「愛しのパタゴニア バギーズ・ショーツ」とは……
パタゴニアのバギーズ・ショーツの魅力を紐解いていく本企画。
今回は趣向を変え、ビームスでバイヤーを務める柴崎智典さんと、ビームス 原宿の看板スタッフ、野澤康平さんを緊急招集。

アンバラス感がいいバランス

パタゴニアのバギーズは、ビームスで取り扱いをスタートしてかれこれ10年以上。両名も夏の定番としてフル活用している。
まずは街での着こなしについてをうかがってみると……。

「バギーズといえばやっぱり定番は5インチ、というのがビームス内での共通認識。ただ、街の着こなしでは短か過ぎると気恥ずかしさがあるので……」と野澤さんはやや腰の位置を下げてはき、裾を膝上5cmほどに合わせる。


「バギーズは裾幅が広めなのでトップスもやや大きめを選びます。今回は、TシャツはTシャツでもロングスリーブを選びました。長袖にするだけでも半袖ほどのラフさは出ませんし、捲った袖がアクセントにもなりますから」。
しかも、バギーズは目の覚めるような色鮮やかなピンクに対し、落ち着いたネイビーを選択。それにより、グラフィックデザインも主張させている。
一方、柴崎さんはというと「気の抜けた着こなしこそバギーズにとってはベター」と話しつつ、往年のビームス内で取り入れていたスタイルをほんのり匂わせながら品行方正なシャツを合わせた。

「僕が頻繁にバギーズをはくようになった2014年頃は、ビームス内でバギーズにブレザーを合わせる人もいました。
そのアンバランス感がショーツを引き締めたり、ブレザーの堅苦しさをいなすいいバランスだったんですよね。過去の横ノリ系の資料などでも、ジャケットやシャツを取り入れた着こなしをよく目にしましたね」。


「例えば、今回のようなBDシャツを白Tの上に合わせたり。僕は、そんな着こなしがアメカジっぽいな~と思うんですよね」。
屋内から海までシームレスにつなぐウェア

おふたりとも、バギーズ姿が実に様になっているが、ただ、若い頃からずっと慣れ親しんできたわけではないとか。野澤さんが手に取ったのも、実は30代に入ってからである。
「海にはいていく“海パン”がなくて手に取ったのが最初でしたね。前職時、仲良くさせてもらっていた先輩が夏になるとよくはいていて。
僕はサーフィンもしませんし、サーフブランドへの関心も低かったので、そういえばあれは水着としても使えるんだったよな~と思い出して、購入に至りました」。

「そうなの?」と柴崎さんも似たような経緯であることを明かす。
「僕も20歳の頃、沖縄を旅行して、現地で軽めのショーツが欲しいな~と思ってとある古着屋に入ったのがきっかけですね。
以後、バギーズは買っていませんでした。頻繁にはくようになったのは、それこそ7~8年ぐらい前ですから、ちょうど野澤くんと同じぐらいだと思います」。

「奇遇ですね」と笑いながら野澤さんは、そのあまりの万能っぷりに今ではもう虜だという。
「3年前ぐらいに家族でハワイ旅行へ行ったんですね。バギーズのショーツとテアトラのパンツの2本を持って行きましたけど、それで一週間過ごせちゃったんですよ。
バギーズは濡れてもすぐ乾くし、海でも街でも両方いける。水陸両用ですけど、街にすっと溶け込んでいる感じがめちゃくちゃいいなって」。

「それ、わかるわ~」と柴崎さん。
「コロナ前は海外へよく出張に行っていましたけど、もう最強です(笑)。何がいいかって、例えばシャワー後にそのまま買い物へもいけちゃうし、帰ってきてそのまま部屋飲みしてもいい。
僕は結構そういう使い方で感動していました。それがすこぶる快適だったんですよね。海と街だけじゃないく屋内もシームレスにつなぐウェアはそうそうないと思います」。
あらゆる世代に受け入れられるバギーズの凄さ

柴崎さんがバギーズに興味を持ち出したのは、写真家リロイ・グラニスの影響が大きいのだとか。
「彼が1960~1970年代に撮影した、カリフォルニアやハワイのボードショーツの写真集がすごく好きで。それから、ボードショーツに興味を持ち出したんですよね。その延長にバギーズがありました」。

「パッと見てパタゴニアと分かるそのカラートーンにだいぶやられましたね。カリフォルニアの雰囲気がすごく感じられる。
しかも、シーズンごとにちょっとずつアップデートはされていますけど、ほぼベースは変わらない。もう完成された美しいひとつのプロダクトだと思いますね」。

「たしかに」と同意する野澤さんは、店頭に立っているからこそ感じる凄さを語る。
「今では、年齢の高い人はもちろん、若い人が手に取っているのも印象的ですね。カップルで来て、おそらく男の子の買い物に付き合ったのでしょうけど、女の子のほうが『この色かわいいね』と言って買っていったりもする。
アウトドア好きっぽい人も買っていきますし、ライトにオシャレを楽しんでます、みたいな子も買っていく。掛け値なしにフラットな目線で見て手に取ってもらえるというのはブランドやアイテムの底力ですよね」。
柴崎さんは、「パタゴニアは早いうちから自然環境に留意した活動やモノ作りを行っている。そのブランドのポリシーやマインドにも惹かれますよね」と、サステイナブルな企業努力にも敬意を払っているようだ。
国内外のあらゆるカルチャーに目を向けながらさまざまなアイテムを取り扱ってきたビームス。だからこそ、彼らの言葉には重みがあった。
「愛しのパタゴニア バギーズ・ショーツ」とは……
夏の大本命にして大定番、パタゴニアのバギーズ・ショーツ。誕生から約40年、その輝きは右肩上がりに増すばかりだが、往年のバギーズ・ラバーズはどう着こなしているのか。洒落た大人たちの模範解答をどうぞ。
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恩田拓治=写真 菊地 亮=取材・文