連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。
アパレルからギアまで、爆発的な人気がある「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」。しかし、そのルーツを知る人はそう多くないだろう。
じつは小さなアウトドアショップから、ワールドワイドなブランドへと成長したブランドなのだ。過去から最新テクノロジーを採用した注目作まで、プレスチーム リーダーを務める、宮﨑 浩さんに教えてもらった。
小売から世界屈指のアウトドアブランドへ

——「ザ・ノース・フェイス」はもともとショップだったんですか?
ええ、1966年にサンフランシスコでオープンした、主にスキー用品とバックパックを扱う小売店です。レセプションパーティではまだ無名だったザ・グレイトフル・デッドがライブし、セキュリティ担当はバイク乗りの不良集団ヘルズ・エンジェルズ。かなり斬新なイベントだったようで、当時の若者たちから絶大な人気を得ていました。
オーナーでありブランド創設者のダグラス・トンプキンスは、自然を愛するアウトドマンで知られていた。彼の考えに賛同する人々がオープニングイベントで協力をしてくれました。

——ブランド名やロゴの由来は?
ノースフェイスとは雪が残りやすい山の北側を指します。つまり、登山において最も過酷なルートです。ロゴもヨセミテ国立公園の自然からインスパイアを得ていて、“もっとも困難な道を行く“との思いが込められています。
カウンターカルチャー的なアウトドアの価値観を牽引

——初めて世に送り出したアイテムはなんですか?
60年代後半に製作したシュラフです。今でこそ当たり前になっている最低温度規格ですが、初めて表記したのは「ザ・ノース・フェイス」。既存概念にとらわれない画期的アイデアでビジネスにおける常識の裏をかいた、よほどの自信がないとできないアイデアだったと思います。

同時期に発表した内部フレーム採用のバックパック、ルースサックはヒット作となり、今も復刻版が高い人気を誇ります。バックパッキングという言葉がなかった時代ですが、自然の中に身を置くヒッピームーブメントと重なり、徐々に「ザ・ノース・フェイス」は知られた存在になっていきます。

——最低温度規格や内部フレームなど、当時から独創的だったのですね。

この写真は創業時のカタログですが、表紙に商品が一切なく、ブランドと無関係のホームレスを起用。ここから何か新しい「何か」が生まれるんだというメッセージが感じられる。おそらく当時の若者たちにとってアウトドアはとてもモダンであり先鋭的な存在に映ったんだと思うんです。それは最新が最良の世界。「ザ・ノース・フェイス」は創業当時からその精神を持ち続けているわけです。
——ストリートへのアプローチもズバ抜けて早かったと思います。
’90~2000年代はさまざまなスタイルの直営店をオープン。
地球にインパクトの少ないアイテムを目指して

——先鋭的でありつつけてきた、ザ・ノース・フェイス。現時点での最先端は?
いろいろありますが、例えば今年6月に発表した「プラネタリー・エクイリブリアム ティー」でしょうか。繊維メーカーのスパイバーとのコラボによって誕生した、構造タンパク質とコットンのブレンドTシャツ。石油由来の素材ではないので、自然に還るんですよ。

——ユーザーだけでなく、環境にも優しいモノ作りですね。
アウトドアブランドとしては、地球にインパクトの少ないアイテムを作りたい。ですから、今後は構造タンパク質使用モデルを増やす予定です。加えて、我々のサポートによって、一人でも多くの方にフィールドに出て頂きたい。
自然が好きな仲間が増え、同じ意識と良い影響を共有することが、素晴らしい環境へとつながる。「ザ・ノース・フェイス」の最終的なミッションはそこだと考えています。
連載「Camp Gear Note」・「コールマン」編
・「ogawa」編
小島マサヒロ=撮影 金井幸男=取材・文