何を隠そう、オープンカーが一年でいちばん気持ちいいシーズンはまさに今! 屋根を開けて走れば、真夏は修行のように暑く、冬は試練のように寒い。
しかし、今の時季や秋口には、ほかの車にはない最高の気分を味わせてくれるオープンカーの中から“これぞ”と言われる名車を紹介。
どれも稀少な絶滅危惧車ゆえ、ビビッときたら運命かも⁉︎
■ジェームズ・ディーンも愛したモデル
ベック ベックスピードスター
ポルシェ356スピードスターのレプリカ「ベックスピードスター」。356とはフェルディナント・ポルシェが開発を手掛け、初めて“ポルシェ”の名が冠されたモデルだ。
クーペとカブリオレが生産されたが、アメリカ市場から「カブリオレよりもっとスポーティなオープンモデルを」と要望され、作られたのが356スピードスター。
ジェームズ・ディーンも愛車に選んだほどアメリカでは大成功を収めた。ちなみにディーンはさらに高性能なスポーツモデルのポルシェ550スパイダーに乗り換えたが、納車からわずか数日後、乗り慣れていないこともあったのか、事故を起こし、あまりにも短い生涯を終えた。
■ダットサン仕様のフェアレディ

ダットサン フェアレディ2000
海外で人気のあったブランド、ダットサンだが、国内でもダットサンブランドで販売されていたモデルがある。その1台がフェアレディだ。
写真の通り見た目の美しいふたり乗りオープンカーだが、「フェアレディ2000」は当時の上級セダンであるセドリック/グロリアにも搭載されていた2Lエンジンを採用。最高速度は国産車初となる200km/hオーバーの205km/hと、当時を代表するスポーツカーでもあるのだ。
デビューした1967年に日本グランプリに参戦すると、いきなり1位~3位を独占。後継車のフェアレディZに引き継ぐまで、同レースではすべて優勝していた。美しいだけでなく、強くもあった“レディ”だ。
■アバルト初の量産車は実はオープンだった

フィアットアバルト 750GTスパイダーザガート
フィアットアバルトの750GTスパイダーザガートは、まだ街のチューニング屋だったアバルトが、初めて自社の量産車として生み出したモデル。
ベースはフィアット600で、数字からわかるように、633ccから747ccまで排気量を拡大し、最高出力を約2倍に高めたモデルだ。同型のセダンタイプだったアバルト750GTベルリーナはレース界を席巻。
写真はアバルトから依頼を受けてカロッツェリア(ボディのデザインや製造を行う業者)のザガートが手掛けたスパイダー。台数がとても少ないため、中古車価格は高値で推移している。
■“縦目のSL”のラグジュアリーなオープン

メルセデス・ベンツ 280SL
SLとはドイツ語のSportLeicht(軽量スポーツ)を意味する。あの石原裕次郎も所有した、ガルウイングの300SLがその始まりだ。
その後アメリカ市場で大人気になり、以降SLシリーズは同社を代表するオープンスポーツカーとなっていった。
こちらの230SL(W113型)は、2.3Lの直列6気筒エンジンが搭載されたので230SLとなったが、その後排気量の拡大に合わせて250SL、280SLへと発展していった。写真は最終型の280SLだ。
全長4285mm×全幅1760mmと、現代基準で考えたら十分コンパクト。堅牢なボディと重厚な乗り心地、エレガントな内外装と、「軽量スポーツ」というよりは、ラグジュアリーなグランドツーリングカーといったほうがピッタリくる。以降SLはこの路線を歩むことになる。
籠島康弘=文