ハチ公、道玄坂、公園通りなどと同じように、宮下公園もまた、渋谷という街を象徴する場所であり続けてきた。そして今の東京のファッションの中心で活躍する人たちは、多くがその青春を宮下公園で過ごしてきたのである。
そんな彼らが、渋谷の新名所「MIYASHITA PARK」でストアを手掛けたとなれば、話を聞かざるを得ない。
「リアルにスケートボードを楽しんでいました。それから何十年も経って、生まれ変わったMIYASHITA PARKに店を開くというのだから……面白いですよね」。そう語るのは、ビームスでサーフ&スケートボードセクションを担当し、SSZのディレクターを務める加藤忠幸さんだ。
「ポップアップショップという名前にしたくなかったんです。期間限定ではありますが、SSZとして本当に店を開きたいという気持ちを込めてこう名付けました」。
テンポラリーストア、すなわち“SSZの仮店舗”という意味である。その商品展開は実に力がこもっている。

注目アイテムは、ボードショーツとビーチサンダル。こだわり抜いた仕様と楽しいギミックに驚かされる。
「“サーファーにとっての正装”と捉えたマジックナンバーとのボードショーツは、素材と履き心地にとことんこだわったモデルです。そしてリーフとコラボしたビーチサンダルはソールに栓抜きが付いていたりと遊び心満点。
このほか、スケート&サーフ界の伝説として知られるデビル西岡のアートワークをプリントしたTシャツなど、多くの先行販売アイテムを用意する。

またベドウィン & ザ・ハートブレイカーズの渡辺真史さんはこう回想する。
「昼間はアルバイトの休憩時間にベンチに腰掛けて友達を待ってみたり、夜中には酒を飲んだり。チーマーも、スケーターも、家族連れもいました。いろんな人たちが憩いを求めた場所だと思います」。
渡辺さんは東京ブランドとスニーカーブランドで構成するショップ、DAYZ(デイズ)をオープンさせる。店名には「あの頃の日々を思い出し、この頃の日々を感じ、そしてこれからの日々をつくっていく」という思いを込めたそうだ。

DAYZのコンセプトに共感して集ったさまざまなブランドから“東京ローカルらしい”アイテムがリリースされるという。「ネイバーフッドからは1990年代のアーカイブを復刻。アンダーカバーには今の感覚を表現したアイテムを作ってもらいます」。
またインセンスブランドのクンバや西山徹さんが手掛けるFRARのアイテムも展開するそうだ。
「カルチャーのハブとして機能するよう頑張りたい。渋谷はさまざまな人が行き交う街。性別も年齢も国籍も関係なく、渋谷のカルチャーを愛する人たちが喜ぶようなイベントを企画していきたいですね」。

若き日を宮下公園で過ごしたふたりが手掛けるそれぞれのショップ。共通しているのは単に当時を懐かしむのではなく、今のMIYASHITA PARKを通じて新たな“渋谷カルチャー”を発信しようとするチャレンジ精神である。
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 加瀬友重=文