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「37.5歳の人生スナップ」とは……

今や映像作品を見ていて実写でダイナミックな鳥瞰風景を見ることは、珍しくなくなってきた。

もはや、どうやって撮ったんだろう? という疑問も持たないかもしれない。

そう、ドローンカメラだ。

そんな絶景を撮影するドローングラファーの第一人者である中村 豪さんは、主に動画のカメラマンとして、ドキュメンタリー番組にドラマ、プロモーションムービーなどさまざまなジャンルで活躍中。

広い大自然の風景を遥か上空から見渡したり、空中を自在に動いて人の目では見えない視点から被写体を捉える。そんなドローンカメラに中村さんが魅了されたその原点を探ると……。

「子供の頃、電信柱になりたいと思っていたんです(笑)。変な話ですが、高いところからものを見てみたいと思っていたんですよ。ドローンカメラを手に入れて、それが叶ったわけですね」。

そして、中村さんにはドローングラファーのほかにもうひとつ、プロフェッショナルな顔がある。住宅や店舗の内装を手掛けるインテリアデザイナーという仕事だ。

そして、このどちらの仕事にも深く関わっているのが、サーフィンだという。


好きなこと、やりたいことを全部叶える道具を見つけた

鎌倉育ちの中村さんにとって、10代の頃から始めたサーフィンはずっと変わらず人生の軸となっているもの。

ドローンカメラとも、そのサーフィンを通じて出合った。2013年、ちょうど中村さんが37.5歳の頃だ。

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@ikarip ‍♂️ またいつかこの目で観れる日を楽しみにしています

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(c)Go Nakamura

「インターネットでサーフィンの動画や写真を見ていたら、まるで見たことのない動画を見つけたんです。それがドローンで撮ったものでした。ちょうど同じタイミングで、ハワイにいたプロサーファーの弟から『これからはこの時代が来るよ!』と、ドローンの映像が送られてきたんですよ」。

もともと写真を撮るのが好きだったこと。ラジコンの操縦に憧れがあったこと。子供の頃から夢見ていた「世界を上から見る」ことを叶えてくれて、そしてサーフィンを見たことのない角度で見ることができること。

「そういう自分の好きなこと、やりたいことが全部実現できる道具がドローンだったんです」と、中村さんは迷わずドローンを買った。

当時、4~5万円。まだカメラ付きのものはなく、GoProを機体に取り付けて使っていた。


ほかの人より早かったことが、仕事につながった

「今はモニターを見ながらアングルを確認できますが、当時はモニターもなかったんです。だから飛ばしている間はどういうふうに撮れているか分からない。完全に自分の感覚だけが頼りです。

最初の頃はドローンが戻ってきて見たら全然撮れてなかったなんていうことはしょっちゅうでした。

今はカメラが進化していろんなことが自在にコントロールできるようになっていますが、そうやって初期に操縦と撮影の感覚を磨いたことは、今、撮影の仕事ですごく役に立っていますね」。

インテリアデザイナー中村 豪がドローングラファーという“2足目のわらじ”を手に入れるまで

しかし、中村さんがドローンに魅力を感じたのは仕事を見据えてのことではない。シンプルに、「面白そうだ!」と思ったからだ。

好奇心に突き動かされて、サーフィンをもっと楽しむための新しいツールとして、ドローンカメラを手にしたのだ。

そして、それが仕事になったきっかけもやはりサーフィンにある。

「僕がドローンで撮るようになって、『豪がなんか新しいことを始めたよ』ってサーフィン仲間に知られるようになったんですね。ちょっと撮ってほしい、と頼まれるようになって、そういう中には、雑誌やテレビの世界で働いている人もいるわけです。

そういう人たちから声をかけていただいて、だんだんと仕事としてドローン撮影をするようになりました。始めたのが比較的早かったので珍しかったから、みんな興味を持っていたんですよ。撮ったものを見せると驚いてもらえるのが、うれしかったですね」。


「分からない」を包み隠さず聞く、教えてもらう

趣味で飛ばしている間に磨いた操縦技術には自信があった。そしてカメラについては、もともと写真を撮っていて基本的な知識はあったものの、仕事で撮影を重ねながら、知識やノウハウを学んでいったという。

「一緒に現場に入ったカメラマンの方にずいぶん教えてもらいました。天気によっての設定やレンズのこと、分からないことは包み隠さず聞いていました。そこでカッコつけてもしかたないですから」。

そしてドローン撮影が広まりいろいろな人が始めると同時に、規制も始まった。簡単には飛ばせなくなったし、誰でもは撮影できなくなった。

しかしそれも、いち早く仕事として始めて、国土交通省の撮影許可証も早くに取得していた中村さんにとっては、障壁にならなかった。

インテリアデザイナー中村 豪がドローングラファーという“2足目のわらじ”を手に入れるまで

「僕は全域の許可証を持っています。これを取得した当時、この許可証はNHKとフジテレビと僕しか持ってなかったんですよ。今、新規に取得するのは結構大変だと思います」。

そして2018年には、大きな仕事を手掛けることになる。

>後編に続く

プロフィール
中村豪(なかむらごう)●1975年神奈川県鎌倉市生まれ。サーフィンを生活の中心に据えたライフスタイルを送る、インテリアデザイナー/ドローングラファー。

株式会社nadaの代表として店舗や住宅の設計設備を手がける傍ら、メディアや行政などさまざまな業界から依頼を受けて、ドローン撮影を行う。2018年には大河ドラマ「西郷どん」のオープニング撮影と劇中撮影を手がけ、オープニング制作を担ったメンバーとクリエーター集団「L.S.W.F」を立ち上げる。

「37.5歳の人生スナップ」
もうすぐ人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。上に戻る

川瀬佐千子=取材・文 中山文子=写真

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