旅やサウナ好きで知られる俳優の桐谷健太さんにインタビュー!プライベートでのFUN-TIMEについてはもちろん、最近の仕事に関することまで幅広く語ってもらった。桐谷さんの人間性に迫る10問10答も必読!
瞑想が楽しい! 何も考えない時間も重要
「がはははは(笑)!」。フォトグラファーが思いっきり笑ってほしいとお願いをすると桐谷は白い歯を見せながら全力で応え、あの豪快な笑い声がスタジオを温かく包む。
「次は少し、物憂げな表情で」「レンズを睨む感じで」などと次々にリクエストされる中、その都度スイッチを入れ替え柔軟に対応する。根っからのサービス精神に火がついたのか、時折大仰におどけるなどして現場の空気を和ませてくれる。そんな桐谷にとってのFUN-TIMEは瞑想。「そういえば瞑想ってどんな感じなのかなと思ったのが最初です。コロナ禍で時間もあったので、試しにやってみたらすごく良かったんです。太陽の光がまぶたを通して入ってくるときの感覚とか何にもしなくて気持ちいい感覚が味わえるというのがすごく大きいです。だいたい20分くらいやっています。瞑想を通じて、何も考えない時間というのは、何かをすることと同じくらい重要なことだと感じることができたり、芝居のときのパフォーマンスが上がったりと新たな気付きも自分にとってはうれしかったです」。
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そして、もうひとつ好きな時間があるという。それが散歩だ。「好きですね。何も考えずにぼけっとしながら、知らない道を自分の嗅覚だけを頼りに、好き勝手に歩くというのが。
やっぱり気持ちが良くて。仕事がないときであれば、午前中から2~3時間くらいかけて歩きます。最初は何も考えずに歩いているんですけど、時間が経つうちに不思議と頭が整理されて、仕事でやりたいことなどが浮かんでくるんです」。サーフィンや旅など、昔はよく外遊びをしていたそうだが、ここ数年はコロナ禍の影響からまったく楽しめていないという。「特に20代前半の頃は、頻繁に野宿をしながらひとり旅をしていました。そのときにいつも思っていたんです。ひとり旅ってなんでこんなに寂しいんやろうって(笑)。現地でしゃべる人はできたりするんですけど、そういうときは『ああ、旅って楽しいなぁ』って思うんです。でも、自分はまた移動しなくてはいけないのでやっぱり寂しい、でも楽しかった思い出のほうが強いから、またひとりでふらっと出かけたくなるという。その繰り返しでした。当時はまだそんなに顔も知られていなかったので、初めて会う人と普通に話したりご飯を食べたりするのがすごく面白かったんです。おっちゃんの身の上話とかを聞いて『そりゃ大変やなぁ~』とかって話したりしていました」。
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本作を通じて大好きな沖縄について知るいい機会になった
旅行といえば、主演映画『ミラクルシティコザ』の出演オファーは、久しぶりに堪能していた旅の途中に届いたそう。「海辺を散歩しているときに、マネージャーから電話がかかってきて、その場で簡単なストーリーを聞いてピンときました。話も面白くて斬新でしたし、1970年代と現在の沖縄県沖縄市のコザという街を舞台に描いたタイムスリップコメディということで、当時の沖縄のことに詳しくない僕でも、電話の会話だけでストーリーがじんわりと染み込んでいくように感じたので、やらせていただくことにしました」。物語は現代のコザから始まる。だらだらと暮らしていた翔太には、一風変わった祖父・ハルがいた。ハルは、ベトナム戦争特需に沸く’70年代のコザで人気を博した伝説のロックンローラーだった。ある日、ハルは交通事故で亡くなるが現世に心残りがあり翔太のカラダを乗っ取ると、翔太の魂は’70年代のハルのカラダへ入ってしまう。熱気や愛憎、欲望などが混沌とする’70年代のコザの街では、さまざまな事件がハル(翔太)の周りで起こる。先ほどまでの笑顔が消え、改めて姿勢を正して語る。「僕も翔太のように、何もうまくいかずに悶々としていた時期があったので、その気持ちは理解できました。’70年代に生きるハルに関しては悩みましたが偶然、沖縄で今作のモデルになっているバンドメンバーの方に会うことができ、当時の話を訊いて一気に視界が開けた瞬間があったので、それをベースにしつつ演じました」。戦後の沖縄の状況、ベトナム戦争の勃発などの時代背景を考えると、演じる際に少なからず迷いもあったと、言葉がさらに熱を帯びる。「いろんな情報が錯綜し、しかも人の死が今よりもずっと身近にあった当時のコザって、何が正解か不正解かもわからない中で、みんな死に物狂いで生きていたわけです。
