青木源太のコミュ力向上メソッド●会議やプレゼン、上司や家族との関係など、コミュニケーションにまつわる悩みはつきない。話のプロ、青木源太さんの場合はどう対処している?
15年勤めた日本テレビを昨年退職し、フリーアナウンサーに転身した青木源太さん。
全5回の本企画では、話のプロである青木さんに「コミュニケーション力を磨くメソッド」を伝授していただく。
第1回は、プレゼンや会議でのコミュニケーション術について。緊張しすぎて大事なことが抜けてしまったり、会議中に辺りがシーンとなってしまったり……なんて経験をした同輩はきっと多いはず。
青木さん自身は、タレントの加藤浩次さんからのアドバイスで緊張をコントロールできるようになったというが、一体どんな魔法の言葉をもらったのだろうか。
青木流「緊張のほぐし方」

── 15年以上も人前に立ってきた青木さんですから、もう緊張することもないですか?
いや、僕も緊張することはありますよ。よほど肝が据わってない限り、誰だって大勢の前に立つときは緊張しますよね。
日テレ時代は朝の番組MCを5年間担当していました。ルーティンワークが長くなれば、スタッフもカメラクルーもドライバーまでみんな知り合い。でも、フリーになってからは現場ごとに「初めまして」なので、その都度緊張しますね。
── 会社員で緊張する場面といえばプレゼンやスピーチですが、プレゼンのご経験は?
情報番組で、ボードを背に視聴者へ何かを説明するのも、プレゼンテーションのひとつです。局アナ時代も、社内会議で企画を発表することはありました。
── そういう場面で緊張を和らげるコツは?
できることはいろいろありますが、まず一つ、準備が大切じゃないでしょうか。
── 確かに。不安だと余計に緊張しますね。
局アナ時代に箱根駅伝の実況を担当しましたが、当日までにめちゃくちゃ準備するんですよ。選手個人のことはもちろん、大学のこと、コーチのこと、大会の歴史やコースの特徴などを徹底的に調べる。
どんな局面にも対応できる情報量が必要だし、約8時間ずっと話し続けるわけですから。
でも、視聴者のみなさんに伝えるのはたった1~2割程度。残り8割は捨てる。使うことはない情報なんです。
── たった1~2割……。
それだけ準備してあの実況席に座るからこそ、極度の緊張から解放される。
会社のプレゼンやスピーチも同じですよね。準備は自分を安心させるための大切な作業だと思います。
加藤浩次さんからの核心を突いたアドバイス

── 人前に立つ際に役立つ方法はありますか?
人間って、緊張するとどうしても視野狭窄に陥るんですよ。だから、視野を広くしておくことが大切で、例えば大きなイベント会場で司会をするとき、僕は壇上から「遠くを見て近くを見る、遠くを見て近くを見る」という目の動作を取り入れます。
── 初めて聞きました。
ほかにも会場を右から左に見渡したり、柱の数を数えてみたり、電灯の数を数えてみるとか。会議室なら、手前を見て壁を見てという動作を繰り返すのもいいですし、話を始めたら出席者一人ひとりの目を見ていくのもいいですね。
── 視野を広げることでどんな効果が?
視野を広くすると、自分が客観視できるんです。「あ、今、自分は緊張しているな」「これだけ大勢の前で話すんだから当たり前か」といったように俯瞰することができる。そうすると、心に余裕が出て、緊張から解放されていくんです。
実は、客観視するきっかけをくれたのは加藤浩次さんなんですよ。
── 加藤さんに何て言われたんですか?
僕が極度に緊張していたとき、「緊張するのは失敗したくない、相手からよく思われたいという気持ちの表れだ」ってアドバイスを受けたことがあって。
それ以来、なぜ自分が緊張しているかを分析し、俯瞰できるようになりました。緊張しがちな人はぜひやってみてください。
失敗を認めて心情をさらけ出す
── 青木さんが人前で失敗したことは?
ありますよ、もちろん。盛り上がると思った場面で盛り上がらなかったり、逆もしかりで。想定外の反応があったときは心に揺らぎが生じるんですよね。
それが喋りにも影響するので、そうならないように場数を踏むのが何より大切ですが、失敗した場合は不安な心情をさらけ出すのも手です。
── 生放送でもさらけ出すんですか?
やりますよ。「すみません、静まり返ってしまいましたね」って現状を認める。あたふたするより、現場も視聴者も状況が把握できて安心すると思います。
プレゼンだったら「頭が真っ白になってしまいました、すみません。ちょっと資料見ますね」っていうのもアリ。変な空気のまま進むより、傷はちっちゃいんじゃないかな。
『人志松本のすべらない話』に学ぶリアクションの取り方

── 続いては会議ついてうかがいます。
日本人って、手を挙げて発言はしないけど、意見を持ってる人って多いじゃないですか。
なので、誰かを名指して当ててみたり、「何もなかったらいいですけど、何か意見がありますか?」って聞いたりっていうのは効果的だと思います。
── シーンと静まり返った会議だと、誰も発言できない空気にもなりますもんね。
お笑い番組の『人志松本のすべらない話』を想像するとわかりやすいんですが、ものすごいプレッシャーじゃないですか、あの空気。これからすべらない話をしなきゃいけないわけですから。
でも、ここがオチっていうところでみんなが絶対に笑ってくれる。松本さんも最後に「すべらんな~」って言ってくれる。その安心感があるんですよ。すべらない空気をみんなで作っている。
── 確かに。その約束事がないと安心して喋れないですよね。
そう。
── なるほど。場を自分のためにも温めておくわけですね。
そうです。みんなが話しやすい雰囲気は、会議としてもプラスですよね。貢献度は高いです。あと、話す人になりたいなら冒頭で発言しておくのが手です。
── どういうことですか?
会議って、「いつも話す人」「いつも話さない人」になんとなく固定されませんか? 一度、話さない人と認識されると、話し出そうとしてもなかなか間が与えられないので、会議の冒頭でなるべく早めに発言して「話す人」に認定してもらうと、後々発言しやすくなりますよ。
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「遠くを見て近くを見る」「失敗をさらけ出す」「自分が喋りやすい雰囲気を作る」など、すぐに実践できそうなアドバイスを教えてくれた今回のインタビュー。
次回は、話し下手を克服する方法について教えてもらう。
ぎぎまき=取材・文