「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……

言わずと知れた高級時計の名門IWCが手掛けたパイロットウォッチ「マーク11」は、数あるヴィンテージのミリタリーウォッチの中で支持率NO.1とも言える超人気モデルだ。

市場価格は100~140万円前後が相場で“常に探している人がいる”と言われている。

では、なぜこのモデルが圧倒的に支持されるのか? その理由について、「デザイン」「バリエーション」という2つの角度から検証する。

 


機能美に裏打ちされた“不世出のデザイン”

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を...の画像はこちら >>

IWC製の「マーク11」は、製造期間が1948年から1960年代初頭と非常に長いのだが、デザインに関しての変更はほぼ見られない。

そのことからもわかるように、「マーク11」が今でも色褪せない理由は、当時の最先端を走る優れた設計にあるのだ。

第二次世界大戦時にイギリス陸軍に納入された防水時計「W.W.W.」シリーズの最高峰とされるIWCの「マーク10」と比較すると、当時の技術開発者たちが「マーク11」にかけた意気込みが伝わってくる。

両者の決定的な違いはシンプル。「マーク11」はパイロットウォッチであることだ。

まずは文字盤に着目。スモールセコンドであった「マーク10」に対して、「マーク11」は白い秒針を備えたセンターセコンドに。これにより視認性が格段に向上したことは言うまでもない。

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
文字盤には、「ブロードアロー」と夜光塗料にトリチウムを使用していることを意味する指す「T」マークがプリント。

次はケースの構造について。

パイロットウォッチゆえ耐磁性能を求められた「マーク11」は、ムーブメントが磁気帯びしないようにインナーケースで挟む2重構造を採用した。

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
磁気への対策として、インナーケースを搭載。

「W.W.W.」でも採用している傘型の風防を継承しつつ、ねじ込み式の裏蓋、防水に強いリュウズを新たに取り入れることで防水性能も格段にアップ。

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
ねじ込み式のケースバック。マーキングの「6B」からイギリス空軍に納入されていたことがわかる。

手巻き式ムーブメントの「Cal.89」には、この時計のためにハック機能が追加されている。

初期型を除くと、耐震装置(インカブロック)が装備されていることも付け加えておこう。

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
「マーク11」特有のマーキングとして、ムーブメントにも「ブロードアロー」の刻印が入る。

これはミリタリーウォッチに限らないが、ムーブメント然り、優れた内部構造を持つ時計は総じてスタイリングのレベルも高い。見た目もイケてるというわけだ。

そして「マーク11」が持つ、適度な厚みがある36mmの小径ケース、シンプルで力強いデザインの文字盤は、同じ3針の時計でありながら、一般的なドレスウォッチとは明らかに異なる魅力が溢れている。

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
肉厚なケースやソリッドなベゼルも、優れたデザインの一部。


豊富なバリエーションが価値を生む

時計でもデニムでも、ヴィンテージが人気を得るためには「飽きないデザイン」「ある程度の流通数」「ユニークなディテール」が必須条件となるが、もちろん、IWC製の「マーク11」は、この条件を十分に満たしている。

第一に、競合他社であるロンジン、ジャガー・ルクルトの「マーク11」は、稀少性という意味ではIWCを上回るが、それゆえ入手が極めて困難であり、実機を目にする機会すら少ない。

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
「ロンジン イギリス空軍 マーク11 6B/346」 1949年支給、SSケース、44mm径、手巻き。参考商品/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

それに対して、IWCが手掛けた「マーク11」は製造期間が長かったため玉数もあり、コンディションにこだわらなければ見つけること自体は難しくない。

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
「ジャガールクルト マーク11 オーストラリア空軍 6B/346」 1953年製、SSケース、35mm径、手巻き。140万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

イギリス軍、南アフリカ軍、オーストラリアやニュージーランドなどの空軍に納入していた背景から、文字盤にいくつかのバリエーションがあり、「ブロードアロー」や「Tマーク」の表記がプリントされていないタイプも見つかる。さらには民生用のモデルまであるのだから面白い。

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
「IWC オーストラリア空軍 マーク11 G6B/346」 1957年支給、SSケース、36mm径、手巻き。120万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

 

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?
「IWC マーク11 民生用 スペシャルスペック」 1970年代、SSケース、36mm径、手巻き。120万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

ミリタリーウォッチ界屈指の名機は、時計好きだけでなくアメカジ好き、モノ好き、すべての人にオススメ。“時代を超えた究極の定番”として、色褪せない輝きを放っている。

 

ヴィンテージミリタリー時計の超王道。IWCの「マーク11」を知っているか?

[取材協力]
キュリオスキュリオ
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電話:03-6712-6933
営業:15:00~20:00 月・火曜定休
https://curious-curio.jp

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軍用を出自とするミリタリーウォッチは、国や時代、用途などによって驚くほど奥が深い。

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※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール

戸叶庸之=編集・文

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