フェラーリの新型GTクーペ「フェラーリ ローマ」が日本に上陸した。
そのテーマは、1960年代ローマの“気ままに楽しむライフスタイル”にだという。
跳ね馬がイブニングドレスを纏った
コンセプトワードは「ラ・ノーヴァ・ドルチェヴィータ」。そう、往年の名作映画よろしく“新・甘~い生活”を体現した跳ね馬なのだ。
フェラーリといえば、泣く子も黙る高らかなエンジンサウンドに、ロッソコルサ(赤)やジアッロモデナ(黄)といったカラーリング、空力重視ゆえのド派手なエクステリア、そしてF1マシン譲りの(フェラーリはF1で勝つために市販車を売っているといわれている )当代の最新テクノロジーが特徴だ。

しかし、新型「フェラーリ ローマ」の様相はこれまでの跳ね馬とはまったく異なるものだった。フェラーリ自らが「イブニングドレスに身を包んだF1マシン」と謳うだけあって、エレガンスを全面に押し出したデザインコンシャスなV8FRクーペなのだ。
デザインソースは1950~60年代のフェラーリのGTロードカー。流線形が美しいロングノーズをさらに伸ばした、フェラーリ初となるシャークノーズを採用している。

また、フェラーリ“らしくない”デザインはもうひとつ。
フェラーリの特徴とも言えるエアインテークやディテールの装飾を意図的になくしているのだ。シンプルな造形のフロントグリルもその一環。またフェンダーサイドに冠されるお馴染みの“スクーデリアフェラーリ”エンブレムも見当たらない。
フェラーリであることをこれ見よがしに主張しない。いつものディテールさえ排していることには驚いた。
甘い見た目に反するF1譲りの中身
そんな甘い見た目に反して、F1譲りの技術もこのローマには投入されている。
心臓部は620psのV8ツインターボエンジンに新開発8速DCTを組み合わせる。実はこのギアボックスは、現行フェラーリで最高峰のスペックを誇る「SF90ストラダーレ」とも遜色ないF1譲りのものだ。

フロントリップはそこまで低くなく、後席に荷物を置ける2シーター+αの実用性も高く、ウェットモードも備えた走行モードなど、イブニングパーティーにも乗っていける気軽なフェラーリであることは間違いない。


車両本体価格はおよそ2700万円と噂されている「フェラーリ ローマ」。そのシックな見た目をひとり硬派に味わうのも良し、またはタキシードでビシッと決めてパートナーと二人でレストランへ出かけるも良し。
赤でも黄色でもない新たな美徳を打ち出した「フェラーリ ローマ」は、成熟した大人の“甘い生活”に、ぴったりと言えよう。
カストロトシキ=文