今でこそ正規輸入されているアメリカンSUVはキャデラックとジープしかないが、10年前はもっとたくさんのアメリカブランドのSUVが日本を走っていた。
そんなかつて正規輸入されていたアメリカンSUVたちが、今見るとどれもめちゃくちゃいい感じ。
そろそろ状態のいい車の台数も減りつつあるから、もしこの中でハンドルを握ってみたい車があるなら、買うなら、今かもよ。
■ハマー H2
アメリカ軍の高機動車両に街中で乗りたい!とアーノルド・シュワルツェネッガーが熱望して実現したと言われるのがハマーのH1。

その後継モデルとしてシボレー タホをベースに開発されたのがH2だ。日本では三井物産オートモーティブが輸入し、2005年からヤナセも販売していた。
H1よりは“常識的”なサイズとはいえ、全幅は2m超の2180mm、全高もほぼ2mの1976mm。
日本では持てあましそうなサイズに6LのV8エンジンと4速AT、それに副変速機を備えた電子制御フルタイム4WDが搭載されていた。2+3+1の3列6人乗り。これに乗れば、誰でもタフガイの仲間入り。アメリカンSUVの代名詞的存在だ。
■ハマー H3
H2の人気を受けて開発されたのが、H3だ。デビューと同時に日本でも販売された。

シボレーのトレイルブレイザーがベースのため、H2よりひと回り小さく、全長4720×全幅1970×全高1850mm。
メルセデス・ベンツGLEなみのボディに3.5Lエンジンを搭載する。トランスミッションは4速ATのほか、5速MTもあったところが男心をくすぐる!?
H2同様、副変速機を備えた電子制御フルタイム4WDで、こちらは2列5名乗りとなる。
■フォード エクスプローラー
ブロンコIIの後継モデルとして登場したのがエクスプローラー。日本では初代から3代にわたり正規輸入されていたが、2016年にフォードが日本から撤退したことで正規輸入は途絶えてしまった。

1990年に登場した初代は、あっという間にSUVカテゴリーで全米ナンバー1の販売台数を記録。以降14年連続でトップの座を守るなど、今でもアメリカの人気SUVとして君臨している。

すべてサイズはハマーのH3やシボレーのトレイルブレイザーとほぼ同じ。初代には3ドアのショートボディモデルもあった。また2代目にはピックアップトラックもあり、日本にも正規輸入されていた。
初代は商用トラックのようなサスペンションだったが、2代目から乗用車同様の足回りになり、乗り心地が向上。4WDシステムも初代のパートタイム4WDからフルタイム4WD式に変更されている。

3代目ではフレームとボディを組みあわせるラダーフレームから、乗用車同様のモノコックボディとなり、さらに乗り心地が向上している。
いかにもな見た目の初代、どこか垢抜けない可愛げのある2代目、見た目も作りも現代的な3代目。3車3様のキャラの違いも、エクスプローラーの魅力なのだ。
■リンカーン ナビゲーター
ハリウッドセレブをはじめ、プレミアムカスタマー層を受け持つフォードのブランドが「リンカーン」だ。

全長5m超のフルサイズSUV、フォード エクスペディションをリンカーンのブランドイメージに沿うよう、ゴージャスに仕立てたモデルがナビゲーターで、ライバルはキャデラック エスカレード。
5.4LのV8エンジンに6速ATが組み合わされ、フルタイム4WDを搭載。黒の本革シートや、ドアを開けると自動でステップが現れる機能など、プレミアムSUVにふさわしい装備が充実している。
武骨なイメージの強いアメリカンSUVの中で最高峰のラグジュアリーを味わいたいなら、こちらを選べば間違いないだろう。
■リンカーン MKX
ナビゲーターについで日本に投入されたリンカーンブランドのSUVがMKXだ。

2008年に登場した当初はナビゲーターのような格子状グリルを備えていたが、2011年以降は写真のように鉄仮面のようなクセの強いグリルに変わった。
同時に3.7Lの新エンジンに切り替わり、英語のみだが音声でエアコンなどを操作できる機能やタッチパネルなど、最新装備も備えていた。4WDは電子制御式を搭載。
ちなみにトランスミッションは信頼性の高い日本製の6速AT。アメ車最高峰のSUVに日本製のATが使われているなんて、シフトを「D」に入れる度に「実はさ……」と余計な口をつい開きたくなってしまう。
■ダッジ ナイトロ
ダッジブランドのナイトロは、同時期のジープ チェロキーをベースに開発されたSUV。

つまりチェロキー同様のサイズだから、イカツイ見た目とは裏腹に、日本でも乗りやすいSUVなのだ。
3.7Lエンジンに4速ATが組み合わされ、4WDシステムもパートタイム式と、駆動方式こそ当時でもあまり新鮮味がなかったが、ともかく大きな十字とフェンダーの迫力が、チェロキーにはない魅力だった。
その割に大きな荷物を出し入れする際にラゲージ床ごと手前に引き出せて便利、なんていう小ワザも備えていたのもニクい所。
国内でもまあ同じ車に出会うことがないであろう、ツウなアメリカンSUVだ。
■シボレー S-10ブレイザー
1960年~’70年代のフルサイズSUVとして、今も人気があるのがK5ブレイザー。

それよりひと回り小さいS-10ピックアップトラックをベースとしているSUVが、S-10ブレイザーと呼ばれる。このS-10ブレイザー初代の後期モデルはヤナセにて正規輸入されていた。
全長4510×全幅1770×全高1680mmと日本でも扱いやすいサイズに、4.3Lエンジンを搭載。これにコラム式の4速ATが組み合わされ、駆動方式はパートタイム式4WDが用いられた。当初は2ドアのみだったが、1992年モデルから4ドアのみとなった。

1995年に第2世代へとバトンタッチされ、名称は正式に「ブレイザー」となった。日本での販売は引き続きヤナセが担当。
当初はエンジンやトランスミッションは第1世代と同じだったが、1998年モデルからATはコラム式からフロア式へと変わっている。2000年からGMジャパンが扱うようになったが、トレイルブレイザーと入れ替わるように2002年で販売が終了した。
特に第1世代のS-10ブレイザーは人気で状態のいいものは争奪戦。もし目の前に現れたら迷わず飛び乗るのが正解だろう。
■シボレー トレイルブレイザー
ブレイザーの1クラス上という位置付けで開発されたのが、2001年に登場したトレイルブレイザーだ。サイズも全長4890×全幅1900×全高1850mmとブレイザーよりひと回り大きい。

エンジンは4.2Lでこれに4速ATが組み合わされた。4WDは、通常は後輪駆動で走り必要に応じて前輪も駆動させるスタンバイ式で、スイッチで4WD固定にすることもできた。GMジャパンによって2010年まで販売されていた。
比較的最近まで販売されていたこともあり中古車の流通も多め。アメリカンSUVの中でも都会的な見た目とサイズのSUVを探しているなら、一度は検討してみてほしい一台だ。
籠島康弘=文