連載「実現可能か!? 俺の週末・軽井沢ライフ」
’80~’90Sに青春をすごした男にとって、軽井沢は特別な場所である。かつて避暑地として一世を風靡した、緑深くも都会的なその土地に、憧れを抱かずにいられない。
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前回の記事「軽井沢ライフスタイル・カタログ」でも紹介したが、毎週末を過ごすような二拠点生活が目的なら、思い切って別荘購入へと踏み切る選択肢は十分あり。都会の喧騒を離れ、家族や自分のためだけの場所を確保できるのは、なにものにも代えがたい。
とはいえ、別荘購入はどこか遠い話に感じてしまうのも事実。実際にどんな別荘があって、どんな価格設定なのか。軽井沢で別荘販売を行う「軽井沢コンサル」の金山城太郎さんに、軽井沢の地理とおカネの関係を聞き、低・中・高価格帯の3段階で物件を紹介してもらった。
300坪未満の土地は買えない!? 軽井沢別荘の相場マップ
「別荘購入はかつて、セレブだけに許された贅沢でした。でも、近年は二拠点居住ブームも手伝い、安価な別荘を購入するケースも増えている。もちろん、ステータス性の強いエリアは“億越え”の物件でひしめいていますが、目先を変えれば400万~500万円のお手ごろな物件もありますよ」(金山さん、以下同)。
別荘購入をリアルに検討するなら、価格の基準は知っておきたい。そのためには、まずは押さえるべきルールがあるという。
「軽井沢町では、緑に囲まれた別荘地の景観を守るために『軽井沢町自然保護対策要綱』という条例を設けています。これは、別荘を建てる土地の最小面積を300坪、それに対する建物の容積率・建蔽率をそれぞれ最大20%に定めた条例。
たとえば、坪単価10万円の別荘を買うなら、少なくとも10万円×300坪=3000万円。つまり、購入面積を減らせないぶん、坪単価がキモとなるのだ。

「最も高額なのは伝統のある旧軽井沢エリアで、坪単価は60万円から。次いで人気の南ヶ丘・南原エリアは坪単価20万円~40万円、新軽井沢の別荘エリアは30万円~40万円です。一方で、地元の住人も多い中軽井沢エリアでは、坪単価は10万円~20万円前後。西側の追分(おいわけ)エリアになれば、より安価な“1ケタ物件”も溢れています」。
だが、仮に坪単価3万円の物件でも、300坪で計算すれば900万円。ウワサの400万円~500万円物件には届かない。
「それほどの安さになるのは北軽井沢エリアです。北軽井沢の住所は長野県ではなく群馬県で、条例の影響を受けません。300坪以下の別荘でも建てられるので、価格も安く収まるのです。

では、実際にどんな別荘があり、どんなロケーションで、どう過ごすことができるのか。低・中・高価格帯の別荘をそれぞれ紹介してもらった。
【高価格帯】
“億”物件はやっぱりすごかった……! 夢の大豪邸って、こういうこと。

軽井沢の別荘文化、その発祥の地とも言われる旧軽井沢エリア。標高1256mを誇る離山の山道をつたい、色とりどりの紅葉に囲まれた一角にたどり着くと、その“城”は姿を現す。時価総額にして5億円近く、富裕層だけが持つことを許される異次元の別荘だ。

オートロックの扉を開けて、思わず声が上がる。視界に飛び込んできたのは、壁一面のガラス窓に広がる軽井沢の大自然。高みから見下ろす森のグラデーションは、まさに圧巻の一言だ。キッチン一体型のテーブルもあり、景観を肴に贅沢な食事を楽しめる。
窓をガバッと開けて露天風呂気分を味わえる浴室や、プロジェクタに電源つきの席をずらりと並べた会議室、景色を眺めながら心を洗える“瞑想部屋”もある。
【中価格帯】2000万円~5000万円
別荘ライフを夢見るなら目指したいライン

お次は時価3000万円前後、中価格帯の物件だ。欧米の映画のワンシーンを彷彿させるデザインだが、実際にアメリカ式の住宅構造を採用し、広さも天井高もアメリカ規格。建材や家具、ドアノブから電気のスイッチに至るまで漏れなくアメリカからの輸入品を使っている。
クルマ好きにはたまらないビルトインガレージや、子供心をくすぐる巨大な屋根裏部屋もある。別荘を囲むのは、樹齢100歳を超えるカラマツの林。子供やペットが自由に庭を駆け回り、木漏れ日を受けながらバーベキューを楽しむ。そんな家族の休日も悪くない。
周辺は中軽井沢エリアの北・千ヶ滝別荘地。浅間山の麓、雄大な自然と同居したひときわ静穏な一角だ。木々のざわめきと野鳥のさえずりをBGMに並木道を歩けば、都会慣れした心も洗われる。別荘地での週末・軽井沢ライフを夢見るなら、ぜひ目指してみたいエリアだろう。
【低価格帯】数百万円
ステータスにこだわらず、静かなひとときを過ごすなら

最後に紹介してもらったのは、数百万円で購入できる低価格帯の物件。浅間山の北麓、北軽井沢エリアに位置しており、条例の影響を受けないのがポイントだ。ログハウス風のコンパクトな設計で、アウトドア好きにぴったり。一面に広がる見事なカラマツの林と、四季折々で色づく雑木林は美しい。
北軽井沢エリアは、軽井沢の中心地から車で30分前後。近いとは言い難いものの、静かな時間を求めるならむしろ絶好のロケーションだ。実際に別荘地としての人気は高く、別荘の数は約9000戸にも上るとか。標高1000m~1400mに位置しており、夏は涼しく透き通った空気を感じられる。一方の冬は極寒で、積雪量こそ多くないものの、マイナス20度まで冷え込むこともあるから注意だ。

別荘を選ぶときのポイントは?
当初はぼんやりとしていたが、徐々に輪郭を帯びてきた別荘購入という選択肢。最後に金山さんは、不動産屋目線での別荘選びのポイントも教えてくれた。
「別荘購入を検討するなら、今後の人生設計も思い描いてみてください。たとえば、今は予算的に高額物件を買えないけれど、ゆくゆくは購入して拠点も軽井沢に移したい。
軽井沢に“俺の城”を持つ。甘い幻想とも思えたが、朧げながら現実的なプランが見えてきた。将来設計も含めた念入りな検討は必要だが、その先には心踊る別荘ライフが待ち受けていることだろう。
[問い合わせ]
軽井沢コンサル
www.zennichi.net/m/karuizawaconsul/
澤田聖司=撮影 佐藤宇紘=取材・文