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オーシャンズ的、2022年ヒット予測」とは……昨年も自由な海外旅行は叶わなかったが、見方を変えれば国内の魅力が見直された1年でもあった。トラベルジャーナリスト・寺田直子さんによると2022年に注目のフィールドは“国立公園”だそう。
息を呑むような絶景に出合えるのも国立公園の魅力。
日本に34カ所ある国立公園を幅広く活用し観光促進へと繋げるべく、2020年に政府が立ち上げた“
国立公園満喫プロジェクト”も国立公園人気を後押ししている。アクティビティ施設や体験内容の充実、アクセスのしやすさ、多言語化表示などが、国主導で進められているのだ。ブームの兆しが見える、大自然の迫力に満ちた国立公園だが、なかでも、“いつもと違う体験ができる”という視点で、寺田さんに3つの旅先を教えてもらった。
語り手は 寺田直子●トラベルジャーナリスト。日本とオーストラリアの旅行会社に勤務後、編集プロダクションを経て独立。旅に関する著書は多数。これまでに90カ国以上を訪れ、国内外のホテルに宿泊。2021年より伊豆大島に移住し、「ハブカフェ(Hav Café)」を営みながら執筆活動を続けている。
[2022年旅先トレンド予測]① 星が降ってきそうな「西表石垣国立公園」② “危険な国宝”が拝める「大山隠岐国立公園」③ ガラパゴス諸島を超える!? 「小笠原国立公園」【注目①】日本初の“星空保護区”!「西表石垣国立公園(沖縄県)」
「日本の滝百選」に選ばれたマリユドゥの滝。
昨年、世界遺産に登録された「西表石垣国立公園」は、ココは日本? と思ってしまうほどワイルドな亜熱帯性ジャングルが広がります。しかしながら、コチラを
オススメしたい本当の理由は、圧巻の星空!
国際ダークスカイ協会による
日本初の“星空保護区”にも認定され、密林ゆえに生み出される漆黒の空間に、世界で定められている88の星座のうち84もの星座が輝きます。
星の奥に星がまたたく……このような深淵な宇宙の広さを感じられるのは、「西表石垣国立公園」ならでは。
“経度が低く、南側が暗く開けている”などの条件をクリアしないと見られない
南十字星も、場所や時期によっては見えることがあります。
また、もうひとつ必見なのは、6~7月にしか見ることのできない
一夜だけ花を咲かせる幻の花“サガリバナ”の鑑賞です。ぜひ、早朝にカヌーに乗って見てください。夜に咲き朝には散ってしまう儚く可憐な“サガリバナ”が無数に浮かぶ川面を漕ぎ進むと、
幻想的な世界に酔いしれるはずです。美しく魅力的な島ですが、課題はイリオモテヤマネコなど野生動物の交通事故や、レジャー客の増加による観光・開発と自然環境・生態系のバランスをどう保つかということ。入島制限や環境保全税、国立公園入園料の徴収などの制度導入を行うことが検討されているなど、
国立公園を未来へ残す取り組みへの試金石になる場所でもありますね。--{1/3}--
【注目②】“日本一危険な国宝”も!「大山隠岐国立公園(鳥取県・島根県・岡山県)」
隠岐諸島のひとつ、西ノ島は、垂直に切り取ったような崖が特徴的だ。
鳥取県・島根県・岡山県の3県にまたがる「大山隠岐国立公園」は、
豪快な火山活動や地殻変動、波浪によって侵食されたダイナミックな景観が、ほかにはない魅力です。例えば
断崖絶壁に建つ仏堂を拝むことも!
見事なバランスで、崖の窪みに佇む。
鳥取県に位置する三徳山(標高899.9m)の三佛寺にある国宝・投入堂は、神社本殿形式では日本最古級の建造物とされ、その立地から、
“日本一危険な国宝”と言われています。拝むのは少し離れた場所からですが、そこまでの道のりも、急斜面をよじ登るなど命懸け(笑)。
島根県隠岐の島町に位置する、ろうそく岩。海面から約20mほど突き出た奇岩だ。
また、岩の先に夕日が重なると蝋燭(ろうそく)に見えることから名前が付いた、ろうそく岩も、長きに渡る海水などの侵食によって生み出されました。このろうそく岩のある隠岐諸島は、国立公園としてだけでなく、稀少なアルカリ火山岩による地質やその景観から、2013年に
ユネスコ世界ジオパークにも認定されました。昨年の夏には、このジオパーク内にスタイリッシュなホテル「
エントウ(Entô)」が誕生し、話題となっています。「エントウ」が佇む隠岐諸島の島前は、約600万年前の火山活動により形成されたカルデラ地形。
地球が創り出してきた息を飲むような絶景の中で過ごす時間はかけがえのないものになるはずです。
海風や波により、現在も少しずつ侵食が進んでいて、
いつまで見られるかわからない風景というのもロマンを感じますね。ちなみに、先に紹介した三徳山の参道入り口から、車で約10分程の場所には、高濃度のラドンを含む世界屈指の放射能泉「三朝温泉」もあり、ゆったり湯に浸かれば、免疫力や自然治癒力を高めることもできますよ。--{2/3}--
[注目3]独自進化がスゴい!「小笠原国立公園(東京都)」
サンゴ礁が美しい母島列島の南崎海岸。
本州から約1000kmも離れた亜熱帯の島、小笠原諸島。その小笠原諸島を中心とした、日本最小の国立公園である「小笠原国立公園」には、
独自の進化を遂げた動植物の生態系があります。自然科学者・ダーウィンが進化論の着想を得た
エクアドルのガラパゴス諸島にも劣らない、その独自の進化生態は、
一度も大陸と陸続きになったことがないために生まれたものなのです。
コチラは、
世界中で小笠原諸島の母島列島だけに生息するメグロという鳥。
その他にも、日本で唯一、小笠原諸島でのみで繁殖が確認されている珍しい海鳥・オナガミズナギドリなども生息しています。
また、日本最大のウミガメの繁殖地でもあり、5~8月の産卵シーズンには、宿や飲食店が立ち並ぶすぐ近くの砂浜で
産卵を目撃することも!
気根という根をタコの足のように伸ばしている姿から「タコノキ」と呼ばれる、小笠原諸島の固有種。
もちろん、ザトウクジラやイルカ、サンゴ礁といった
海洋性動物、固有種植物のサンクチュアリであることから、ダイバー、ナチュラリストには憧れの場所です。
豊かで独特な自然価値が認められ、2011年に
小笠原諸島は世界遺産にも登録されています。小笠原諸島はご存知、東京都の離島です。アクセスは竹芝桟橋からの大型船のみで、所用時間は24時間。海上ではネット圏外になるので、
デジタルデトックスをリアルに体験することも。また現在、乗船者は無料でPCR検査を事前に受けることができるなど、コロナ感染対応の徹底も図られています。島でのネット環境は意外に良好で、最近はワーケーションのニーズも高まっているようです。◇大自然をフィールドにしたアドベンチャーツーリズムは、世界的に見ても一大マーケットとして急成長中。国立公園の周辺には地産地消などサステイナブルなアプローチのダイニングシーンや古民家の宿など、魅力的なスポットも増えているので、ぜひ今年の旅計画にいかが?
「オーシャンズ的、2022年ヒット予測」とは……コロナに振り回された2021年だったが、“TikTok売れ”なる言葉が生まれ、大谷翔平の“リアル二刀流”が流行語大賞に選ばれるなど多くのトレンドも生まれた。さぁ、2022年は何がヒットする?
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