
猪野正哉さん●焚き火マイスター、日本焚き火協会会長。10代後半にファッション誌のモデルとしてキャリアをスタートし、30代半ばから「焚き火マイスター」を名乗り始める。ライター、モデルとしても活動しつつ、手軽で楽しい焚き火の普及に尽力している。著書に『焚き火の本(山と溪谷社刊)』。3月に2冊目『焚き火と道具(山と溪谷社刊)』を発売したばかり。
薪には針葉樹と広葉樹の2種類が存在する

「薪」がどちらの樹種か、購入前に考えてみよう。ちなみに写真は針葉樹。
「意外と意識している人は少ないのですが、『薪の種類』を考えて燃やすと焚き火が上達します」。燃えやすく、割りやすい「針葉樹」はビギナー向き

焚き火の着火は針葉樹で始めるといい。
店頭に並ぶ薪の7、8割は、実はスギやヒノキなどの針葉樹である。日本にある人工林の約7割がスギとヒノキで構成されているため、全国的にいつでもどこでも手に入りやすい木材なのだ。「油分を多く含み、皮が薄いので、誰でも燃やしやすいのが特徴です。比較的柔らかくて粘りがあるため、割ったり、削ったりしやすいのも針葉樹ならでは」。
針葉樹は粘りもあるので削りやすい。
柔らかくてよく燃える反面、燃え尽きるまでの時間が短いのが針葉樹のデメリットとなる。「勢いよく焚き火を楽しめる時間は、針葉樹の薪ひと束でだいたい1時間半くらいが目安かな。つまり3時間ほど楽しみたかったら、2束必要となります」。
細い薪なら、乾燥していれば着火剤なしでも火が着くほど。
●針葉樹の特徴・油分が多く燃えやすい・比較的安価・手に入りやすい・柔らかいので割りやすく、削りやすい・燃焼時間は短め--{}--長時間焚き火を楽しむならば「広葉樹」がおすすめ

前出の針葉樹より樹皮がゴツゴツしているのがわかるだろうか。
対する広葉樹の薪として出回っている主な樹種は、ナラやクヌギ、サクラなどが中心となる。見分け方は「樹皮」に注目。薄く、ペリペリと剥がれやすい針葉樹に対して、広葉樹はゴツゴツしているのがポイントだ。また、同じ太さの薪を持ち比べてみると、広葉樹のほうがずっしりと重たい。
一度火が着いてしまえば、長時間安定した火力が楽しめるのが特徴。
「広葉樹のほうが火持ちが断然良いので、僕が薪を買うときはできるだけ広葉樹を探します。体感ですが、燃焼時間は2倍近く持つように感じます」。猪野さんの言うように、広葉樹のメリットの1つは燃焼時間が長いこと。
薪を足す手間が減るので、長時間煮込むダッチオーブン料理にも使いやすい。
一方、デメリットもある。火持ちがいい反面、針葉樹より着火しづらく、堅くて割るのが大変なのだ。特に太くて節のある広葉樹は、大きな斧でも太刀打ちできないほど。「火持ちがいい=堅い薪と言うこともできます。少々上級者向きの薪と言えるでしょう。針葉樹よりも手に入りづらいので、僕は良い広葉樹の薪を見つけた時は数束買いだめることもあります」。●広葉樹の特徴・燃焼時間が長い・火力が安定しやすい・着火しづらい・針葉樹より高価・堅くて割りにくい--{}--[結論]上手に使い分けられたら「焚き火上級者」

針葉樹を燃やしてから、広葉樹を追加するのがスムーズ。
「燃やし始めは細く割った針葉樹を使って、炎が安定してきたら太めの広葉樹をくべると、とてもスムーズに焚き火が大きくできます。そのような感じで薪の種類を使い分けられるようになると、“焚き火上級者感”が出ますよ」。