フロントマスクは基本的にクラウンシリーズ共通のテーマだが、スポーティなスタイリングを持つ(筆者撮影)
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら。クラウン4姉妹、左からクロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート(写真:トヨタ自動車)
クラウン4姉妹には、クロスオーバー、スポーツ、そしてこのあと発売される「クラウンエステート」と、SUV的な車型が3つ用意されている。スタイリングを観察する
マーケットのことをよく考えていると思わせられるのは、SUV的なのに全高が1.5m台に抑えられる点。少しセダンに引き寄せたスタイリングとともに、たとえば市街地のタワーパーキングに対応するなど、実用性が考慮されているのだ。とはいえ、スタイリングに破綻はない。テールゲートをそなえたハッチバック的スタイルだが、ウインドウグラフィクスは、リアクオーターに3つめのウインドウをもつ、いわゆるシックスライト。ヘッドランプは左右両側の縦長スリットの中に収まる(筆者撮影)
同時に、ボディ各所にもこだわりのデザインが施されている。ひとつは、フロントマスクだ。「ハンマーヘッド」とトヨタが呼ぶ、幅の狭いシグネチャーランプのユニットに「アンダープライオリティ」というボリューム感のあるバンパー一体型エアダムの組み合わせ。シリーズ共通のテーマだが、クラウンスポーツのものが最もまとまっている感がある。もうひとつが、リアフェンダー。エッジを極力使わずリアフェンダーのボリューム感を強調する(筆者撮影)
聞けば、ここがデザインを含めてトヨタの生産部の腕の見せどころだったようで、デザイナーの意図を生かした深い金型を作るのは至難のわざだったという。「金型製作の担当者は“もう勘弁してください”と上司に泣きつく夢まで見たそうです。でも最終的に、ここまで立体感のあるフェンダーパネルを実現してくれました」クラウンスポーツのエクステリア担当デザイナーは、試乗会会場でそう教えてくれた(お疲れさまでした)。プラットフォームは共用でも特徴は異なる
クラウンスポーツが、基本プラットフォームをクロスオーバー/エステートと共用することは先述のとおり。クロスオーバーと比較すると、ホイールベースは80mm短縮。2.4Lターボ デュアルブーストハイブリッドシステム(写真:トヨタ自動車)
たとえば、クロスオーバーには気持ちよく回る2.4リッターターボエンジンを使った「デュアルブーストハイブリッド」があるし、セダンには水素を燃料に電気モーターで走るFCEV(燃料電池車)があり、スポーツには外部充電式のPHEV、という具合だ。このあと出てくるエステートについては、トヨタの誰も「お楽しみに(ニヤニヤ)」としか教えてくれないので、うっかりしたことは書けないが、少なくとも、クロスオーバーとセダンに対して、スポーツは乗ってみるとたしかにキャラクターが違う。大型モニターを2つそなえ機能性が高いダッシュボードは、左右で色分けをしたデュアルコクピットのテーマを採用(筆者撮影)
前席シートはやや重厚すぎる印象もあるが座り心地はよい(筆者撮影)
エンジンはよく回るけれど、3000rpmを超えるとかなり存在を主張する……というか、しすぎる(笑)。なので、クラウンスポーツで快適なドライブをするには、比較的ゆっくりとアクセルペダルを踏み込むよう心がけるといい。アクセルを踏み込むスピードに関係なく、ゆっくり踏み込んでいってもトルクがもりもりっと出てくるのがわかるし、そのとき車速は十分に上がっている。周囲の交通に後れをとるようなことはない。操舵感は、やや重め。最近のトヨタ車と共通している。でも、後輪操舵システム、サスペンションシステム、それにカメラを使って路面の状況を判断し操舵力などを変えていくPDA(プロアクティブドライビングアシスト)が連携して、期待以上に“ファン・トゥ・ドライブ”を感じられる。GRではない“適度な範囲”のスポーティ
トヨタの開発陣によると、「HEVが好きなら、このあと登場するPHEVこそ本命ともいえるモデルなので、ぜひ楽しみにしていてほしい」とのことだ。今回、試乗できなかったPHEVモデルの内装はよりスポーティな仕立て(筆者撮影)
本当にスポーツドライビングを楽しみたい人は、クラウンではなく、GRブランドのクルマを選ぶほうがいいかもしれない。クラウンスポーツは「クラウンというブランドの範囲内でスポーティに仕上げたモデル」(開発者)という注釈がつくように、適度な範囲で運転が楽しめるモデルだ。クラウンスポーツは、運転していて安全マージンが確保されていることが感じられる。それが“適度な範囲”なのだろう。エンジントルクやアクセルペダルの重さ、操舵感など、クルマから“もっと速く走れ”とあおってくるようなことがないのである。一方、クラウンスポーツを街で見かけると、なかなか目立つ。これまでのクラウンは、街に溶け込むようなアンダーステーテッドなところを特徴としていたが、そこは違うのである。590万円という価格は、所有欲を満たすスタイリングや“ファン・トゥ・ドライブ”な走りを考えると、説得力のあるものではないだろうか。