>連載「妻からの『キツイひと言』読解講座」をはじめから読む
夫たちが妻から言われた「キツいひと言」の裏側を現役ママでもある筆者がひもとく本連載。第2回は、毎日懸命に働く男性陣の中にはイラっときてしまう人もいそうな、衝撃のひと言をご紹介します。
出張準備中に言われた「あなたは休めていいよね」
「宿泊出張の準備をしていたら『あなたは休めていいよね』と言われた」(45歳)
これを言われたら「出張は遊びじゃないんだよ、何言ってんだ!」と怒り出す男性もいそうですね。でも、これを言った妻の気持ち、私はわかります。そして、妻たちは口には出さないけど、みんなそう思っていると思います。
それに、私自身の個人的な経験を言えば、普段の生活よりも出張先のほうがちょっと楽。むしろ私の中では、大っぴらには言わないですが、出張はちょっとだけ楽しみだったりもします(行き先やスケジュール、日数、頻度にもよりますが)。
このことを、私の周りのワーママたちに話すと、みんな揃って「わかるわかる」という反応でした。むしろ「出張楽しいよね。夫や母に子供を頼んで行く手前、大きい声では言えないけど」というのが共通した見解。出張に行くということは、ある程度責任ある仕事をしているということであり、仕事自体は決して楽なものではないはず。なのにそう思うのは何故なのでしょうか。
私がママになってから初めて泊まりの出張に行ったのは、娘が4歳くらいのときだったと思います。行き先は鹿児島。朝イチからの打ち合わせだったので、前日にどうしても泊まらなければならず、1泊することにしました。
前日、鹿児島入りしてから、一緒に行った出版社の女性編集者とふたりで食事に行き、その後お茶をしてホテルに帰りました。そのときにまず感じたのが「夜、こんなに遅くまで出歩くのは久々だな」ということと「お迎えの時間を気にしなくていいのって楽だなー」ということ。
また、毎日当たり前に行なっている食事作りや子供をお風呂に入れる、寝かしつけるという仕事が無く、自分のことだけすればいいというのは、改めて楽だなと思いました。
なぜ妻たちが「出張=休みのようなもの」と感じるのか
さて、もし妻が専業主婦だったら、夫は家庭のことはすべて妻に任せて仕事に没頭しているという人が多いはず。あるいは、妻は仕事を時短勤務に切り替えているので、妻が子育てや家事をメインでやる、と決めている家庭もあると思います。
そうなると、まず、妻は夜に大人同士やひとりで食事に出かけることなど皆無。生活がすべて子供中心になります。ママたちから「子供ができてから、お風呂にもゆっくり入ったことがない」という声をよく聞きますが、ひと言で言うと、ママたちにはひとりの時間がないのです。
結婚前や出産前に、友人や同僚らと「今日、ご飯食べて帰ろうか」とか「新しいお店できたから行ってみよう」みたいなことをしていたのが、夢のまた夢という状況になっています。だから、夫が出張に出かけるのを見て、仕事で大変だというのはわかっていても「ちょっと羨ましいな」と思ってしまい、ついつい「休めていいよね」と言ってしまったのだと思います。
さて、妻たちが「出張=休みのようなもの」と感じるポイントを、周りのワーママたちに聞くと、次のような6つが挙がってきました。
<出張=休みと妻が感じる6つのポイント>
・家事をしなくていい
・夜に大人だけであるいはひとりで外食できる
・お迎えなどの時間を気にせず行動できる
・時間を気にせずお風呂に入れる
・夜中に子供に起こされない
・ひとりで広々と寝られる
もちろん、出張のときには、場合によっては夜に接待が入ったり、ゆっくり食事をする時間もないほど予定が詰め込まれたりしているということもあると思います。
それと、もう1つ、夫の皆さまにお伝えしておきたいこととして、妻が出張に行く大変さ、というのもあります。私の知り合いの先輩ママの話ですが、「子供がまだ小さかった頃、自分が出張に行くときは、たとえ1泊でも、1カ月以上前から、夫と母の予定を確認して調整したり、出かける前日には保育園の持ち物を準備しておいたりと、とても大変でした。なのに、夫は『来週1週間シンガポール出張になったから』とか、勝手に直前に決めてくるんです。この十数年間、ほんと理不尽だなあと思い続けてきました」という声を聞いたことがあり、ほんと、その通りだなあと思いました。我が家でも、夫は出張の予定を私に許可無く決めてきますから。
試しに、先日、私も1泊の出張を勝手に決めて、夫婦で共有しているグーグルカレンダーにしれっと入れておいたら(わりと先の予定)、それに気づいた夫から「俺、この日夜予定入ってるからお迎え行けないよ」と却下され、その後、大げんかになりました。結局、私の母にサポートしてもらうことになりそうですが、「なんだかなぁ……」という気持ちに。
というわけで、夫の皆さま、出張に行くときには、「仕事で行くんだから、大変なんだぞ」と威張って出かけるのではなく、もっと妻に感謝する姿勢で出かけていただけると、妻のほうでも「大変だよね、頑張ってね」と気持ち良く送り出したくなると思います。
最後にもう1つ付け加えておきますが、「出張のほうが楽」「母にはひとりの時間がない」などと書いてきましたが、私含めて、今回コメントをくれたママたちも、当たり前ですが子育てが楽しくないわけではありませんよ。日々の子育ても楽しいけど、たまにあるひとりの時間も楽しいよね、というのが基本姿勢です。
相馬由子=取材・文
編集者、ライター。合同会社ディライトフル代表。雑誌、ウェブ、書籍などの企画・編集・執筆を手掛ける。会社員の夫と、もうすぐ小学校に入学する娘の3人家族。ここ数年は、子育てをテーマにした仕事を数多く手掛けている。
MIYU=イラスト
ネオ・マーケティング=アンケート協力
※調査対象:35~45歳、子持ちの既婚男性200人
第1回「帰宅後、妻から言われた「なんで帰ってきたの?」の裏にある事情」