ヨーロッパのプレミアムカーブランドでは、各モデルのラインナップに必ずといっていほどオープンモデルが設定されている。アメリカでも昔から、オープンカーでドライブする文化が根づいている。
それに対して、日本はオープンエアでのドライブが欧米ほど一般的ではなく、国産車のオープンモデル自体も減少傾向にある。とはいえ、オープンカーが贅沢で爽快な気分を味わわせてくれることは間違いない。
そのとき、どんなオープンカーに乗るべきか? その選択肢に必ず入れたいのが、マツダ「ロードスター」。
デザイン、軽快なドライビングフィール、手の届く価格と、選ぶべき理由はいろいろある。しかしもっとも大きな理由は、「ロードスターだから」なのかもしれない。
オーナーのほどんどは「指名買い」
1989年12月29日は、日経平均株価が史上最高高値の3万8957円をつけた日として記録されている。いわゆるバブル景気の時代だ。この空前の好景気のなかで、日本の自動車メーカーはのちに名車と呼ばれることになる車を何台も生み出した。
例えば、トヨタ「セルシオ」、日産「スカイラインGT-R」「フェアレディZ」、スバル「レガシィ」……。こうしたことから、1989年は国産車の「ヴィンテージイヤー」とも呼ばれている。なかでも、ライトウェイトオープンスポーツとして当時の若者に絶大な人気を誇ったのがマツダ「ロードスター」だ。

驚くべきは、その人気ぶりである。2015年にデビューした現行モデルの4代目「ロードスター」を含めた累計販売台数は、じつに100万台以上。

その証拠に、「ロードスター」のユーザーについてマツダの販売店に聞いたところ、その多くは40代で、ほとんどが「指名買い」だという。
つまり、ほかのメーカーのオープンカーと性能やデザインを比べて「ロードスター」を買ったわけではなく、ロードスターだけを狙って購入したということだ。
「ロードスター」のオーナーには、子供のころに華々しくデビューした初代モデルに憧れ続けてきた人が多い。この車に乗ることに特別な価値を見出しているのである。
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しかも、「ロードスター」は走りを堪能できるオープンカーでもある。

初代から4世代にわたって脈々と受け継がれてきたコンセプトは「人馬一体」。「ロードスター」は、徹底した車体の軽量化、前後50:50の重量配分、ヨー慣性モーメントの低減、そして低重心化によって、走りの楽しさを作り上げてきた。操っていてワクワクする車なのだ。
そもそも、大排気量のスーパーカーと違い、ライトウェイトスポーツは軽量ボディを活かしてワインディングロードなどを軽快に走り抜ける車だ。

現行モデルのうち、ソフトトップの「ロードスター」が搭載するのは排気量1.5Lの4気筒エンジンで、リトラクタブルハードトップの「ロードスターRF」は2.0Lの4気筒エンジン。

このエンジンで走行性能を最大限に発揮するために、マツダは車体の軽量化にこだわってきた。軽さはハンドリング性能の高さにつながり、小排気量エンジンでも日常的な速度域でコーナリングやアクセルワークなどの操る歓びを体験できる。ドライビングを楽しめる要素が非常に多いのだ。
NEXT PAGE /30周年モデルは予約完売。旧式も人気継続中

今年2月には、アメリカのシカゴオートショーにおいて、「ロードスター」の誕生30周年を記念した全世界3000台限定の「30th アニバーサリー エディション」が発表された。しかし、日本への割当台数を当初予定から追加したにもかかわらず、すでに「ロードスター」「ロードスターRF」ともに全台が売約済みだ。相変わらずの人気ぶりなのである。

また、年式や状態、グレードによって変わってくるが、「ロードスター」も「ロードスターRF」ともに中古車市場で値崩れしていないのも人気の表れだろう。
最新から旧式まで、大人の男たちがこぞって乗りたがるライトウェイトオープンスポーツ。「ロードスター」は、“憧れの”だけでなく一度乗ってみる価値が大いにある車なのだ。
真矢謙三=文 曽我部健(清談社)=編集 MAZDA NORTH AMERICAN OPERATIONS=写真提供