現在公開中の映画『孤狼の血 LEVEL2』で上林組の組長・上林成浩を熱演する俳優・鈴木亮平さん。

前編に続き鈴木さんは「理想のTシャツ論」について話してくれた。

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もしも理想の無地Tが見つかったら

「ここ最近ずっと理想の無地T探しをしています。色は白とネイビー。素材はコットンが好きなのですが、ひと言でコットンといっても種類は多岐にわたる。

繊維の質や仕立ての違いで着心地や風合いがかなり変わってきますよね。僕はつるっとした肌触りのものが好みです。

ただ仕事の影響で体型が変わることが多いので、仮に理想の一枚に出会っても一カ月後にはピチピチ、もしくはゆるくなってしまうなんてことも日常茶飯事。最近もユナイテッドアローズで、素材・サイズ感ともに理想的な白の無地Tを見つけたのですが、体を大きくした結果、今着るとちょっと(筋肉を)アピールしているっぽいなと(笑)。

そんな事情もあり、僕にとって理想の無地Tに出会うことはすごく貴重な体験なのです。理想の無地Tが見つかったときの感動といったら、もう言葉にならないでしょうね」。

Tシャツの首回りのデザインは、紆余曲折を経てクルーネック推しに落ち着いているそうだ。

「色気とは隠していても滲み出てくるもの」と言う鈴木亮平さんの理想のTシャツ
「目立つからプライベートでは難しいんですけど、明るい色のトップス、新鮮でいいですね」。

「若い頃はVネック一択。しかもかなり深めのデザインが好きだったのですが、大人になってからはもっぱらクルーネックです。Vネックを着て色気を出したかったんでしょうね(笑)。

でも年齢を重ねるにつれて、色気とは無理して出すものではなく、隠していても滲み出てくるもの。そう気付きました。真の大人の色気を出すなら、やっぱりクルーネックかなぁと。

今日の撮影でコートを着させていただきましたが、そのときにインナーに着たエイトンのクルーネックTがすごく良かったです。やや大きめで肌に程良く密着するような感じに、大人の色気を感じました」。

こうした物事に対する強いこだわりは、無地Tのみならず芝居にも共通している。

「エイトン」のTシャツ

「色気とは隠していても滲み出てくるもの」と言う鈴木亮平さんの理想のTシャツ
インドで手摘みされたスビン綿を使用。双糸にすることで、光沢感としなやかさが加わり、抜群の着心地に。ゆとりのあるオーバーサイズシルエット。1万3200円/エイトン(エイトン青山 03-6427-6335)

本当に無地T探しってシンプルなだけに奥が深いですよね。今回の撮影では一瞬しか着ませんでしたが、この白Tは光沢があり肌触りがつるっとしていて程良く体にフィットする感じがかなり理想型に近い。

グリーンのニットもフワフワで質感がいいなと思っていたら、同じブランドだということを聞いて、なるほど納得です。


鈴木亮平が持つ“共感力”

春ドラマ「レンアイ漫画家」での“こじらせ”漫画家・刈部清一郎、現在オンエア中のドラマ「TOKYO MER~走る緊急救命室~」ではスーパー救命救急医・喜多見幸太、そして現在公開中の映画『孤狼の血 LEVEL2』では、上林組の組長・上林成浩を熱演。

最近では演技力の高い役者をカメレオン俳優と呼ぶが、鈴木の場合はそんな生ぬるいものではない。演技力というよりも憑依力とでも言おうか。

今回は凶悪な役柄と相まって、鈴木自身の狂気的な芝居が物語を圧倒的に支配していて感動的なのだ。

「お話をいただいたときは、これはやらねばと思いました。難しそうだなという気持ちはありましたが、同時に挑戦したい思いが強まりました。

今回演じさせていただいた上林は悪魔のような男ですが、どんな役でもキャラクターに寄り添うのが第一。共感して感情移入するのが僕の仕事ですから、演じる際、まずはそこがスタートになります。

今回の上林の場合、普通に考えるとなかなか共感しにくい部分も出てきますが、彼なりの人生があるんです。上林のすべてを受け止めて彼に寄り添うことは大変な作業でしたが、今後も芝居を続けていく限り、役に共感する、感動するという行為を続けなければなりません。そういった意味ではいい経験でしたね」。

「色気とは隠していても滲み出てくるもの」と言う鈴木亮平さんの理想のTシャツ
ニット5万3900円/エイトン(エイトン青山 03-6427-6335)、デニム4万1250円/アクネ ストゥディオズ(アクネ ストゥディオズ アオヤマ 03-6418-9923)、靴3万800円/ビューティ&ユース(ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ 渋谷公園通り店 03-5428-1893)、腕時計82万5000円/IWC シャフハウゼン(IWC 0120-05-1868)、その他すべて私物

自分本位の無茶苦茶な理由で、悪魔のように振る舞う上林に1mmも共感できなかった旨を伝えると「我々は普段から共感する訓練ができていますからね」と、意に介さない。ではどこに共感したのだろうか。

「うーん、そうですね……」と言い黙考すると、鈴木は研究者のような整然とした口調で、噛んで含めるように語りかける。

「一番は自分を守らなければならない、というところですかね。

理解しがたい彼の振る舞いは、すべて自分を守る術なのです。

そう考えると、恐ろしい彼を作ったのは彼自身ではなく、育った環境ということなのかもしれませんが、もちろん、同じ環境に育ってもそうはならない人もいる。だから、これは彼なりの正義といいますか。それから、人に裏切られることを極端に恐れて、常に防御線を張っていますが、決して嘘はつかないんです。卑劣な嘘つきや大事な家族を傷つけた者に対して牙をむくだけ。

劇中の上林は『この外道が!』という言葉を何度も吐くのですが、上林にとっては周囲の人間こそが道を外れているんです。切ない男なんですよね、上林って。そう考えていくと、俳優として彼の心情が理解できなくもないんですよ」。

そう静かに語ると、神妙な空気をかき消すように「あっ、もちろん観ていただく方は共感しなくてもいいんですよ(笑)!僕だけが共感すればいい話なので。『上林って、なんて外道なやつなんだ!』って思っていただければ。ある意味、感動すら覚えると思います」。

「色気とは隠していても滲み出てくるもの」と言う鈴木亮平さんの理想のTシャツ
ジャケット5万600円/RHC(RHC ロンハーマン 0120-008-752)、Tシャツ1万7600円/ロンハーマン 0120-008-752、パンツ8万1400円/ビズビム(エフアイエル トーキョー 03-5725-9568)、腕時計106万1500円/IWC シャフハウゼン(IWC 0120-05-1868)

インタビューを終え、メイクルームから出てきた鈴木が私服で着ていたのは、ネイビーの無地Tシャツ。

「このTシャツも悪くないですけど、まだ物足りない。理想とはまたちょっと違うんですよね」。と、スニーカーを履きながら目を細めつつ悔しそうに語る。

自分なりに役に寄り添っていかなければならない、芝居での共感探しと同じく、鈴木の無地T探しは、これからもずっと続くのだろう。見つけた先にあるのは、きっと言葉にならない感動に違いない。

俳優 鈴木亮平さん Age 38
1983年生まれ、兵庫県出身。現在公開中の映画『孤狼の血 LEVEL2』に出演。舞台は前作から3年後。広島の裏社会を治めいた伝説の刑事・大上章吾(役所広司)亡きあと、その遺志を受け継いだ若き刑事・日岡秀一(松坂桃李)。権力を用い、暴力組織を取り仕切っていた日岡だったが、出所してきた上林成浩(鈴木亮平)によって事態は急転していく……。https://www.korou.jp

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