副作用のない、“体にいい薬”だと知ってほしいですね。

ただし、これまで述べたようにEDを未然に防ぐには、血管を健康に保つことが大切です。研究では、肥満を予防して、運動不足を解消すれば、勃起障害のリスクが低下することが明らかにされています。

――元気な血管を持っていれば、いつまでも勃起できるというわけなんですね。

意外かもしれませんが、理論的には80歳、90歳になっても勃起はできるんです!


心筋梗塞も脳卒中もある日突然起こる病気だが、血管を健康に保つことで発症リスクを大幅に減らすことができる。

朝勃ちが減ったり、アソコの勃ちが悪くなったら、病院で血管の状態をチェックしよう。小堀先生の言うように、“EDは血管のイエローカード”なのだ。

「知らないと怖いカラダのサイン」とは……
加齢とともに、我らのカラダに忍び寄るさまざまな不調。いつどんな病気に罹るかわからないからこそ、小さな変化に敏感でありたい。ということで、危険を知らせるカラダのサイン集をお届け。

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