ずっと絶対的王者だったレガシィツーリングワゴンが姿を消した国産ワゴン市場。日産と三菱自動車は、今ではワゴンを1台も作っていない。
そんな厳しい時代を生き残った国産ワゴンは、一芸に秀でたモデルばかりなのだ。
①走りを楽しむ“攻めのカローラ”
トヨタ カローラツーリングワゴン
長年、新車販売台数の首位に輝くなど、日本の“オーソドックス”代表と思われていたカローラシリーズ。ところが2019年のフルモデルチェンジで突然方向転換した。
少しクセの強いフォルムと新世代のプラットフォームを手に入れ、輸入車勢に劣らぬスポーティなハンドリングとしなやかな乗り心地を備えたのだ。
カローラツーリングワゴンには1.8Lエンジンと1.8Lエンジン+モーターのハイブリッド、さらに走行性能に自信があるからだろう、1.2Lターボエンジン×6速MTという「走りを楽しむワゴン」まで用意された。
またオーディオやカーナビを潔くスマートフォンに任せるため、スマートフォン連動型ディスプレイをメインに据えている。

今や世界150の国と地域で販売され、世界のオーソドックスになろうとしているカローラゆえ、全幅は1745mmと5ナンバーに収まらないサイズ。
国内では5ナンバーサイズの旧型カローラフィルダーも併売されている。
②実はキャンプにも向く商用ワゴン

トヨタ プロボックス
荷物や人を運ぶ商用車として多く使われているが、実は隠れた高速番長なのがプロボックスだ。
バックミラーで勢いよく迫ってくる彼らを見て、慌てて車線変更した経験のある人も多いのではないだろうか。見た目とは裏腹に、高速巡航が得意なワゴンなのだ。
パワートレインは1.3Lと1.5Lエンジン、1.5Lエンジン+モーターのハイブリッドと、スペック的にはフツーなのだが、これがトヨタの底力なのか、走らせるとまぁ矢のように高速道路を駆け抜けていく。

5ナンバーサイズだが、商用車ゆえラゲッジが広く、開口部も大きくて使いやすい。忙しいビジネスマンのために車内で食事もできるようになっている。
そのため一部の車中泊やキャンプ好きからも選ばれているワゴンだ。
③使い勝手、乗り心地、燃費。すべて良し

ホンダ シャトル
ボディサイズを目一杯有効に活用し、ラゲッジ容量はクラス最大の570L。後席を倒せば最大1141Lまで拡大でき、開口部が低くて広いため、荷物を積み込みやすいなど、車内空間にこだわって作られたのが、シャトルだ。
シャトルバスやスペースシャトルという言葉からも想像できるように、車名の「シャトル」とは折り返して往復する定期交通便を指す言葉。つまり街から郊外へ、幾度も人と荷物を運べる車というわけだ。

そのためにはラゲッジの広さだけでなく、低燃費であることも欠かせない。1.5Lエンジン+モーターのハイブリッドモデルならJC08モード燃費33.2km/Lと、毎日乗っても財布に優しいワゴンだ。
④スバルが“みちびき”役のワゴンの未来

スバル レヴォーグ
北米市場向けに大きくなっていったレガシィツーリングワゴンに、置き去りにされてしまった日本の“スバリスト”。もちろんスバルもそれでいいとは思っていなかった。
レガシィという名こそ無いが、日本国内向けに“新たなレガシィ”として開発されたのがこのレヴォーグだ。
もちろん使い勝手の良いラゲッジや爽快な走りは、レガシィ時代からさらに進化を遂げている。また今やスバルといえばアイサイトだが、ver.2,ver.3と進化し続け、ついにレヴォーグではアイサイトXと名乗るようになった。これはもう数字を足していく程度の進化じゃないんです、ってことなのだ。

何しろ衛星「みちびき」や3D高精度地図データなどを駆使。渋滞時のハンズオフのほか、カーブや料金所手前ではスムーズに減速し、通過すればすみやかに加速までしてくれる。まるでもうひとりドライバーを雇っているかのようだ。
⑤全開の“らしさ”で輸入車と真っ向勝負

マツダ マツダ6ワゴン
2019年にアテンザという日本名から、世界共通の車名「マツダ6」と名が変わったマツダのフラッグシップモデル。機能や装備の充実はもちろんだが、デザインや質感も、マツダらしさを詰め込んだ仕上がりになっている。
エンジンバリエーションが豊富で、2Lと2.5L、2.5Lターボという3種類のガソリンエンジンと、2.2Lディーゼルエンジンがある。しかも、走りにこだわるマツダらしく、ディーゼル車には6速MT車まで用意されている。

意のままに操れる「人馬一体」感のために、細かいところまで年々改良されつづけているのもマツダ車ならでは。これが確実に走りの質を上げている。
世界共通のモデル名にしたということは、輸入車と真正面から張り合うという決意の表れ。輸入車を検討している人にも、一度は試してほしい一台だ。
籠島康弘=文