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「たのしい睡眠」とは……

慢性的な睡眠不足を解消する方法のひとつとして注目されているのが “食事”だ。食事と睡眠には深い関わりがあることは医学的にも明らかになっているという。

そこで今回は、健やかな睡眠を得るための食事法について紹介していこう。

 


朝食を抜く習慣で体内時計が乱れる

睡眠障害に悩む人に共通点は、“体内時計の乱れ”だ。体内時計が乱れると、「メラトニン」というホルモンの分泌サイクルが崩れ、眠りにつくときに適正量が分泌されなくなってしまう。その結果、眠りが浅くなって「成長ホルモン」の分泌量も減少。心身の疲れがとれなくなり、長引けば不調をきたすことになる。

では、乱れてしまった体内時計を正常な状態に戻すにはどうすれば良いのか? カギを握るのは“食事”だ。食事は、栄養補給という役割だけでなく、体内時計の調整も担っている。とくに朝食は、太陽光と同様に体を覚醒させる働きがあることがわかっている。

朝食による体内時計調整機能を高めるうえでは、当然「何を食べるか」が重要になる。理想は糖質とたんぱく質を含んだバランスの良いメニュー。ご飯やパンのみといった、糖質だけの食事では、体内時計調整機能は十分に発揮されない。

●体内時計を整えて、ぐっすり眠るための朝食例

【和食系】
ごはん、納豆、焼き魚、ホウレン草のおひたしなどの緑黄色野菜、トマト
【洋食系】
パン、目玉焼き、チーズ、牛乳、ブロッコリーなどの緑黄色野菜

そうは言っても「朝しっかり食べる時間なんてないよ」という人は、例えばバナナとヨーグルトだけでもOK。この組み合わせで、糖質とたんぱく質をしっかり補給できる。

ヨーグルトのような乳製品は、寝つきをよくして睡眠の質を高める食品の代表格だ。その理由は「トリプトファン」というたんぱく質(アミノ酸)の一種が多く含まれていること。精神の安定を司る脳内物質のひとつ「セロトニン」や「メラトニン」の材料となる物質だ。

ただし、乳製品に含まれる「トリプトファン」がメラトニンに変換されるには段階がある。それは、朝に太陽光を浴びてリズム運動(噛む、歩くなど)をすることで、日中にトリプトファンからセロトニンが作られ、夜になるとセロトニンがメラトニンになる、というもの。そのため、安眠のためには朝食時に乳製品を食べておくのがベストだ。


夕食は必須だが、タイミングが大事

ぐっすり眠れない理由は「朝食と夕食抜き」。快眠のためのベストな食事とは?

睡眠の質を左右するのは朝食だけではない。夕食のとり方にも問題があると、睡眠の質は低下してしまう。それだけ食事と睡眠は深く関わっているのだ。

ポイントは「就寝時に胃をできるだけ空っぽにしておく」ということ。食べた物が胃に残っていると、睡眠中も胃が動くので内臓も脳も休めない。就寝の2~3時間前、できれば20時以降は何も食べないことをおすすめする。

とはいえ、多忙な人にとっては遅い夕食なんて日常茶飯事だろう。そんなときは「食物繊維の多い食品を避け、消化の良い食品を食べる」「脂質の多い食事を避ける」「オクラやモロヘイヤのような、消化をサポートするネバネバ野菜を食べる」「主食は白米など精白したものを食べる」など、できるだけ就寝までに、食べた物が胃に残らない状態に近づけるよう工夫してほしい。

というのも、夕食をごそっと抜くことはNGだからだ。そこで、夕食が21時以降になるときは、18時頃におにぎりなどの主食を食べておき、夕食は脂質が少ないおかずを食べる、といった分割食をおすすめする。

就寝環境を整えるだけでなく、朝晩の食事にもひと工夫加えて、快適な睡眠を手に入れてほしい。

●睡眠の質を高める食事法
・朝食にたんぱく質源となる肉、魚、卵、大豆製品、乳製品を必ず食べる。
・朝食と夕食は、毎日できるだけ同じ時刻に食べる。
・夕食は就寝2時間前までに終える。遅くなる時は分食する(例.18時頃におにぎりなどで主食を簡単に済ませ、帰宅後の夕食はおかずのみにする)。
・夕食はできるだけ脂質の少ないものにする。

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「たのしい睡眠」
日本生活習慣病予防協会によると、「慢性的な不眠」に悩まされているのは日本人の5人に1人。読者のなかにも「最近寝つきが悪くなった」「早朝に目が覚めてしまう」など、“睡眠”にまつわる悩みを抱えている人がいることでしょう。

果たして睡眠の質を高めることはできるのでしょうか? さまざまな角度で検証していきます!上に戻る

篠原絵里佳=監修
管理栄養士/睡眠改善インストラクター/上級睡眠健康指導士。総合病院、腎臓・内科クリニックを経て独立。長年の臨床経験と抗加齢医学の活動を通し、体の中から健康を作る食生活を見出し、最新情報を発信している。アスリートの栄養指導経験も豊富で、食事と睡眠の観点から健康にアプローチする「睡食健美」を提唱。

楠田圭子=取材・文

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