看板娘という名の愉悦 Vol.29
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。
お洒落タウン恵比寿には名店が山ほどある。そのひとつが、Subrideo Restaurare(スブリデオ レストラーレ)だ。
ちなみに、スブリデオはラテン語で「笑顔」という意味らしい。小粋な店名です。


メニューを見ると、自然派ワインと熟成チーズが売りのようだ。

さて、看板娘がオススメのワインを3本持ってきてくれた。

「左はフランスのスパークリングで、酸味が効いていてフルーティーな味わい。
決めた。「どれを選んだと思いますか?」と聞くと、即答で「これでしょう?」(上の写真)。正解です。ラベルがかわいいから。


香織さんが「白ワイン特有の濁りがまったくなくて澄んでいます」というワインをいただくことにする。グラス1杯900円。

これは美味しい。すっきりとした飲み口で、何杯でもイケそうだ。ここで、「明日からメニューに乗せるフードがあるんですが、召し上がりますか?」というご提案。おお、ぜひ。

「『スブリデオオムレツ&ラクレット』です。

「2018年で一番美味しい」。思わず、最高の賛辞が口から飛び出した。

大袈裟ではなく本気で美味しい。「シェフを呼んでくれ」とは言わず、自分で感想を伝えに行った。

ついでに、香織さんの魅力も聞いてみよう。
「とにかく、人間が好きで好きでたまらない子。人を笑顔にさせる天才だし、お客さんの好みもすぐに覚えるのでフロアは任せっぱなしです」
こちらも、かなりの高評価だ。

そうだ、香織さんイチ推しのチーズは何だろう。
「あー、超いっぱいあるから難しい! 強いて言えば、イギリス産の『スティルトン』でしょうか。熟成が進んで凝縮された旨味がやばいです。よかったら、ひと口どうぞ」

香織さんがチーズの勉強を始めたきっかけは、「4年ほど前に交際していた彼が酪農家を目指していたから」という、なかなかにピュアなものだった。
「結局別れたんですが、それとは関係なくチーズの面白さ、奥深さにハマっちゃいました」
一方で、インドヨガのインストラクターを目指していたという意外な一面もある。

「ちょうどこの村でヤギ肉のお祭りがあって、ヤギを一頭買い付ける現場にも連れて行ってもらいました。帰国時は家族みんなが泣いちゃって、バイバイするのがすごく辛かったのを覚えています」
旅の思い出は聴く者をも旅人にさせる。つまり、ワインのお代わりをします。再び、3本のボトルを持ってくる香織さん。ひと通り説明を聞いたのちに、「どれにしたと思います?」「これでしょう」。正解です。

「ぶどうの房ごとタンクに入れて密閉したのちに、ぶどうの自重で潰れていくのを待ちます。白ぶどうを使って赤ワインの製法で作るワインですね」

壁には店を訪れたワインやチーズの生産者が書いたサインもあった。


香織さんに今の仕事について聞いてみた。
「シェフの料理が大好きだし、お客さんもみんな大好き。人生を捧げられる職場ですね。今まで、仕事に行きたくないと思ったことは1度もありません」
さっきのチーズのようにとろけそうな回答だ。
ごちそうさまでした。最後に読者へのメッセージを。

【取材協力】
スブリデオ レストラーレ
住所:東京都渋谷区恵比寿4-11-9 クオーレエビス103
電話番号:03-6721-7847
www.facebook.com/SubrideoRestaurare/
石原たきび=取材・文