高級時計の世界では、かつてないスポーツウォッチのブームが到来中。オークションハウスでの競売、セカンダリーマーケットでの価格高騰から熱狂ぶりが見て取れる。
その中心にいるのがパテック フィリップの「ノーチラス」であり、ここで紹介する「アクアノート」である。

「アクアノート」誕生の1997年、よりもう少し時を戻しつつ、なぜこれほどの人気を獲得したのか、その魅力を紐解きたい。
「アクアノート」はパテック フィリップ“第2のスポーツウォッチ”だ
「アクアノート」の系譜は、1996年に発表された「Ref.5060/SJ」が始まりである。下の写真がそれだ。

ブランド初のスポーツウォッチ「ノーチラス」の文脈をなぞる八角形のベゼルを踏襲したこのモデルは、イエローゴールドケース、革製のストラップ、ローマンインデックス、リーフハンドといった特徴を備えていた。
当時、パテック フィリップの社長であったフィリップ・スターンは、365日季節を問わず、あらゆるシーンで着用できる新たなスポーツウォッチに将来性を見出していた。
そこで翌年、ステンレススチール製の「Ref.5060A」で新たに導入したのが、今では「アクアノート」の象徴になっているチェッカーボード・パターンが刻まれたコンポジット素材のストラップだった。

これに加えて、エンボス文字盤、太いバトン型のインデックス、ゴシック体のアラビア数字、スーパールミノバ夜光塗料を塗布した大型のバトン型指針などの「アクアノート」の原型となるデザインが完成。
よりスリムなバックルを手掛けるために、開発と着用テストに数年費やしたという尋常ではないこだわりを随所に詰め込んで、パテック フィリップ第2のスポーツウォッチが誕生したのである。
「アクアノート」人気を支える注目の派生モデル
先鋭的なスポーツウォッチ「アクアノート」が世界中の人々を魅了するまでさほど時間はかからなかった。
誕生10周年にあたる2007年に発表された「Ref.5167A」は、これまでのモデルよりもひと回り大きな40.8mm径のケースを起用。今なおシリーズきっての人気モデルとしてロングセールスを更新中だ。

2004年、ベゼルにダイヤモンドセッティングを施した女性用の「アクアノート・ルーチェ」、2011年には、出発地と現地の時刻を表示するデュアルタイムゾーン機構を搭載する「アクアノート・トラベルタイム」などの派生モデルの登場によって、「アクアノート」はその人気を不動のものにした。
また、上位機種として、2017年の20周年ではホワイトゴールド製のラージサイズ、2018年には「アクアノート・クロノグラフ」が加わり、ラインナップの拡大とともに独自の路線を歩んでいる。

2021年に現れた新作軍団。なかでも注目は?
2021年4月に開催された「ウォッチーズ & ワンダーズ 2021」での新作発表後、パテック フィリップは追加で「アクアノート」の新作7本をリリースし、世界をざわつかせた。
メンズコレクションでは、「アクアノート・クロノグラフ」では初となるホワイトゴールドケース仕様のモデルも登場。


時折見られる大胆なカラーリングの提案は「アクアノート」の大きな強み。2019年に他社よりもひと足早く披露したグリーンダイヤルも例外ではない。追随するように今、多くのブランドからグリーンモデルが出ていることは周知の事実だ。
今回の「Ref.5968」では、オリーブグリーン、ブラック・グラデーションのミッドナイトブルーの2色を採用。
ブラックを基調にオレンジを挿し色で取り入れた前作とも異なる軽やかな印象を打ち出した。

ファッションのカジュアル化、あるいはライフスタイルの変化から、スポーツウォッチの需要が世界的に高まりつつあるなか、“カジュアル・シック”という言葉を体現する「アクアノート」の人気はさらに加速する。この予測は間違いなく、当たるだろう。
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戸叶庸之=文