「キャンピングカーのリアル」とは…… 

今回登場してくれるキャンピングカー・オーナーは、コロナ禍をキッカケに日本中を“移動”して回るライフスタイルへシフト渡邉桂志さん。

あまりにも車での移動が好きすぎて、キャンピングカーをビジネスにまで昇華した渡邉さんのリアルを拝見しよう。

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選んだのは「移動ばっかり」のライフスタイル

経営する会社「ON GO Inc.」ではキャンピングカーのレンタルやリビルドを行い、「日常的に移動のある暮らし」をサポートしている。

特にキャンピングカーの再ブームが来ていると言われる昨今。その特徴について渡邊さんは「若い人のなかで関心が高まり、自然のなかで過ごしたいというニーズがある」という。

そうしたキャンピングカー熱の高まりを感じて生まれた北海道のプロジェクトにも参画している。

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ランドクルーザーやハイエース専門の中古車ディーラー「フレックス」の事業「MOVING INN」がそれで、帯広をはじめとして十勝エリアで、キャンピングカーのレンタル、オートキャンプサイトやトレーラーハウスを客室としたアウトドアホテルの経営を行っている。

独立し自社を営む前はイベント関連会社に勤務。オフィスは都心にあった。「これからは好きなことしかやらない」と決めて退職してからは、会社員時代とは真逆といえる生活ぶりを送る。

自宅は都心にあり、山中湖にセカンドハウスを構え、北海道、東京、山梨、長野、愛知、浜松、下田など、プライベートの拠点があったり、仕事相手がいたり、仕事場がそこになったりと、「移動ばっかり」の日々を送っている。


車中泊が実現した「時間に縛られない旅行」

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移動が日常になった背景には、東京で生まれ育ったことがある。

「僕は日野市の出身で妻も千葉生まれ。ともに帰るべき田舎を持っていないんです。学生時代も『夏休みで帰省して海や山で遊んできた』という友人の話しを羨ましく聞いていました。子供ができてからは、そうした体験をしてもらいたいという思いも生まれました」。

旅行に出る機会が多いのは以前から。車自体が好きだから飛行機旅より車旅を好み、レンタカーも使い点々としながら地方を巡ってきた。

ホテル利用のスタイルに変化があったのは、家族と1週間ほどかけて徳島から愛媛に抜けたレンタカー旅のあと。長期のトリップを快適にするためハイエースを購入し、荷室にベッドを置いて車泊できるようにカスタムをした。

「早速、山梨を起点にファミリートリップに出ました。長野を通って、岐阜、飛騨高山、白川郷、金沢、能登半島、そして岐阜から山梨へ。期間は1週間。車に泊まるようになって、どれほど以前の旅行がホテルのチェックインとチェックアウトに縛られていたのかが分かりました。

15時までチェックインできないとか。せっかくきたんだからチェックアウトぎりぎりまでホテルにいようとか。車泊ができるとホテルの事情は関係なく、時間に縛られない旅行ができるようになります」。

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制約なく旅行を楽しむため移動に関するルールを1つ設けた。

「19時くらいには停泊地に到着し、ご飯とお風呂を終わらせ、自分だけでも20時くらいに寝ることです。そうすれば早朝4~5時に僕だけ起きて出発でき、8~9時には次の目的地へ。子供たちは起きた瞬間から前日とは違う場所で遊べることになります。効率良く旅行が楽しめるので、道中はずっとこのスタイルを繰り返しています」。

気の向くままに移動する旅行にも少しの制約を。それは車旅を繰り返してきた渡邊さんの知恵なのである。


維持費はキャンピングカーに稼がせる

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車泊仕様のハイエースはキープしたまま、渡邊さんは昨年10月に会社名義でキャンピングカーを購入。日産バンをベースとする愛車は、中古を250万円で購入し、200万円をかけてカスタムしたキャブコンだ。コロナとなり長期旅行には出られていないが、家族の今後の楽しみになっている。

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「ベースは10年落ちくらい。外装や内装は木工ビルダーの友達がいて、彼らと作りました。居住空間を広くしたかったので、元々あった棚はほぼ取り払い、収納は最低限におさめています。スペックは標準のまま。

ガソリンはレギュラーで燃費はリッターで8kmほど。登録は8ナンバーで、普通免許で運転できます」。

キャンピングカーそれ自体のランニングコストはそれほど高くない。セカンドカーとして所有するなら2台分のコストがかかるが、それはキャンピングカーでなくても同様だ。

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「運用すればいいんですよ。乗らないときはレンタカーとして貸せばいいんです」。

そう、キャンピングカーは運用できる。セカンドハウスをバケーションレンタルで貸すようなサービスを行う会社があるのだ。実際、渡邊さんの愛車も普段はレンタカー会社に預けている。だから登録ナンバーは「わ」なのである。

「キャンピングカーを貸し出す会社のなかには、自社ですべてを保有するのは大変だというところがあります。その一方で、“使いたい”というニーズは高まっている。

そこで個人オーナーに『使っていないときはレンタルしませんか?』と声をかけるんです。僕らオーナー側にしてみれば、維持費を賄えるのでうれしい誘いですよね」。

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使いたいときに予約が入っていることもあるという。だが「年間で20~30万円は稼げると思いますよ」という渡邊さんの言葉は魅力的だ。しかも、車自体をレンタル会社に預けるため駐車場代もかからない。キャンピングカーライフへのハードルが一気に下がるサービスなのである。


ブームで終わるかカルチャーへ昇華するか

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さて、キャンピングカーブームの昨今。その背景には自然共生があることはすでに述べた。そしてブームで終わるかカルチャーとなるのか、その分かれ道が近いうちに訪れるともいう。

「バンライフ的な世界的ムーブメントの後押しもあり、自由なライフスタイルを求めている人が増えているのだと思いますが、日本のフィールドには自然共生のしにくさを感じます。湖畔に泊まりたいけれど、最も自然豊かな湖畔のある国立公園には泊まれない。テントすら張れない。

利用者のニーズにフィールドの整備が追いついていないんです」。

フィールドの整備が追いついていない状況が歪な光景を生み出しているとも。

「僕も高速のSA(サービスエリア)、道の駅をよく利用しています。そうするとモラル的にどうかなと感じる光景を目にすることがあります。SAのトイレで裸になって体を拭いていたり、道の駅の駐車場で椅子やテーブルを広げてご飯を食べる人も増えてきている。利用に関する規制を設ける道の駅もありました」。

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ルールなどを設けてフィールドが整備されればブームはカルチャーとなりうるが、未整備のままならトラブルを生み出しブームはやがて終焉を迎える。

自然共生をより促す観点からも「国立公園のなかで泊まれるようになったらいい」と渡邊さんはいい、その国立公園は“保護から活用の時代に入った”と言われて久しい。目下過渡期にあるキャンピングカー。より楽しく自由な未来は、ユーザーのモラルと環境の整備が鍵となるようだ。

 

キャンピングカーのリアル●永遠の憧れ、キャンピングカー。あんな使い方やこんな使い方ができたら……と妄想が膨らむけど、燃費は? 維持費は? 運転は難しくないの? レンタルはどう? あらゆる角度で探った“キャンピングカーのリアル”。


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佐藤ゆたか=写真 小山内隆=取材・文

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