未来世紀シアトル●旅先(=非日常)で得るインプットは、男の日常のアウトプットに大きな影響を与える。1981年生まれ、一児の父、オーシャンズ世代ど真ん中のトラベルエディター伊澤慶一さんは、だから今日も旅に出る。

連載「度々、旅。」の1回目、目的地はアメリカ・シアトルだ。

第1回「シアトルのスタバで散財日記」を読む。

シアトルに来たらスターバックスと同じくらい訪れてほしいのが、Amazon(アマゾン)関連施設。シアトルは世界的大企業Amazonの城下町的な存在で、Amazonでの仕事に従事している人たち=アマゾニアンがたくさん生活しています。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイル...の画像はこちら >>

そんな彼らのオフィスに潜入すると、クリエイティビティを最大限引き出すための心地よいワークスタイルや、最新テクノロジーを結集させた未来のライフスタイルが見えてきました。


Amazonの根幹を成す奇妙なドームの中身

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

Amazon本社のあるサウス・レイク・ユニオン地区は、もともとは倉庫が立ち並ぶ工業地帯でしたが、Amazonが本社を移転してからこの10年間で劇的な進化を遂げました。Amazonのオフィスがいくつも建ち並び、さらに周辺には新社屋ビルの建設が次々進行。そんななかでも、ひときわ目を引くのが、まるで宇宙船のような球体型のオフィス「Amazon spheres(アマゾン・スフィア)」です。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

こちらのスフィア(球体の意味)、通常は一般公開されておらず、「アンダーストーリー」と呼ばれる展示室のみが無料で見ることができます。

ここではオフィスの建築模型や、社屋発展の歴史などが紹介されています。しかし、ここだけではAmazonを見学したとはいえません。実はAmazonは、月に2回、スフィアを含めたオフィスを公開(ホームページより要予約)しています。せっかくシアトルに行くのであれば旅程をそのタイミングに合わせ、事前予約のうえ、ぜひオフィス見学をしてほしいと思います。

ではさっそく、潜入しましょう。


Amazonのオフィスは、本当にアマゾンだった

生い茂るまさにジャングルのような光景……こちらが先ほど紹介した、ドーム型オフィス、スフィアの内部。建物内には、世界中から集められた約400種類、約4万本の植物が人工的に生育されており、まるで植物園のような環境。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた
苔むすオフィス。風情あります。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた
ジャングルなめの仕事風景。

球体は内部で繋がり4階構造になっており、中に入ってみると、外観で見るより広く感じます。生い茂る植物の合間には、バランスよく会議スペースや作業スペースが置かれ、この日も多くのアマゾニアンたちが思い思いに働く光景を目にすることができました。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた
柱に巻き付いた植物ももちろん本物。

気温や湿度が調整され、人間と植物が共生しやすい環境を保つ。そして自然に囲まれたワークスペースで、Amazonの社員は新たなクリエイティビティを発揮し、仕事に還元するという試み。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

実際、シアトルの人たちは、すぐ近くに森や湖に囲まれているというのもあり、アウトドアのアクティビティが大好きで、みんな自然との距離感を非常に大事にしています。まさにAmazonの取り組みも、都心のど真ん中に自然界と同じ環境を作り出し、シアトルらしい快適な環境を創出したというわけです。

NEXT PAGE /

財布不要のコンビニ「Amazon go」へGO!

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

もうひとつ、Amazonらしい施設を紹介します。すでに日本でも話題になっている未来型コンビニエンスストア「Amazon go(アマゾン・ゴー)」です。何が未来型かというと、「No Lines, No Checkout」のコピーのとおり、レジに並ぶ必要がなく、財布を開かず買い物が完結するという点。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

店内に設置された何百台ものカメラやセンサーがお客さんの動向をとらえ、手に取った商品を把握。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた
天井に配置されたカメラやセンサー類。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた
駅の自動改札を出るイメージで商品が買える。

事前にアプリ登録し、QRコードをかざして入場すれば、あとは手にした商品をそのまま持ち出してOK。

商品はアプリ内で自動決済される、という仕組みになっています。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

品揃えは日本のコンビニをイメージしてもらえば同様です。ランチボックスやサラダ、フルーツ、サンドイッチなどが並び、我々が取材したタイミングはランチタイムだったこともあり、多くのアマゾニアンたちが商品を掴んではそのまま店外に持ち出し、スムーズに買い物をしていました。

アプリの登録は観光客も可能。万が一、会計内容が間違っていた場合は「Refund(払い戻し)」ボタンを押すことで決済から外すことができるそうです。

こうした最先端技術を使ったアマゾン・ゴーの体験は、間違いなく未来のライフスタイルであり、ワクワク&ドキドキするものです。アプリ登録の手間はもちろんありますが、買い物にかかる時間は劇的に短縮され、レジに並ぶ時間やストレスから解消される未来の日常を見た気がします。社会がより便利になり、市民がより良い生活を享受する。ここは、そのための壮大な実験場といえるでしょう。

NEXT PAGE /

オフィス内のバーで体感する「働き方改革」

もうひとつ、こちらは直接Amazonとは関係ありませんが、スフィアの中にあるバーを紹介します。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた
光量を落とした照明がムード溢れるバー。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

深海を模したデザインから「ディープ・ダイブ」と名付けられたこのバーは、オリジナルカクテルが豊富で、食事メニューも充実。16時からオープンしており、開店してすぐに行ったのですが、早くも大勢のお客さん(アマゾニアン?)で賑わっていました。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた
知らなければ見過ごしてしまいそうな「ディープ・ダイブ」の入り口。

Lerona St.側にひっそりと入り口があり、隠れ家のような存在。こうした粋なバーが、おそらくアマゾニアンたちの遊び場として、この界隈に増えているそうです。オフィスに隣接するかたちで、こうした場が近くにある環境も素敵だと思いました。

アマゾン関連施設を巡って感じるのは、「とことん働くことは決して美徳ではない」ということ。「成果」と「発想力」を最大限に引き出すために設計されたアマゾン・スフィアと、そこで生まれた「技術」と「ビジョン」をいかんなく発揮したアマゾン・ゴー。両者はシアトルの今を代表する存在であり、オフィスとアマゾン・ゴー、近隣のバーを行き来し、豊かなライフワークバランスを確立するアマゾニアンもまた、シアトルの象徴といえるでしょう。

近未来を垣間見た大人の社会科見学。働き方やライフスタイル、最新テックに敏感なオーシャンズ世代にとって、「シアトルでのアマゾン見学」は、なにより刺激的な旅になること間違いないでしょう。

次回はシアトルのアウトドア大国としての側面に迫ります。

シアトルのAmazon本社に潜入したら、未来のライフスタイルが見えてきた

伊澤慶一●1981年生まれ、一児の父。出版社勤務時代には『地球の歩き方』を始め、NY、LA、パリ、ベルリン、モロッコなど世界中のガイドブックを制作。60カ国以上の渡航歴を持つが、いちばんのお気に入りはハワイ。

Photographs:Ayato Ozawa

編集部おすすめ