マツダが久々に放つ新型車の詳細が公開された。世の中が電動化に突き進む中、やっぱりPHEVか……と思ったら、今どき直列6気筒を新開発!? しかもFRレイアウト!?
▶︎この記事の画像ギャラリーを見るこのマツダらしい(?)独自路線を行くのが、今年初秋から販売予定の「CX-60」だ。
「CX-5」と「CX-8」の間に収まるサイズだが、両車とまず大きく異なるのがパワートレインだ。
同社初のPHEV(2.5L直列4気筒ガソリンエンジン+モーター)は、このご時世らしいとして、ほかに用意されたのは2.5L直列4気筒ガソリンエンジンと3.3L直列6気筒ディーゼルエンジン、そして3.3L直列6気筒ディーゼル+小型モーターのマイルドハイブリッドの4種類。そう、今回新たに直6ディーゼルエンジンが搭載されているらしい。レクサスやアウディが「この先エンジンは載せません」と宣言している時代に、あえて従来の4気筒より多気筒な6気筒を開発したのだ。
6気筒を直列に並べると振動が少ないため、直列6気筒は理想のレイアウトと言われているエンジン。だから「シルキーシックス」と呼ばれる直6で有名なBMWをはじめ、多くの自動車メーカーが搭載していたのだが、安全性能の向上が叫ばれるようになると次第にその数が減っていった。 エンジン長がV6よりも長くなる直6を縦に置くと、その先のボディクリアランスを作りにくくなり、衝突安全性の確保が難しかったからだ。一時はメルセデス・ベンツも直6搭載を中止して、しばらくV6を採用していたほど。それでもメルセデス・ベンツは数年前にこの課題を解決して直6を復活させたのだが、マツダもこの電動化の時代に、新エンジン開発とともに衝突安全性の課題にも取り組んでいたということだろう。
さらにそれをフロントに置いて、後輪を駆動させるFRレイアウトを基本とした4WDというのも、従来のマツダSUVとは大きく異なる点だ。CX-5やCX-8、というか世の中の多くの車はFF。こっちのほうがコストを低減しやすいからだ。
今やメルセデス・ベンツやBMWだってエントリークラスにFF車を用意している。FRのメリットといえば素直なステアリングフィールや、コントロールのしやすさ等が挙げられる。また後輪側にも重量物が配置されるため前後重量配分を前後50:50に近づけやすく、素直な旋回性能を得やすい。同社がロードスターに、またメルセデス・ベンツがCクラス以上に、BMWが3シリーズ以上にFRを採用しているのはそのためだ。
直6とFRの同時採用から見えるのは、マツダが新たな高級車像を描こうとしていること。直6+FRは、かつては高級車の定番の組み合わせだったし、SUVにおいてもメルセデス・ベンツはGLE以上、BMWはX3以上にFRベースの4WDを採っている。マツダはこれらに肩を並べようと言うことか。--{}--実際、デザインはリッチだ。凜とした力強さと、艶のあるエレガントさを兼ね備えた内外装のデザインは、同社のデザイン哲学「魂動デザイン」のさらなる深化を印象づける。
しかも単に高級なだけじゃない。賢いのだ。例えば万が一ドライバーが急病で運転不可能になったら、車が自動でハザードを灯し、安全な路肩へゆっくり移動してくれる。
また車載カメラでドライバーの目の位置の把握し、ドライバーに最適なドライビングポジションになるようシートやステアリング、ドアミラーが自動で調整される、という具合。
電動化の嵐が吹き荒れる最中、付和雷同することなく、世界のプレミアムカーに挑むサムライ。マツダが下した「我この道を行く。この道の他に我を生かす道無し(武者小路実篤)」と言わんばかりの決断を体感できるのはこの秋、心して待ちたい。