旅はバッグ選びから始まるわけだが、例えば「温泉でのんびり」と「自然のなかでキャンプ」とでは目的も気分も全然違う。つまり“本当に使えるバッグ”とは、それぞれの旅に見合った機能や見た目を備えたもの、ということになる。
そんなバッグを見つけることができたなら、家族やパートナー、あるいは友人たちと過ごす週末の小旅行はより楽しく、より充実したものとなるはず。むろんただひとりの身となるも良し。傍らには頼れる相棒バッグがある。ある意味、たとえひとりでも“ふたり旅”なのかもしれないな。
いろんな出遭いが人生を豊かにする。と思う。
小さなショルダーは旅の相棒として文句のつけようがないバッグだ。スマートフォン、財布、文庫本、そして列車のチケットなどを入れるのに打ってつけだから。サンローランの新作は、そのサイズ感も装備する収納ポケットも絶妙のひと言。遊び心ある迷彩柄もいい。旅先で、はたしてどんな出遭いが待っているのだろう。期待しつつ、今はこの駅弁の味を楽しむとしようか。

ここ数年来の人気で、僕らの街バッグとしてすっかり馴染んだ感のある巾着タイプ。これが実は、和装にもピタリとハマるのだ。ご覧のとおり浴衣との相性は抜群。素材は牛革で、優しい発色と柔らかな質感が持ち味となっている。内部は筒状できわめてシンプルな作り。ルームキー、財布、スマートフォンを入れれば、散歩の準備は万端というわけ。

宿の近くにある神社仏閣。年のせいか旅情のせいか、こういう場所の空気が理屈抜きで心に染みてくる。フェンディのボディバッグは洗練された都会で映えるけど、旅先においても悪目立ちすることなく、自然に馴染んでくれるところがすごいと思う。均一なシボを持つ最上級のカーフレザーを使用。大人の旅の現地バッグとして、これ以上ラグジュアリーなものはないだろう。
NEXT PAGE /振り返れば思った以上に遠い道のり。

久しぶりの山歩き。ならば最新の、軽量&快適なバックパックに助けてもらうとしようか。本体の素材には軽さと強度を兼ね備えた、30デニールのバリスティックナイロンを使用。インナーバッグを内蔵したロールアップシステムにより、抜群の防水性を発揮してくれる相棒だ。正直、若い頃よりコースタイムはずいぶんと延びてしまった。でもそのぶん、山をじっくり楽しめるようになったんだと思う。
「旅愁」を味わえる年齢になってきたかも。

お馴染みのラゲッジブランド、ブリーフィング。そのトロリーのなかで、週末旅行にベストなサイズ感のモデルがこれだ。優れた耐衝撃性を発揮するポリプロピレン製のボディは見た目もいい。男っぽくて、それでいて洗練されている。わずかなホイール音が思いがけず耳に響いてくる。
芹澤信次=写真 石黒亮一=スタイリング yoboon(coccina)=ヘアメイク 加瀬友重=編集・文