話を聞いたのはこの人!吉良文孝●東長崎駅前内科クリニック院長。内科医・消化器内科医・内視鏡医としてのキャリアを活かし、2018年に開業。日本肝臓学会専門医でもある。
3人に1人の肝臓がフォアグラ化!
――肝臓の病気といえば“酒好き” がかかるイメージですが……。確かに、肝臓にとってアルコールが大敵であることは間違いありません。肝臓はアルコールを分解する働きを持ちますが、大量の飲酒によりその過程でできる毒素が多すぎると、肝臓の機能に影響を及ぼします。また、アルコールによって発生した毒素が肝臓内に脂肪を貯め込みやすくするため、「脂肪肝」になりやすいのです。――「脂肪肝」という言葉は良く聞きますが、どんな病気なんですか?脂肪が肝臓に溜まっている状態を「脂肪肝」と言います。
「脂肪肝」は、スリム体型でも油断するべからず!
――では飲酒習慣がなく、太ってもいなければ、気にする必要はないわけですね?実はそうとも言い切れません。「非アルコール性脂肪肝」は肥満体型でなく、痩せた人でも見られるのが特徴です。例えば、前年より数キロ体重が増えてしまった。その増えたあとの体重が標準以下だったとしても、肝臓は「脂肪肝」になっている、ということもあります。1年間で3~4kgの体重が増えた人は要注意です。在宅ワークによって通勤がなくなり、コロナ禍前より動かなくなった、ついつい間食が増えた、という人が急増しています。そんな環境は、「脂肪肝」を生み出しやすい状況とも言えますね。――フォアグラ化した肝臓は、もとには戻らないのでしょうか?いえいえ、決してそんなことはありません。肝臓は再生能力の高い臓器です。「“沈黙の”脂肪肝」は全身に病気を引き起こすことも
――「脂肪肝」だと、具体的にどんな症状が出るのでしょうか?「脂肪肝」になったとしても、痛みや目立った症状などは出ません。そのため気付かず放置されてしまい、最終的に、肝臓が硬くなってしまう肝硬変や肝がんにまで進行してしまうのが最も恐れるケースです。しかし、肝臓自体が悪くならなくても、全身の臓器に影響を及ぼす可能性があることも問題です。――「脂肪肝」は、ほかの病気も引き起こしやすいということでしょうか?はい、その通りです。そもそも「脂肪肝」は飲酒や食べ過ぎ・運動不足といった生活習慣の乱れで起こるため、同時に「生活習慣病」と呼ばれる病気を併発していることが多くあります。「脂肪肝」があると、狭心症や心筋梗塞といった心疾患を合併しやすいと言われます。また、高血糖や高インスリン血症などにもなりやすいですし、ほかの生活習慣病を併発している場合は、さらに心疾患合併の確率が高くなります。ここが怖いポイントですね。極端なダイエットはちょっと待った! 何事も“ほどほど”が大切
――症状が出にくい「脂肪肝」は、どうすれば分かりますか?まずは、健康診断などで受ける血液検査をチェックしてください。肝臓に関係するのは、AST/ALT/γ-GTPという数値で、これらが基準値を外れると要再検査となります。また、健康診断では超音波検査(エコー検査)を受けると安心です。「脂肪肝」の有無や進行度が分かり、また肝炎や胆石といったほかの病気を見つけることもできます。――「脂肪肝」を防ぐために俄然、ダイエットのやる気が出てきました!う~ん、ダイエット方法もさまざまあると思いますが、私としては何事も“ほどほど”をオススメしています。