’90年代より東京ストリート・カルチャーの中心的存在として、ダンサー、DJ、ファッションの分野で活躍するJOMMY。
以前紹介したクラブ「JUICE」に続き、’90年代の西麻布でJOMMYが影響を受けたクラブがもうひとつある。
東京のアンダーグラウンド・クラブシーンが新しい展開を迎えようとしていた1991年にオープン。ニューヨークから直輸入のハウス・ミュージックがリアルタイムで聴けるクラブでもあった。
「夜の遊びを教えてくれた先輩のアツシくんに連れられてオープニングにも行き、新しい音楽=ハウス・ミュージックに出会ったのが『Yellow』でした。
当時は六本木や新宿のクラブへ行くと、ヒップホップがかかっていてダンサーもたくさんいたけど、西麻布のクラブは別世界。六本木のようにボディコンやスーツ姿の人なんていなくて、デニムにスニーカーを履いた人たちがフロアで踊っていて……そんな初めて見る光景を今でも鮮明に覚えています」。
ヒップホップがストリート発の音楽だとすると、ハウスはそれとは異なる側面を持った音楽であることを感じたというJOMMY。
「人種や性別を超えて、ハウスはもっと開けた感じがある。ドラァグクイーン、LGBT、ファッション業界人、美容師……、場に集まる人が作る雰囲気もほかのジャンルのクラブとは全然違う。目にするもの、聴くものすべてがカルチャーショック。
数多くのアーティストに影響を与えたハウス界最強ユニット、マスターズ・アット・ワークの存在を知ったのも『Yellow』。そのときに聴いた曲は今でもDJのときにプレイしています」。
ツイスト頭のクラブキッズが西麻布で出会った衝撃は、DJとしてのJOMMYのルーツになっている。
JOMMY’S favorite tune – ’90S House Music

Masters At Work feat India「I can’t Get no Sleep (Ken Lou 12ʺ Version)」
「初めて『Yellow』に行ったときに観たインディア(*)のライヴがインパクトあり、僕の中でこの曲は、生涯の西麻布のテーマ曲になっています」。
*マスターズ・アット・ワーク同様、’70年代のニューヨークで逞しく生きたプエルトリカンで、ハウス・ミュージック界の歌姫。

You Can Do It (Baby)「Nuyorican Soul feat. George Benson」
「当時、ニューヨークと東京を行き来していたDJ Toshiyuki Gotoさんが、『Yellow』で日曜の夕方から23時あたりまで『SUNDAY AFTER NOON』という、ダイレクトにニューヨークのバイブスを感じるパーティをやっていて、ピークタイムでこの曲を色っぽくかけていたことを思い出します」。

Barbara Tucker「Beautiful People (The Underground Network Mix)」
「イントロの高揚感が最高。バーバラ・タッカー(*)のスーパーソウルフルで耳に残るサビのループが、何といっても名曲なんです」。
*シンガソングライター、振付師、クラブプロモーター、ボーカリストとしてニューヨークのハウス・ミュージックシーンを支えてきたゴッド・マザーのひとり。
吉岡加奈=文