「この軍パンは学生のときに、確かレッドウッド(渋谷にあったセレクトショップの草分け)で買ったやつ。カットオフしたりリペアしたりして、もう40年近くはいているんだよね(笑)」。

“国民雑誌”とも評される「文藝春秋」。我々が抱いているその編集長のイメージと全然違う! そう、新谷学さんはまさに年季の入った服好きなのである。

文藝春秋・編集長 新谷 学さんが考える「着古してもみすぼらし...の画像はこちら >>

その軍パンとともにコーディネイトしたブルックス ブラザーズのブレザーもまた、学生時代に購入したものだとか。

「ブルックス ブラザーズとの出合いは結構古いです。大学3年生から卒業まで、伊勢丹新宿の売り場でずっとアルバイトしていましたから。今日のスーツ(写真上のコーディネイト)もブルックス ブラザーズ。思い返せば私の人生は、このブランドとともに歩んできたようなものです」。

そのブルックス ブラザーズの魅力を新谷さんは「控えめ」と表現する。アメリカの既製服の歴史を作ってきた由緒あるブランドだが、決して主張しすぎることがない。だからどんな服とも相性がいい。

文藝春秋・編集長 新谷 学さんが考える「着古してもみすぼらしくない」本物の服の話
「文藝春秋」編集部のデスクの前で。ホップサックのブレザーは、かつて存在した「ブルックス ブラザーズ ゲート」というエントリーラインのもの。シャツ、ネクタイもブルックス ブラザーズ。ベルトはダブル アール エル、靴はジェイエムウェストンのゴルフ。チーフ使いのバンダナとソックスの黄色が遊び心だ。

「例えばポロカラー(ボタンダウン)シャツをアルマーニのスーツに合わせても違和感はないでしょうし、ブレザーにブルネロ クチネリのニットを合わせてもいいと思う。いわばオリジンであることの強さですよね。

身体への馴染み方もすごくいい。“着せられてる感”がないんです」。

新谷さんの大人カジュアルにおいて重要な役割を果たしてきたブランドの代表がブルックス ブラザーズなら、アイテムの代表はラコステの定番ポロ「L.1212」だ。現在は30枚ほどを所有する。

文藝春秋・編集長 新谷 学さんが考える「着古してもみすぼらしくない」本物の服の話
我々も大好きな「L.1212」がずらり。「持ってきたのはいわゆるフレンチラコだけど、アイゾッド(かつてのアメリカ生産もの)も好きですね」。新谷さんの“ワニ愛”は深い。

「今までいろいろな取材を受けてきたけど、ラコステを紹介してもらえるのは本気でうれしいなあ。最初の一枚は白で、確かビームスで購入しました。以来、夏を迎えるたびに買い足しています。

やっぱり色がいいですよね。それにそのシーズンしか出ない色があるからやめられない(笑)。この“L.1212”もまた、本物の服だと思います」。

色褪せても擦り切れても、それはそれで格好いい。「自分の中でみすぼらしい気持ちにならないアイテム」であり、「第二の皮膚のような服」なのだとか。

ちなみにサイズは若い頃から3を愛用している。

そうそう、少し話が逸れるようだが、新谷さんに見習いたいのは服の着こなしだけじゃない。服が似合う体型を維持している点もぜひ見習いたいと思う。よりFUNに、よりコンフォータブルに大人カジュアルを装うために。

文藝春秋・編集長 新谷 学さんが考える「着古してもみすぼらしくない」本物の服の話
お馴染み「週刊文春」のスクープ“文春砲”。実は新谷さんが同誌編集長だった時代に生まれた言葉なのである。スクープを「獲り」、炎上から「守り」、デジタルで「稼いで」きたビジネス&リーダー論。身を削るような勝負の果てに得たノウハウには、説得力しかない!『獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論』新谷 学 著/光文社 1760円

「改めて考えてみると私は結局、本物と長く付き合うのが好きなんだと思います。チャンピオンのTシャツ、レインスプーナーのアロハシャツ、オールデンのタンカーブーツ。もともと服好きではありますが、この年になってもやっぱり服って楽しいんですよ。

いい服を着るとちょっと気持ちが上がる。いろいろ語りましたが(笑)、いちばん大事なのはそこじゃないかな」。

 

西崎博哉(MOUSTACHE)、清水健吾、山本雄生、関 竜太、井手野下貴弘、松林寛太、大村聡志、志賀俊祐、品田健人=写真(人物) 川西章紀=写真(静物) 加瀬友重、髙村将司、オオサワ系、黒澤卓也、今野 壘、野村優歩、HIROMI YAMADA=文

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