今、世界中で一気に広まり始めている、電動キックボードやeバイクなどの次世代モビリティ。
新興メーカーが続々と誕生しているが、例えば長年、自動車やバイクを作り続けてきたメーカーが作るとどうなるのか……?
その回答を、BMWが見せてくれた。
■電動スクーター「クレバー・コミュート」
そもそも二輪車も作っているBMW。実は2019年に、立ち乗りの電動スクーターのコンセプトカー「X2 City」を発表したことがある。

そして今年6月にその進化版として発表したのが、新型電動スクーター「クレバー・コミュート」。
8月にはライセンスをスイスのSoFlow社に与え、現在市販化を進めているというから、実際に出会える日も近いはずだ。

「X2 city」との大きな違いは、折り畳めることだ。
「BMWの車なら3シリーズ以上のトランクに入れて持ち運びでき、ミニの車なら折り畳んで横倒しすれば収められる」という。
折り畳めてコンパクトってことは、同時に電車やバスなど公共交通機関でも持ち運びやすいってことでもある。

ハンドルが備わるいわゆるステム部分は、一般的なシングルバーではなく、2本のフレーム構成になっている。
市販化バージョンの詳細は不明だが、2本フレームにすることで剛性が高まり、操作性や安定性に有利だという考えだろう。数多ある新興メーカーと比べて、バイクや自動車のノウハウが違うんだよと言わんばかりだ。
そんなBMWのノウハウが詰まった電動スクーター、早く乗って体験したい!
■3輪eバイク「ダイナミック・カーゴ」
上記のクレバー・コミュートと同時に発表されたのが「ダイナミック・カーゴ」という名の3輪電動アシスト自転車のコンセプトカーだ。

こちらもクレバー・コミュート同様、8月にドイツの自転車メーカーであるCUBE社へライセンスが貸与され、多少デザインの変更は行われたものの、同じコンセプトで市販化が進められている。

BMWはそのバイク製造のノウハウを活かし、フロントセクションを傾斜させても、後ろの2輪は直立状態を保つ機構を採用。急カーブや滑りやすい雨の日でも、安心して子供や荷物を運べるようになっている。
しかし、体を傾けてのコーナリングはあくまで二輪のようなドライブフィーリング、ライダー(とあえて呼ぼう)は余計な荷重を感じることなく、気持ち良くライディングできるはず。

後輪部分は目的に応じてさまざまなモジュールが用意される予定だというから、毎日の買い物でも、子供の送り迎えでも、BMWの車同様“駆けぬける歓び”のある3輪自転車だ。
■eバイク「アイ・ビジョン・アンビー」
上記2台のライセンス貸与とともに発表されたのが、2輪電動アシスト自転車のコンセプトカー「アイ・ビジョン・アンビー」。

横一直線のハンドルに、円筒形でなくスクエアなフレームを多用し、リアはBMWのバイクでも見られる片持ちのスイングアーム。未来的で美しいスタイルのまま市販化されれば、先行する自転車メーカーや新興企業のモデルもあっという間に抜き去りそうだ。
ただ、デザインだけでなく、バイクメーカーとしての強みも遺憾なく発揮しているようで……。

同社によれば、本国ではこの手の電動モビリティに対し、道路の種類に応じて速度制限が定められている。
例えば都市部なら最高45km/h、郊外なら最高速度60km/hなど。確かに従来のeバイクでもモーターのアシストでそれくらいの速度を出せるが、そのためには漕ぎ続けなければならない。
しかしBMWが採った技術は、バイクでお馴染みのグリップスロットル。そう、ペダルを必死に漕がなくてもラクに速度を上げることができるのだ。

だからパリ市内みたいに30km/h以内と決められているエリアならペダルをこぎ、郊外の開けた道ではグリップを回す、なんてことが可能なのだ。
さらにスマートフォンの位置情報を使って、エリア毎の速度制限に応じて最高速度を自動調整する機能も備え、スマートフォンがカギの役割も果たすという。
BMWがこれまで培った技術力とデザイン性が遺憾なく発揮されたアイ・ビジョン・アンビー、これはBMW乗りも自転車乗りも、一度は乗ってみたいeバイクだろう。
籠島康弘=文