看板娘という名の愉悦 Vol.40
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。

雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

サブカル、ほろ酔い、音楽の街。高円寺には美味しいグルメも多いが、その中に「高円寺最強パスタ」を誇る店がある。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった...の画像はこちら >>

店名は「Andiamo all’ Uscita(アンディアーモ・アッラ・ウシータ)」。イタリア語で「出口へ行こう」という意味だ。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
駅から徒歩1分、こちらの2階。

「やばい、ギリギリだ」と言いながら店の前に自転車を停める女性。盗撮風になったが、彼女が今回の看板娘である。

何といっても気になるのはラーメン界では有名な製麺所、浅草開化楼の「低加水パスタフレスカ」を使用するパスタ。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
ダシをよく吸い、ソースとの絡みもよい。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
入り口にはイタリアンぽくない麺箱も。

このビルは元ファミリーマートで、2階のイートインスペースをスケルトンにして開業したそうだ。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
カウンターとテーブルで約30席。

イタリアンならワインかと思いきや、看板娘は「オススメのお酒がありますよ」。それをいただこう。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
さっそく作り出す。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
「お待たせしました〜」。

「スパークリングワインを『アペロール』というハーブリキュールで割ったイタリアで人気のお酒です。要するにお酒をお酒で割っているので結構酔います」

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
「パーフェクトな食前酒」とある。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
これを飲みながらオリーブをかじるのがイタリア流。

もみじ色の洒落たカクテルを出してくれたのは、その名も小棚木もみじさん(24歳)。本名である。

「11月という紅葉の季節に生まれたのと、赤ちゃんの手ってもみじの葉っぱみたいだねーってなって『もみじ』と名付けたみたいです」

もみじさんは愛知県の蒲郡生まれで、地元の高校を卒業後に上京した。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
蒲郡で「今、アツいんです」という水族館。

リニューアルして面白さが増したそうで、帰省するたびに家族で訪れるという。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
人気のアシカショー。

「東京で最初に住んだのは中央線の武蔵小金井。家賃2万8000円なのにお風呂もトイレもあったんですが、駅から遠いうえにアパートの前の畑の砂が大量に入ってくる部屋でした」

窓を閉めても隙間から入り込んでくるので、スポンジで塞いで窓の開閉は諦めたそうだ。その後、高円寺に引っ越して現在に至る。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
スマホの待ち受け画面“憧れの存在”だというコジコジ。

「ヒマなときは家で『コジコジ』のアニメをずーっと観ています」と語る彼女は「のっぺら」というバンドでギター・ボーカルを務めている。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
渋谷nestで行ったライブの様子。

「『のっぺら』は意味がないという意味。ゆらゆら帝国が好きなので、なんとなくそういう感じですね」

もみじさんの印象を店長に聞くと、「24歳にしてはすごく気が利きます。スタッフの動きもお客さんのこともよく見ているんですよ」。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
絶賛する店長。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
花瓶の水の量にも気を配る。

「あ、でも失敗もしますよ。『卵を黄身と白身に分けて』と頼んだら、なぜか生卵をみじん切りの玉ねぎが入ったボウルにぶち込んだことがありました。二日酔いでぼーっとしてたみたいだけど、かわいいからみんな許しちゃう」

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
壁には『歯のマンガ』作者の直筆イラスト。

そう、もみじさんは大の酒好きなのだ。

「こないだ泥酔状態で恋人と大ゲンカしたんですが、怒りのあまり、彼の携帯番号の名前を『死神』に変えたみたいです。まったく覚えていないから、翌朝『死神』から電話がかかって来てびっくりしました」

鉄板ネタである。

さて、お食事もいただこう。もちろん、超人気のラーメン店「六厘舎」も使用している製麺所、開化楼の麺を使用したパスタだ。もみじさんのオススメは「鴨のラグーソース」。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
単品だと1000円。

これが予想以上にすごかった。

濃厚なソースにもっちもちの麺が絡みまくる。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
パスタとしては驚異的な極太麺。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
俯瞰も美しい。

ほかのソースとのマリアージュも試したくなる逸品だった。大満足でお会計。ごちそうさまでした。

「今後の目標はユーチューバーみたいに好きなことでお金を儲けたいです。具体的には? うーん、大好きな高円寺でちっちゃなライブバーとかをやりたいなあ」


11月16日(金)は下北沢のBASEMENT BARとTHREEの2会場でライブとのこと。応援してますよ。最後に、読者へのメッセージをお願いします。

高円寺のイタリアン居酒屋で、看板娘のお酒がもみじ色に染まった
謎の生き物が添えられた。

【取材協力】
Andiamo all’ Uscita
住所:東京都杉並区高円寺北3-22-5 2F
電話番号:03-6336-4451
https://uscita.owst.jp

【関連記事】中央線には、こんな看板娘も……
・「中野のカラオケバーで、ハロウィン仕様の看板娘にお菓子をあげた」
・「吉祥寺の立ち呑み屋で、アイルランド育ちの看板娘に後光が射した」


・「荻窪のお座敷スナックで、実家の農作業を手伝う看板娘に涙ぐんだ」石原たきび=取材・文
編集部おすすめ