コスパ良しな「コレ買っ時計」とは?
前回、スウォッチを集めはじめたきっかけと、大人になってからの付き合い方を教えてくれた中室さん。
今なお“スウォッチ愛”は止まらず、周囲からの「また増えたんですか?」というあきれ声にもめげす、愛するスウォッチを集め続けている。
多くのブランドのPRを務める中室さん。1981年生まれ。あくまでシンプルな中に遊び心を忘れないスタイリングは、数々のメディアで取り上げられ、「スウォッチは大人こそ楽しむべき」という持論を提唱する。
今回は、スウォッチの魅力が詰まった選りすぐりのコレクションを見せてもらった。
コレクション1:
スウォッチらしさ全開の9本セット

「じゃあ一番のとっておきから」と、大きな箱を広げる中室さん。コレクターの間でも「見つけたら買っとけ!」と言われているレアな逸品だ。
「スウォッチといえば、オリンピックものが有名です。なかでもこれは歴代の9回のオリンピックモデルがセットになっていて、スウォッチとオリンピックの歴史を象徴するようなセット。それぞれデザイン的にもかっこいいし、気に入っていますね。1964年の東京オリンピックは特に秀逸。まず当時のポスターがいいですし、それを時計のデザインにうまく踏襲しています」。

ちなみに、状態がいいものは9本セットで相場は10万円近くするとのことですが……。
「僕は埼玉のジャンクショップでたまたま見つけて、驚きの9800円でした。
コレクション2:
アタランタ五輪モデルは絶対だ!

続く1本もオリンピックもの。先ほどのコレクションには収まっていないアトランタオリンピックの記念モデルだ。

「1996年のアトランタ大会のモデルですが、年代的にもこの辺のスウォッチは好きです。そういえば昔、御殿場のアウトレットで’95年くらいまでのモデルが大量に売られていて。業者さんばりにたくさん買った思い出があります(笑)。そういう大人買いができてしまうのも、楽しいところですよね」。
コレクション3:
クールなデザインとアイデアに感服!

もう1本、オリンピックに縁の深いスウォッチには、こんな変わり種も。
「これも1996年のアトランタ大会モデルなんですが、著名なアメリカの写真家であるアニー・リーボヴィッツの写真がプリントされています。しかも、ルーペ付き。

もったいなくて1回も使っていませんが、デザインがすごく好きです。こういう独創的で格好いいアイデアを出してくるところが、やっぱりスウォッチっていいブランドだなって思わせますよね」。
コレクション4:
センスのいいパロディ

こちらも全面プリントシリーズ。ただしオリンピックではなく、なにやらお金にまつわる格言めいたメッセージが。

「アメリカのクォーター硬貨がモチーフです。硬貨に刻まれる“IN GOD WE TRUST”をパロって、“IN TIME WE TRUST”や“in money we trust”に。まあ、意味は深く考えずにとにかく見た目がいいなって(笑)。’97年リリースの1本です」。
コレクション5:
スタイルの“ヌケ”担当として活躍!

見た目重視なら、こんなモデルも。ダンガリー調の生地をストラップだけでなくダイヤルにも貼り付け、その上からオウムのプリントを施す。洒落たネクタイのようなビジュアルが面白い。

「カラフルでポップなんだけど、あえてスーツに合わせたり、コーディネイトの“ヌケ”として活躍してます。そういえばこの間、代々木公園でオウムが飛んでましたね……みたいな話のきっかけにもなる1本です(笑)」。
コレクション6:
「バカバカしい」は褒め言葉

中室さん曰く、「いい意味のバカバカしさ」も、スウォッチの魅力であり、だからこんなデザインにも惹かれるという。
「右はセントバーナードがダイヤルにプリントされていて、ベルトはご丁寧に色分けされ、セントバーナードが首につける樽も見受けられます(笑)。左は、プール付きの庭がイメージソースでしょうか。芝生のストラップに赤い車が停まっていたり、かなりユニークです。プールで泳ぐ人が針の代わりになっているんですが、とにかく時間がわかりにくい。
コレクション7:
機能に惚れた珍しい1本

エッフェル塔などのアーティスティックな写真がプリントされたこちらは、珍しく機構に惹かれた1本。
「これ、実はソーラーなんです。陽に当てれば動き続ける。いつ買ったかは覚えていませんが、当時は珍しくて。ダイヤルにワールドツアーと書いてありますが、誰のなんのツアーかは不明です(笑)」。
コレクション8:
異国のお姉さんご用達のヤツ

これまで紹介したのは、すべて径の小さい「ジェント」と呼ばれるシリーズ。ただ、こちらは大きめサイズが特徴的だ。
「『ポップ』シリーズですね。僕が昔、親の仕事の関係でベルギーのアントワープに住んで学校に通っていた頃、先輩のお姉さんたちの間でとにかく流行っていて。大人になってから、僕も1本だけ買いました。ベルトと時計部分が分離して取り外せますが、ずっと当時のものをつけています」。
コレクション9:
まだ手に入らない、あの1本……
スウォッチの話をするうちに、「またどんどん欲しくなってきた」と語る中室さん。うんちくよりデザイン重視のコレクションは今も増量中だ。

こちらは、ストラップに「The Swatch Collectors of Swatch」とと書かれた限定モデルのゴールデンジェリー。
なお、現在狙ってるのは、スウォッチの原体験でもある初代ジェリーフィッシュとのこと。

「初代ジェリーフィッシュは、6歳のとき姉が父からもらっていたモデルで、いまだに手に入れていません。似たデザインのゴールデンジェリーは入手できたんですが、やっぱり当時のアレが欲しいですね。
もちろんゴールデンジェリーも稀少で、実際に買えたときは大興奮でした。ネットで購入したんですが、そのときのクリックは自分史上いちばんぐらい速くて強かった(笑)」。
では最後に。もしスウォッチ社から「中室さんモデルを作って」と言われたら?
「そっくりそのまま、初代ジェリーフィッシュを作ります。色も形も一切手を加えず、混じりっけなしの復刻(笑)。欲しい!」。
難しい機械の話や、歴史の知識も必要ない。直感的に見た目で選んで、たくさんのバリエーションや特別モデルで楽しめるスウォッチ。
コスパ良しな「コレ買っ時計」とは?
複雑機構ならいいワケじゃない。有名ブランドならいいワケでもない。カジュアルに付き合えて大きなリターンがあるのが理想。見た目もコスパもいい「コレ買っ時計」を、さまざまな切り口で選抜。
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増山直樹=文