だから役の思いに自分が入っていくとき、それ以上行ったら憑依してしまいヤバイというか、元の自分に帰ってこられなくなるかもしれないという怖さがありました。でも絶望的な状況だけでなく、当時は笑顔になる瞬間もあったわけで、そういった世の中でも希望や楽しみは見つけていたはずなんです。そう考えたら気持ちが楽になり、いつもどおり演じることができました」。
当時の沖縄を語るうえで、戦争の話題は避けては通れない。射るような眼差しを向けながら、時折自分に問いかけるように言葉を紡ぐ。「沖縄は、初めて中学生で行ったときからずっと好きなんです。いろんな歴史があるということはわかっていたのですが、恥ずかしながら、今作のように日本人バンドマンのことや米兵たちに対する住民の想いなどは知りませんでした。子供のときにニュースなどを見て知っている部分もありましたが、本質の部分は無意識に見ないようにしていたのかもしれません。でも今作に携わったことで、少しだけ触れることができたかなと思います」。将来の夢はないという。これほど多くの作品に出演し、役者としての存在感が年々増している一方で、通俗的な目標は年を重ねるごとに薄れているそう。枠にとらわれない、いかにも桐谷らしい役者という職業以前のとても人間的な感覚。
「一日一日、楽しく明るくやりたいと常に思っているのですが、前よりもそれが実感できているので、その気持ちをすごく大事にしたいです。もちろんカンヌやベネチアなどの国際映画祭で賞を獲ることなども考えたりはしますが、日々、自分らしく気持ち良くやっていれば面白い未来が待っている気がするので決まった夢は持っていないんです。それが気持ちいいんですよね。だからある種、今この瞬間も夢の中にいるのかもしれないですし」。先ほどから「気持ちいい」という言葉が頻出していることを指摘すると、あの大きな目をぎょろりと見開き、その直後には少年のような笑顔がにじむ。「めちゃくちゃ大事だと思います。僕の場合は何をするにも、あくまで気持ちいいかどうかというのが大前提。そこの優先順位が変わってくるから、いろいろとしんどくなるんでしょうね。誰だって絶対気持ち良くなりたいわけじゃないですか。その気持ちを無視して変えるというのは違うのかなって思います」。インタビューも終了し、桐谷は席を立つと目を見ながら「今日はありがとうございました。雑誌ができるのを楽しみにしています! 」と挨拶をし控室へと向かう。
芸人ばりのトークスキルを持った、ひとり旅好きの寂しがり屋、そして何より芝居に対しては愚直なまでに真摯に取り組む愛すべき役者馬鹿。やはり桐谷健太はとても気持ちいい男だった。--{}--
桐谷健太の10問10答
Q1. 過去にタイムスリップするとしたら何時代?平安時代とかに行ってみたいです。「どれだけ平安なんか!」って(笑)。
Q2. 好きな漫画、アニメのキャラは?生まれて初めて読んだのが「ブッダ」だったのでブッダ。
Q3. プロスポーツ選手になるとしたら何の選手?野球。
Q4. 人生にタイトルをつけるなら?ミラクル。
Q5. つい言ってしまう独り言は?「最高や!」。
Q6. 最後の晩餐に食べたいものは?白米。
Q7. 自身が思う40代の魅力は?新たな章が始まる感覚。
Q8. 健康のためにしていることは?気分良くいること。
Q9. 生まれ変わったら何になりたい?ええ感じの星。
Q10. 一日3時間増えたら何がしたい?ぼけーっとします。
桐谷健太●1980年生まれ、大阪府出身。2002年にドラマにて俳優デビューを果たすと、その後ドラマや映画、舞台など多くの作品に出演。また多くのCMで活躍している。主演映画『ミラクルシティコザ』が沖縄で先行公開中。2月4日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開。