「弊社の看板娘」とは……
人は誰しも“別の顔”というものを持っている。今回の看板娘もそうだった。
訪れたのはJR川崎駅、もしくは鶴見駅からバスで10分ほどの「ファンタジーサウナ&スパ おふろの国」。今ではサウナーの聖地のひとつとして名を馳せるが、2000年のオープン当時は、まだスーパー銭湯という業態が珍しかった時代だ。
館内の「サウナ食堂」はメニューが充実していることが有名。看板娘とご対面する前に、まずは腹ごしらえを。

お店の人に聞くと、圧倒的に人気なのは唐揚げ。生姜焼きもよく出るらしい。

迷った末に注文したのは昔からの定番だという「サバ粉醤油ラーメン」(620円)。これが、懐かしい醤油スープにサバの香りがまとう逸品だった。

大きな窓の向こうには国道1号線と鶴見川が見渡せる。

というわけで、お待たせしました。
今回の看板娘は会社員のかたわら、休日はサウナの「熱波師」として活躍する女性。熱波師とはサウナ室に入り、大型タオルで高温の蒸気をあおぐサービスを提供する人物のことだ。

看板娘、登場

「サウナの気持ちよさを表現しようと思って、白目を剥いた写真をTwitterに上げたら好評でして。それ以来、お気に入りなんです」。
なるほど。では、気を取り直して白目を剥かないバージョンをください。



サウナーの間で熱波は「脳みそが裸になる感覚」とも評されている。
実はサウナ室が予想以上に高温で、上の写真を撮りながら回していたICレコーダーがフリーズしてしまった。涼しい外気に当てたら10分ほどで復活したが、サウナを舐めてはいけない。
はなこさんは、こちらの「おふろの国」がホームグラウンド。要望があれば施設を通して全国に出張もするという。

熱波開始の1時間前から整理券が発行される。


熱波師の道に入ったきっかけを聞いた。
「2年半前に友達と断食体験ができる草津のホテルに行ったんです。
愛読書がまんきつさんのサウナエッセイ漫画『湯遊ワンダーランド』だったはなこさん。ようやく、念願だったサウナデビューを果たしたというわけだ。
同じ頃、テレビで見かけたのが現在の師匠である井上勝正さん。彼は元プロレスラーで、引退後はカリスマ熱波師にまで上り詰めた。

「テレビで熱波を送っている姿の気迫がハンパなかったので、なんとか連絡を取って、翌週には平和島の岩盤浴施設で師匠が熱波を送るイベントに出向きました」。
その勢いで師匠との距離を縮めたはなこさんは晴れて弟子入りを許された。ここで、井上師匠と店長の林和俊さんに、看板娘についてのコメントをいただこう。

師匠からは深い言葉が飛び出た。
「この曜日のこの時間に来たら彼女がいるっていうのがいちばん大事。宮川はそれがちゃんとできる。スジはない(笑)。
雇う立場の店長はいかがでしょう。
「井上さんに弟子入りを志願したこともそうですが、何事にも勢いがありますね。うちにも、ちょうど女性熱波師がいない時期に『やりまーす』と言って入ってきたんです」。

現在、女性の熱波師ははなこさんを含めて3名ほど。男性の熱波師は女湯に入れないので、熱波を受けたい女性客にとっては貴重な存在だ。
今年11月に新木場のファーストリングで行われた「大サウナ博2021」で行われたアウフグース大会では、はなこさんたちの関東乙女選抜が3位に入賞した。

また、新幹線の移動中には出張熱波の告知イラストを描いてSNSで発信するのも恒例だ。

さらに、熱波で使うアロマやハーブにもこだわっている。
「呼吸の邪魔にならないように、香料をいっさい使用しない天然のものを厳選しています。今のマイブームはスパイスやハーブを煮出したお湯でロウリュすることです」。
ロウリュとは、サウナストーンにアロマ水をかけることで熱い蒸気を発生させ、室内の体感温度を一気に上げること。

というわけで、最後に読者へのメッセージをお願いします。

【取材協力】
ファンタジーサウナ&スパ おふろの国
http://ofuronokuni.co.jp
飲食店で働く166人の“看板娘”をご紹介してきた連載がリニューアル。さまざまな企業や団体で働く女性にフォーカスする題して「弊社の看板娘」。仕事内容やプライベートについて鋭く切り込むとともに、「この人と一緒に働いて楽しい」と思っている推薦人にもご登場いただく。
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石原たきび=取材・文