CD不況、インターネットの普及、iPodの登場、SNSの隆盛……ゼロ年代は音楽を巡る環境が激変した10年だった。そんな時代に音楽を聞いて育ち、現在音楽業界の最前線で活躍するアーティストたちは、ゼロ年代にどんな音楽を聴いてきたのか? ゼロ年代の音楽を特集した『ケトルVOL.44』で、こう答えている。


ロックバンドamazarashi のヴォーカル&ギターの秋田ひろむが選んだのは、GOING STEADYの『さくらの唄』だ。小6から音楽をやってきて、ずっと音楽で生きていきたいと思っていた秋田だが、当時はバンドは鳴かず飛ばずの状態で、当時は新しいバンドや流行に斜に構えていたのだそう。しかし、『さくらの唄』は、「強引にねじ伏せられたというか、聴いた瞬間馬乗りにされて『もう完敗だ』」と思わされるほど衝撃を受けたそうだ。

中でも『東京少年』という1曲は、「これは絶対ですね。完璧です。間違いない」と語るほど心酔した1曲。
6月にLIVE Bluray&DVD『理論武装解除』をリリースし、菅田将暉への楽曲提供や、文芸誌への寄稿など、バンド以外にも活動を広げている秋田だが、一時は教科書のようにこのアルバムを聞くほど大きな影響を受けたそうだ。

2017年にファーストアルバム『PINK』をリリースした「NEO-ニューエキサイト・オンナ・バンド」CHAIのヴォーカル&キーボードのマナは、ORANGE RANGEの『musiQ』を挙げている。このアルバムはマナが自分で初めて買ったCDで、当時は洋楽を聴いておらず、「テレビから流れてくるものだけが私の音楽」だったそう。

ORANGE RANGEは、とにかく楽しそうなイメージが好きで、CHAIのメンバーとカラオケに行った時は必ずORANGE RANGEの曲で盛り上がるほど。今でもツアーの移動中に聴いており、「音楽の楽しさを教えてもらった」と、語っている。

トラックメイカー/DJ で、初の映画への主題歌&音楽提供となる『寝ても覚めても』が9月1日に公開されたtofubeatsが選んだのは、イルリメの『Quex』だ。
1990年生まれのtofubeatsにとって、ゼロ年代はまるまる10代の10年間。14~15歳で自分で音楽を探し出すようになり、日本語のラップに興味を持ち始めていた頃にこの作品に出会ったそうだ。

tofubeatsは『Quex』について「『ヒップホップ』とか『ラップ』といったイメージに全然とらわれてない感じが最高」と語っており、中でもお気に入りは『今日を問う』という曲なのだそう。特に好きだというこの曲について、「前進しているように感じる素晴らしいエディット感のあるトラックと、それにまったく振り切られずにビシっと合わせるイルリメさんのラップスキルの高さが素晴らしい」と、語っている。

◆ケトル VOL.44(2018年8月17日発売)