連載「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。

街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。
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東京・馬喰町にあるトレイル&ランニングショップRun boys! Run girls! の店主を務める桑原さん。今回はそんな彼の、こだわりのウェア&ギアをご紹介。前回お伝えした通り、ふとしたきっかけでランニングに目覚め、「東京にかっこいいランニングショップがなかったから」と専門店までオープンさせてしまう。

その大きなきっかけになった出来事が、メキシコの山奥、コッパーキャニオンで行われたとあるレースに参加したことだ。ランナーの間でスマッシュヒットした書籍『BORN TO RUN(ボーン・トゥ・ラン)』の舞台となったレースで、桑原さんもご多分に漏れずこの本にハマり、実際にそのレースに参加するため地球の反対側まで旅をし、コッパーキャニオンの集落にひっそりと暮らす、走る民族・ララムリたちと同じレースを走ってきた。

ランも接客も子育てもできるランニングウェアを選ぶという考え方
右が桑原さん。左はララムリ族の伝説的ランナー、アルヌルフォ。この民族衣装に手作りのサンダルを履いて何十kmも走ってしまうとか。 写真提供=onyourmark

ランも接客も子育てもできるランニングウェアを選ぶという考え方
2013年の「ウルトラマラソン・カバーヨブランコ」の大会参加記念Tシャツ。右がそのきっかけとなった名著『ボーン・トゥ・ラン』。

こういう格好いい大会記念Tシャツがサラッと飾ってあるRun boys! Run girls! で扱うギアは、当然だけれど、桑原さん自身がいいと思ったモノが中心。ランニングの専門店と聞いてイメージする“ザ・陸上競技”のようなアイテムとはまったく異なっている。

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この格好のまま走って、接客して、なんなら子育ても

「ランニングウェアの着こなしって2通りあると思っていて、ひとつはウェア=戦闘服という考え方。日常とは違うモードへと切り替えるスイッチを入れるツールにすること。こういった選び方はもちろん大事で、僕も始めたばかりのころは勝負服的なランニングウェアで走っていました。それこそコンプレッションタイツを穿いてみたり。

でもだんだんと走ることが当たり前になってくるにつれ、むしろ着たいのは普段着のようなデザインだよなと気が付いたんです。

日常生活に溶け込む服でいながら、いざ走ったときには軽くて動きやすく、速乾性があるようなもの。これがもうひとつの考え方です。今日のこの格好のままランニングをするけれど、そのまま接客もしますし、機能的だから子供の世話にもちょうどいいんです」。

ランも接客も子育てもできるランニングウェアを選ぶという考え方
ボトムスは北欧のアウトドアブランド、フーディニの「スウィフトパンツ」。街着としてもオシャレなサルエル風シルエットがお気に入り。

ランも接客も子育てもできるランニングウェアを選ぶという考え方

このようなスタイルに至るまでには、やはりトレイルランニングの影響が大きかったそう。

「トレイルランナーって、走ることを競技としてではなく、自然と対話するための手段として楽しんでいたり、ライフスタイルの中に溶け込ませてる人が多いんです。レースで優勝するようなアスリートでも、どちらかというとナチュラルでカジュアルな、スポーツスポーツしていない人が珍しくありません。実はライフスタイル的な側面のあるアクティビティなんですよ。だから自分が着る服も、お店で扱うウェアに関しても、日常、ロード、トレイルみたいに分けたくないんですね」。

ランも接客も子育てもできるランニングウェアを選ぶという考え方
桑原さんが被るワンポイントのモデルは非売品だが、デザイン違いを販売中。「ディス・イズ・マイ・キャップ」6000円/ディス・イズ・マイ・スポーツウェア×ヴェロスピカ(Run boys! Run girls! 03-5825-4534)

「手前味噌ですがキャップはオリジナルで作っているブランドのもので、THIS IS MY SPORTSWEAR(ディス・イズ・マイ・スポーツウェア)というそのまんまのネーミングです。自分が気に入っていて、必要十分な機能があれば、それってその人にとって十分じゃないの? がコンセプト。

トレイルランで被るなら、よく汗を吸って、軽くて、視界を確保するためにツバが短く、使わないときは折りたためるソフトな素材のものがいい。そのうえで普段から被りたいなと思えるノリのデザインにしています。

お店で仕入れるアイテムも同じような目線でセレクトすることが多いですね」。

ランも接客も子育てもできるランニングウェアを選ぶという考え方
同じくディス・イズ・マイ・スポーツウェアによるリメイクサービスを施したジャケット。ベトナムジャンパー風の刺繍は、実際にベトジャンの刺繍をやっている工房にお願いしている。定期的にオーダーを受け付けていて、手持ちのウインドブレーカーを持ち込みリメイクしてもらう。納期は2カ月程度を予定。1万5000円/ディス・イズ・マイ・スポーツウェア(Run boys! Run girls! 03-5825-4534)。

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地球環境への貢献には見た目も大事

リサイクル、リユースへの意識も高い桑原さん。ランニングウェアに対してもその意識は一貫している。

「商売柄ウェアを消費している側面があるので、少しでもリサイクルに繋がることをしようと、ブリングのウェアを扱い始めました。ブリングは服のリサイクルプロジェクトで、役目を終えたウェアを再生ポリエステルの生地に変えています。秀逸なのが普段着としても着られるコットンライクな化繊に生まれ変わらせている点で、そこがいいなと思ってコラボレーションしています。パッと見はランニングウェアには見えませんよね」。

ランも接客も子育てもできるランニングウェアを選ぶという考え方
桑原さんが着用している“RBRG”ロゴのTシャツと同じボディーを使用。ショップの裏テーマである“トーキョーランニングカンパニー”が元ネタ。「トーキョーランニングカンパニーT」6300円/ランボーイズ!ランガールズ!×ブリングTシャツ×タコマフジレコード(Run boys! Run girls! 03-5825-4534) 

「シューズに関しては、最近はアルトラやオンをよく履いています。ナイキの『エア ズーム ペガサス 36 トレイル』は、トレイルランニングシューズだけど、ロードも走れちゃう。

ロードラン用とトレイルラン用の違いですか? よく聞かれることのひとつですが、ロードバイクのタイヤとマウンテンバイクのタイヤって違いますよね。それと一緒で、アウトソールがさまざまなサーフェイスに対応できる凹凸のあるものがトレイルラン用。その凹凸がありつつも、アスファルトのフラットな路面もしっかりとらえられる、中間的な存在がこのモデルです。

おまけにこのカラーリングは普段履きもできます」。

ランも接客も子育てもできるランニングウェアを選ぶという考え方
ナイキの「エア ズーム ペガサス 36 トレイル」。

トレイル&ランニングショップを名乗るだけあって、走ることに対する垣根をとっぱらっているのが桑原さんのショップRun boys! Run girls!の特徴だ。

ランニングはただのスポーツではなくライフスタイル、むしろそのほうが格好いい。タイムを追求するのとはひと味違う、アップデートされた楽しさがきっと見つかるはずだ。

RUNNER’S FILE 02
氏名:桑原 慶
年齢:44歳(1975年生まれ)
仕事:トレイル&ランニングショップ Run boys! Run girls! 店主
走る頻度:週に1、2回。週に一度は
ランニング歴:10年
記録:フルマラソン3:35(2012年 掛川新茶マラソン)、UTMBはじめ100マイルトレイルレース完走(3回)

小澤達也=写真 礒村真介(100miler)=取材・文

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