連載「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。
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人気セレクトショップ、ジャーナル スタンダートでディレクターを務める松尾さんは、前編でお伝えした通り、マラソン大会とは無縁のランニングライフを送っている。走っている理由は「趣味の山遊びのための体力づくり」。
忙しい合間を縫って出かける山遊びで、魅力的なルートを「日帰り」で楽しむために行っている。通常は山小屋やテントで1泊以上しないと戻ってこれないようなロングトレイルでも、トレッキングの移動ペースを上げて、あるいはトレイルランのスタイルでスピーディかつ軽快に。そのために走ってフィジカルを整えている、というわけだ。
山ヤが選ぶランニングギアとは
「走っている理由が理由なので、果たしてランナーと呼んでいただいていいものなのか」と謙遜する松尾さんだが、山に行かないときでも週3ペースで走ると言い、スラッとした立ち姿はどこからどう見てもランナーだ。
けれども、ランニングで使用するギア選びは確かに一般的なランナーとは少し様子が違っている。

取材時はまだ肌寒かったので、トップスはウールのフーディだ。メリノウール素材は濡れても保温力が下がりにくいため、山での汗冷えが防げると近年アウトドアで評価が見直されている天然素材。
「山ヤなので、普段のランニングでもトレイルランニングやトレッキング用のアイテムを使うことが多いんですよね。アクリマはメリノウール素材のベースレイヤーなどを手掛けるノルウェーのブランド。これはフード部分が着脱できるセパレートタイプなので、今日みたいにネックウォーマーとしても使えますし、完全に取り外すこともできます。
グレーの落ち着いたデザインは街にも好ましい。同じくパンツも山用のアイテムで、日本のガレージブランド「山と道」の定番ボトムスだ。
「ロングトレイルをスルーハイクする人のために開発されたパンツです。いちいちバックパックを下ろして荷物を出し入れする手間を省けるようポケットがたくさんついているんですが、これが都会ではくにも便利。トレイルでの足さばきを考慮したテーパードシルエットで、その点もファッションとして取り入れやすいんですよ。だから普段ばきもしています」。


シックな色みのアイテムが見つかるのも、山用のギアだからこそ
シューズなどのギア回りも基本、トレイルランニング関係のアイテムをセレクト。

「定番のジョギングコースにしている世田谷の砧公園は芝生のクロカンコースも取れるので、トレイルランニングシューズで走りに行くことが多いですね。アルトラのローンピークは長距離を走破するためのボリュームあるソールを備えていて、適度な柔らかさがあります。だからロードランでも問題なく使用できてしまいます」。
これまたカラーリングも落ち着いていて、コーディネイトの対応力が広いところも特徴だ。通勤ランをすることも多く、そのためのパックも同じ目線でセレクトされている。

「OMMのバッグは軽量のわりに背負い心地が良く、荷物を背負って走っても揺れが気になりにくい設計になっています。もちろん山でも使いますが、15Lという容量はデイリーユースにも向くんですよね。通勤ランをするときはこれに荷物を入れて帰宅します」。

バイイングの仕事も行うため、山やランで実際に使いこなしてみることは、こういった“ギア”の本質を理解するのに役立っている。
また、山のアイテムというと派手なカラーリングを思い浮かべる人も多いかもしれないが、ライフスタイルにも密接に関わるトレイルのギアは松尾さんが選んだようなシックな色みのものも多い。機能性はもちろん、タウンユースにも兼用が利くアイテムの宝庫なのだ。

RUNNER’S FILE 06
氏名:松尾忠尚
年齢:45歳(1975年生まれ)
仕事:ジャーナル スタンダード メンズディレクター
走る頻度:週2~3日、1時間程度
記録:レースへの参加はなし
礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真