「Running Up-Date」とは……
鎌倉・由比ガ浜のカルチャーに溶け込むショップ「ジェームス&コー」の代表を務める塩谷雅芳さん。
湘南の地で本業のファッションだけでなく、オープンウォータースイムやサーフィン、自転車、ランニングなどを楽しむアクティブな人だ。
ジェームス&コーの社員旅行はホノルルマラソンだというから、それはもう筋金入りである。
ホノルルで体験したランニング文化をファッションに
筋金入りとはいえ、脇目も振らずスピードを追い求めるのではなく、日常を豊かに彩るためにスポーツをエンジョイする、というスタンス。
それは身に着けるギアのセレクトにもよく現れていて、確かな機能性を備えつつ、スタイル面でも抜かりのないアイテムが揃っている。

今回のシューズはスイスブランドの「オン」をセレクト。
長距離のときはリッチなクッション性に定評のある「ホカオネオネ」を、それ以外はオンをと、その日の走行予定距離に応じて履き分けている。
「パパ友が働いている、鎌倉・材木座のOSJ湘南クラブハウスで購入しました。シュータン部分がアッパーと一体化したソック構造になっていて、フィット感が抜群なんです」。
オンの中でも比較的軽量なクラウドフローというモデルで、塩谷さんが履いているのは現行の一世代前のタイプ。
カラーリングが洒落ているな……と目を凝らしてみると、合わせているソックスにはバックシャンなメッセージがデザインされているではないか!

「左足にGOOD、右足にLUCK。それぞれ自分を抜いていったランナー、自分が追い越したランナーへのメッセージですね。
ホノルルマラソンなどではこんな感じでお互い声を掛け合って、励まし合ったりします。そんなやりとりが好きで、ベースボールカルチャーを落とし込んだデザインで人気のロースターソックスさんに別注したアイテムです」。
ちなみに元ネタになったモデルは左足がHOME、右足がRUNとデザインされたホームランソックス。
トレイルランナーから教わった、マルチユースできる名作
トップスは日本のアウトドアブランド「ティートンブロス」のウインドリバーフーディを愛用している。コアなクライマーやマウンテンランナー、アウトドアガイドなど、その道のプロから厚い信頼を寄せられているブランドだ。
「パーテックス社の軽量ウインドシェル素材を用いていて、しっかり防風してくれる一方、衣服内の蒸れはしっかり外へ逃がしてくれます。
着用する時季を問わないので、リアルに4シーズン愛用しています。単に軽いだけでなくストレッチ性も備えていて、羽織っていてストレスを感じません」。
ショーツはコロナ禍の前までハワイで展開していたショップ「ジェームスアフタービーチクラブ」用に企画したオリジナルだ。

「新潟県の栃尾にある山信織物さんで、綿ポリエステルのリップストップ生地をオリジナルで織ってもらっています。
ラフに扱える丈夫な生地で、肌にも貼りつかず、おまけにクールマックス。ランニング専用ではありませんが、普段のランにはぴったりです」。
今はなかなか足を運ぶことが難しいが、ハワイで役に立つラン&スイム対応のショーツで、もちろん街ばきもOKなデザイン。その名も“オールラウンドショーツ”だ。

「キャップは福井県敦賀にあるユニフォームショップに別注しました。オーナーが外遊びの達人で、本気でトレイルランニングをされているんですよね。
あるアウトドアイベントに出店されていたときに購入して、そのキャップのパネル部を全部メッシュ素材にのせ替えていただきました」。
こちらも街着、ランニングのどちらにも対応するアイテムだ。実に鎌倉らしい。
うっかり洗濯してもセーフだったワイヤレスイヤホン
「ひとりで走るときはラジオ番組を聴くことが多いです。野村訓市さんのトラベリング・ウィズアウト・ムービングや、ピーター・バラカンさんのバラカン・ビートはロングランのときに」。
完全ワイヤレスのイヤホンが手放せないが、幾度となくウェアのポケットに入れたまま洗濯してしまい、ダメにしてきた失敗談があるとのこと。

「でも、このホーリーハイのイヤホンはうっかり洗濯機にかけて、簡易乾燥まで回してしまったのに壊れなかったんですよ。
説明書を読まずともフィーリングで操作できて、Bluetooth接続もスムーズなのでストレスがありません。今まで使ってきた中のベストです。
腕時計はGPSウォッチのリーディングメーカー、ガーミンのもの。
「フォアアスリート945という、ナビゲーションや音楽再生機能などを備えたハイスペックモデルです。実際はその機能の半分も使いこなせていませんけど(笑)。
でもバイクやスイムなど、ほかのスポーツにも対応していて、こちらも使用感含め何らストレスがありません」。

塩谷さんが愛用しているギアはみな、ランナーならでは、あるいはアパレル業界ならではの人脈から手にしたアイテムで固められている。本気でアクティビティに親しんでいるからこそのセレクトだ。
メジャーなスポーツブランドに頼らずとも、ここまでキマる。いやいやむしろ、知る人ぞ知る専業ブランドにまで目を配っているからこそのスタイリング。
自分の「欲しい」「着たい」「使いたい」を極めれば、ランニングコーディネイトも相応にアップデートされるのだ。

氏名:塩谷雅芳
年齢:57歳(1963年生まれ)
仕事:JAMES&CO 代表
走る頻度:週1回、10km前後
記録:3時間42分01秒(2008年、ホノルルマラソン)
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「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。
礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真