泡の酒にフォーカスしている本特集。シャンパン、ビールときたら、ハイボールも忘れちゃいけない。
でも、なぜバーで飲むハイボールってあんなにウマいんだろう……という疑問を解消すべく、世界各地から集めた1000種以上のウイスキーを取り扱う「トーキョー ウイスキー ライブラリー」を訪問。
バーテンダーの小田健吾さんに話を伺い、少しのコツで格別にハイボールが美味しくなる裏技を教わったので、特別に伝授しよう!
喉ごし最高! 自宅で真似したい「フリーザー ハイボール」とは?

「ロックよりもハイボールを注文する人の方が増えてますね」。
その名に違わぬ、まさに“ウイスキーの図書館”のような店内で小田さんがひと言。
暑すぎる今夏、店でも大人気だというハイボールだが、ちょっとしたこだわりと下準備で自宅でも簡単に美味しいハイボールが作れるという。その大きなポイントは……
「冷凍庫でウイスキーを瓶ごと冷やすのがオススメです」
一瞬、耳を疑ったが、よく聞けば40度以上とアルコール度数が高いウイスキーは凍結点が低いため、家庭用の冷凍庫で凍ることはないという。つまり、キンッッッキン! に冷えてくれるだけなのだ。
「冷えているウイスキーで作ったハイボールは喉ごしがいいですよ。グイグイと飲みたいときは最高ですね」。
トーキョー ウイスキー ライブラリーでは、冷凍庫で冷やしたウイスキーを使ったハイボールを「フリーザー ハイボール」と名付けている。
小田さんによると、「お風呂は時間が経つと、上のほうは温かいのに、下は冷たくなりますよね。液体は、温度が近いほうが混ざりやすいんです」。

ハイボールに向いているウイスキーはどれだ?
では、そもそもの問題として、ハイボールにはどんなウイスキーが向いているのか。
「よく売れているウイスキーが、バランスのいいウイスキーです」と語る小田さんがハイボール用にオススメするのは「ブレンデッド」という種類のものだ。

12年」(シングルモルト)、中●「シーバスリーガル ミズナラ12年」(ブレンデッド)、右●「サントリーウイスキー 知多」(グレーン)
ウイスキーのラベルをよく見ると、「SINGLE MALT(シングルモルト)」、「BLENDED(ブレンデッド)」などと記載されている。
「シングルモルト」とは一カ所の単一の蒸溜所で造られたウイスキーのこと。かたや「ブレンデッド」は、複数の蒸溜所で作られたシングルモルトに、とうもろこしや小麦などの穀物を原料にしたグレーン・ウイスキーをブレンドしたものだ。
その土地や作り手の個性が際立つ「シングルモルト」に比べ、「ブレンデッド」はそれぞれの持ち味をかけ合わせ、広く飲みやすい味にブレンドしている。割り材としてはもってこいなのだ。
ウイスキーとソーダの黄金比率は「1:3」である!
続いて押さえておきたいのが、ウイスキーとソーダの黄金比率。
小田さんいわく、いちばんオススメの割り方は「1:3」だという。つまり、30mlのウイスキーを使う場合、ソーダは90~100ml、少し強めが好みの人はウイスキーを40mlに。
「メジャーカップで正確に分量を測ることが大切です。マドラーも使い、雰囲気を味わうのも楽しみ方のひとつですね」。
小田さんはそう語り、実際にハイボールを作ってくれた。

まず、冷やしたグラスを用意したら、スーパーやコンビニで手に入るロックアイスをグラスいっぱいに投入。大ぶりな氷を使うのは、小さいものに比べて溶けにくいからだ。次にウイスキーを注ぎ、マドラーで30回ほど手早く撹拌。

あとは冷たいソーダを注げば完成。だが……
「ソーダは氷に触れさせないようにしてください。氷にあててしまうと、せっかくの炭酸が飛んでしまいます。注ぎ終わったあとも、ソーダをそっと馴染ませるだけでOK。あまり混ぜる必要はありません」。
「ウイスキーを冷やす」「ソーダを氷に当てない」「かき混ぜすぎない」を守れば、驚くほど美味しいハイボールの完成だ。
レモンとコーヒーで“味変”ハイボールを楽しむ!

最後に、家庭でできる“味変”として小田さんが教えてくれたのが「シトラスハイボール」と「コーヒーハイボール」。この2種類ともトーキョー ウイスキー ライブラリーで実際に提供している人気カクテルだ。
「無農薬のレモンを使うか、または50度以上のお湯で皮に残った農薬をゆっくりと洗い落としてください。
レモンの果皮は最低でも24時間ウイスキーに漬けるといいが、その後も取り出す必要はなし。レモンの爽やかな香りが乗り移ったハイボールは、レモン果汁を入れるハイボールとはまた違い、柑橘の爽やかな香りが立つ一杯に変わる。
そして、コーヒー好きにたまらないのが、ウイスキーにコーヒー豆を直接漬けこんだものを割った「コーヒーハイボール」。これが実にウマい!
コーヒー豆は油分を含むため、12時間程度漬けたあとはフィルターでウイスキーを漉すのがオススメだという。その磨き上げたスキルを惜しげもなく披露し、ハイボール作りのコツを伝授してくれた小田さんに感謝だ!
さぁ、さっそく自宅でバーの味を再現し、暑い夏の夜を楽しもう。

ちなみに、この取材でもっとも感動したのは、「ハニー・オールドファッションド」。お店の超人気メニューで、ライウイスキーにはちみつ、ビターズ、シナモンで味と風味を付け。その美味しさに思わず震えたほど。
小田さんによると、日本ではロック、水割り、ハイボールがウイスキーの定番だが、実は世界的にはウイスキーをカクテルで飲むのがポピュラーなのだという。ウイスキーを使っていろんな割り方を楽しむのも大いにアリだろう。
[取材協力]
トーキョー ウイスキー ライブラリー
03-6434-1163
www.tokyo-whisky-library.com
ぎぎまき=取材・文