旨い酒を知ることはもちろんだが、上手い酒の飲み方もそろそろ知っておくべき40代。シチュエーション別“スマートな酒のマナー”を、店と街の人たちに聞いてきた。

第1回目は、銀座で大人気の美人バーテンダー、「BAR Yuu」の波夛野 悠(はたのゆう)さんに、知っているようで意外に知らないBARのマナーを聞いた。


「あちらの女性に一杯……」はNG! 席料の意味を忘れるべからず

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——バーと聞くと、映画やドラマの影響もあって、つい構えてしまいます。気の利いた会話のネタの1つや2つ、用意しなくちゃいけないのかな~とか。

そう考える方は多いみたいですね。でも全然気にしなくて大丈夫です。会話も日常的な内容がほとんど。他愛もない話をしながら好きなお酒を飲む。それが基本的な楽しみ方だと思います。「BAR Yuu」は、皆さんの羽根を休める宿り木みたいなところと思っていただけたら嬉しいですね。

——いつか「あちらの女性に一杯」なんてこともやってみたいな~と思っているのですが。

あ、それはNGです。店内のお客さんに気軽に話しかけるのはマナー違反だと思ってください。あくまであれは演出ですから。

まず大前提として、席はお客様のパーソナルスペースだと思っています。チャージもいただいているわけですし、尊重しなければいけません。バーテンダーとは気軽に話をしていただいてOKですが、ナンパ目的でお酒を奢るというのは控えいただきたいです。「あちらの女性に一杯」というのは、あくまでドラマのなかでのお話だと思ってください。


基本は「マティーニ」&「ジントニック」。ロングとショートの楽しみ方とは?

「あちらの女性に一杯……」はご法度! 知らなきゃ恥かくBARのマナー
整然と並ぶボトルが「これぞBAR」といった素敵な空間を演出する

——酒と言えばビール、ハイボール、レモンサワーみたいな人間は、BARで何をオーダーすればいいかわからずドギマギするんですよね。

お酒に詳しい方は意外に少ないですよ。例えばハイボールといっても、そこにいったい何が入っているのかを知らない人もいますし、ジンバックとジンリッキーとジントニックの違いをわかっている人のほうが少ない気がします。

なので、格好つけようと思う必要はないですよ。

——でも、「おっ、少しはわかっているな」とも思われたくて……面倒くさいヤツですみません。

なるほど、確かに面倒ですね(笑)。

でしたら、カクテルの“王様”と言われるマティーニ、“女王様”といわれるマンハッタンは知っておいたほうがいいかもしれませんね。

「あちらの女性に一杯……」はご法度! 知らなきゃ恥かくBARのマナー
マティーニ(1500円)。ジンをベースに、ベルモットといわれるワインに薬草をつけたもの(チンザノが有名)をミックス。そこへオリーブやオレンジビターを入れるなどのアレンジを加える。「ジェームズ・ボンドは、ウォッカマティーニをシェイクで飲ん でいます」。

——(グビ)こ、こ、これは喉にきますねー!

マティーニは強めのお酒ですので、弱い方でしたらチェイサーをお代わりしながら飲むことになるかもしれません(笑)。10分もおいていたら常温になって美味しさが半減してしまいますが。

——このオリーブは食べていいんですか? 種はどうしたら……。

オリーブの場合は種がありますから、種を表に見せたくない人は種をペーパーで包むとスマートです。ピンは小皿を出してくれる場合は小皿を使ってください。もし小皿がなければコースターのうえに置いてもいいかと。灰皿に捨てるのはNGです。

「あちらの女性に一杯……」はご法度! 知らなきゃ恥かくBARのマナー
カクテルは小皿を利用してスマートに飲むべし。

——マティーニ…ウィッ…いい…ですね。

マティーニはちょっと強かったようですね(笑)。でしたら、ジントニックはいかがでしょうか? スタンダードですし、だからこそ店のレベルがハッキリ表れるカクテルだと思います。

ジントニックはBARの顔とも言えますし、挨拶代わりに飲んでみるのもいいかもしれません。

「あちらの女性に一杯……」はご法度! 知らなきゃ恥かくBARのマナー
飲んだ瞬間、思わず「え! これがジントニック!? 」と言ってしまったほど美味しかったジントニック(1500円)。「ジントニックはとても身近なカクテルですが、バーで飲むとこんなにも違うんだ、ということを皆さんに知ってほしいですね」と波夛野さん。

——こ、これは美味い……ちなみにジントニックも早めに飲みきるべきでしょうか。

ハイボールを2時間で2杯くらいのペースで召し上がる方もいますし、ロックを頼んですぐ飲み終える方もいます。基本的にこれといったルールはありませんが、こちらも最高のタイミングでカクテルをお出ししているので、そこは理解してもらえたらと。お客様の“飲み方”がある程度わかれば、ロングカクテルとショートカクテルの提案も出来ますよ。

——ん!? ロング? ショート? グラスの長さですか?

一杯を飲み終える時間のことです。なので、まず一杯飲みたいというときはショートカクテルで、そのあとにお話を楽しみながらゆっくりロングカクテルを飲む、といったオーダー方法もいいかもしれませんね。ちなみにショートカクテルはマティーニのようにアルコールが強いものが多く、ロングカクテルは氷が入っているので長く楽しめます。




どこまでカジュアルでOK? BARのドレスコードとは

——ほかに気を付けるべきマナーはありますか?

そうですね~。意外と知られていないかもしれませんが、バーテンダーを「バーテン」と略して呼ぶのは避けたほうがいいかもしれません。蔑称とまでは言いませんが、ちょっと悲しくなってしまいます。

あとは、1杯だけ飲んで帰る際は「また来ます」など、ひと言あると丁寧かもしれません。こちらとしては、「お口に合わなかったわけではないのかな」と安心できますから。

——なるほど。

ちなみに、ドレスコードはあったりしますか?

ホテルやレストランへ行くイメージを持っていただけたらと。帽子やアウターは入り口で脱いでいただきますし、ショートパンツやサンダルは基本的にはあまりよろしくないかと思います。良い悪いというよりは、その人が周りにどう見られたいか、どう振る舞いたいかによると思います。

——はい! しかと心得ました!(ウィック)

よろしくお願いします(笑)。私としては、「バーのハイボールやジントニックって、こんな美味しいんだ」ということを知っていただきたいんです。私もそこから始まったので。お酒の面白い話もたくさんありますので、気軽に聞きに来てくださいね。

「あちらの女性に一杯……」はご法度! 知らなきゃ恥かくBARのマナー
酔っ払ったライターがツボに入った様子。最後まで笑顔でインタビューに応えてくれた波夛野さん、ありがとうございました!

[取材協力]
「BAR Yuu」
住所:東京都中央区銀座7-6-11 ミクニギンザ7ビル 7F
電話:03-5537-6670
営業:18:00~

菊地 亮=取材・文

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