連載
「偏愛さんいらっしゃい!」とは……スニーカー好きたちを熱狂させるコラボスニーカー。「スキット」オーナー鎌本さんも数々のレアモノを手にしてきたが、「ミタスニーカーズ」によるコラボ作は特別な存在だ。
そのなかでも心に強く響いたのは、「アディダス」と共作した二足である。
▶︎ミタ仕様のアディダス動画を見る話を聞いたのは……「スキット」オーナー・鎌本勝茂さん 鎌本勝茂●現在は吉祥寺、大阪、仙台、福岡に店を構える「スキット」の大黒柱。18歳でスニーカー業界に足を踏み入れ、販売やバイイングを経験。そのキャリアは20年以上にも及ぶ。オリジンへの愛着はひとしおで、眠れる名品を掘り当てる嗅覚と目利きにも秀でる。
「単純に人気があるモデルを選んだり、ロゴを入れたりするだけのコラボには、あまり興味がないんですよね」と鎌本さん。だが、ミタスニーカーズが手掛けるコラボスニーカーは、そういう類のモノとはまったく違う。「まず『こういうのが売れるでしょ』って感覚では作っていないと思うんですよね。アプローチするモデルにミタスニーカーズとしてどんな意味をもたせるか、というのをしっかり考えている。“コラボの哲学”のようなものを感じます」。だからこそコラボのたびに、スニーカー好きを楽しませてくれる。鎌本さんが選んだアディダスコラボの二足も、そんな要素が満載だ。
名作アディマティックを落とし込んだ一足
1996年に発表されたアディダスの名作スケートシューズ、ノートン。その系譜を受け継ぎ登場したのがロースーツである。そんなスケートカテゴリーで絶大な人気を誇ったレジェンドモデルをベースに、同じく優れたクッショニングとボリューミーなデザインでファッションシーンにも多大な影響を与えたアディマティックのオリジナルカラーを落とし込んだ。
まず見せてくれたのが、こちら。つい先日、待望の復刻を遂げた名作シューズ
「アディマティック」……を彷彿させるが、よく見れば様子が違う。
「’90年代のスケートシーンに多大な影響を与えたアディダスの名作に、アディマティックの感性を落とし込んだ『ロースーツ ミタ』という一足です。名作にまた別の名作の要素をミックスさせてしまうなんて、ブランドでは思いつかない。というか実現しえないですよね。『ミタスニーカーズ』だからこそできたコラボだと思います」。
「今年復刻したアディマティックを見て、やっぱりいいスニーカーだと思ったんですが、ロースーツ ミタと見比べてみたら……個人的にはこっちの方が断然好みだなと(笑)。ミタスニーカーズ代表の国井さんが、もう2歩も3歩も先を行っている人なので、その感性にスニーカーシーンが追いついてきたといえるかもしれませんね」。さらに、「当初はアディマティックのコラボスニーカーを作ろうとして、何らかの事情で難しかったのかも……」と推察しながら、鎌本さんは続ける。
インソールにはスケートボードのウィールと、「ミタスニーカーズ」の象徴である金網をミックスしたスペシャルグラフィックを落とし込んでいる。
「アディマティックでできないなら別のスケートシューズで表現する。色は今の空気感よりも当時を想起させるものを採用するなど、あらゆる面から考え抜いたのでは……。と、こんなふうにスニーカー好きの想像を掻き立ててくれるんですよ。だからこそミタスニーカーズのコラボには色褪せない魅力を感じます。『このブランドのこのモデルだったら、どんなコラボがいいか』を考えて作っていると思うんですよ。たかが履き物かもしれませんが、そこに独自の哲学を感じられるのが面白いですね」。--{}--
隠れた名作をメジャーにした一足
アディダス エキップメント ランニングサポートのオリジナルが登場したのは1993年。現在は、クラシカルな色使いなどはそのままに復活を遂げている。その特徴を、これまた2000年代半ばにリリースされ、コレクター間では引く手数多のZX8000へ落とし込んだ。
続いて鎌本さんが見せてくれたのは「ZX8000 ミタ」。先ほどのロースーツ ミタと、同時期に発表された一足である。これには鎌本さんの青春時代の思い出も蘇ったようで……。
「僕が若い頃よく履いていたが、『エキップメント ランニングサポート』という’90年代のモデルなんですが、このシューズの要素をZX8000に落とし込んできた。
そうきたか! と思いましたよね(笑)」。エキップメント ランニングサポートは、アディダスが当時、シリアスランナーのために製作したランニングシューズ。甲部にストラップを巻きつけたようなデザインが印象的で、抜群のクッション性は多くのランナーたちからも高い評価を得た。このモデルにフォーカスすること自体にミタスニーカーズのセンスを感じると話す。
「本気でランニングする人のために作られたモデルですが、ファッションの方へ浸透し、“いなたい”格好をしている人たちに好まれました。ただ、みんなに受け入れられた人気モデルではないから比較的安く流通していたし、いつしか消えてしまいました。でも、そういう一足って、あとから評価されることが多々あるんですよね。国井さんは、それも踏まえてあえて知名度の高いZXシリーズに落とし込んだと思います。実際、このコラボによってエキップメント ランニングサポートの良さに気づいた人は多いと思います」。
元ネタの魅力にまで気づかせてくれるコラボは、他になかなかないだろう。そしてこの一足は、海外ではコミュニケーションツールとしても活躍してくれるという。「これは履き心地がいいですから海外への買い付けにももっていこいです。
日本企画の名作を履いていると、現地のスニーカーマニアから話しかけられて会話のきっかけになることも多いんです」。ミタスニーカーズのアディダスコラボは、履き潰してもいいように同じモデルを数足コレクションしているという鎌本さん。ロースーツ ミタは4足、ZX8000 ミタは3足持っていて普段からヘビロテしているそうだ。スニーカーマニアがこれほど魅了されるコラボモデル。となれば、彼らの次なる一手にも、期待したくなってしまう。
アディダスの二足を動画でもチェック!
今回訪れたのは……「スニーカーショップ スキット東京・吉祥寺店」 色褪せない大定番から名作、さらには珍品まで多彩なスニーカーが揃う。中には国内未発表の貴重なモデルも。また、買い取りも随時行っている。
住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町1-18−1 D-ASSET吉祥寺 1F電話番号:0422-47-6671営業:11:00~19:00Instagram:sneaker_skit