昨年、デビュー40周年を迎えた漫画家・いくえみ綾さん。いくつもの作品が映像化され、幅広い年齢層に多くのファンを持ついくえみさんの作品には、常に魅力的な男子が登場し、「いくえみ男子」とも呼ばれますが、彼らにはモデルがいるのでしょうか? いくえみ先生曰く「モデルはいない場合の方が多い」そうですが、いくえみ男子の親しみやすさは、どこか見覚えのある顔のせいかもしれません。


例えば1990年代に多く登場するのは、先生も「好きすぎて、絵柄にも影響が出ました」と語る奥田民生さんのそっくりさん。『I LOVE HER』や『10年も20年も』など、彼を彷彿とさせるキャラクターが多く登場します。

2000年代前後には香取慎吾さんに似た人物、そして松山ケンイチさんのような奥二重のキャラが登場。『潔く柔く』の最終巻では彼の出演作『誰かが私にキスをした』が収録されています。

その後は塩顔系の流れへ。「実写化するなら綾野剛さんや長谷川博己さんかな?」なんて妄想も膨らみます。一貫するのは「ややタレ目・口が大きい」こと。ちなみに顔相学的に口の大きい人は社交的、タレ目がちな人は温厚で協調的とされますが、いくえみ男子顔を目指す方に挑戦してもらいたいのは、口を大きく見せるエクササイズ。姿勢を正し口を「あ」「い」と大きく動かしましょう。表情筋が鍛えられることで口元がシャープになるのだとか。これであなたもいくえみ男子に?

【いくえみ男子の歴史】


●1991年~ 「奥田民生期」(代表例 新堂央人 『I LOVE HER』)


ヒロインが恋する担任教師。太めのはっきりした眉毛と大きな口が特徴。
連載時は「今日は民生に何を着せよう」という感覚で描いていたのでは。『愛があればいーのだ』の主人公はじめ初期から現在にかけ、民生顔のキャラは最多数。

●2000年~ 「香取慎吾期」 (代表例 椿心 『ハニバニ!』)


香取慎吾さん本人が髪型を真似したという逸話もあるキャラ。自分に想いを寄せる女の子に「SMAPのキムタクが好き」と言われ残念がる、なんて小ネタも。後の『プリンシパル』に登場する和央と弦は顔面がまさに香取×キムタク。

●2004年~ 「松山ケンイチ期」 (代表例 真山稔邦 『潔く柔く』)


「ごくせん」でデビューし、2004年には映画に初主演した松山ケンイチがブレイクし始めた頃から、徐々に少し鼻に丸み&奥二重の傾向に。後の連載『太陽が見ている(かもしれないから)』の楡もこの系統のお顔。

●2012年~ 「綾野剛期」 (代表例 清武迪 『トーチソング・エコロジー』)


自分にしか見えない不思議な存在と暮らす役者志望の男。細目・塩顔・俳優という設定から、調査隊では「綾野剛さんっぽい?」という結論へ。2012年といえば彼が連続テレビ小説『カーネーション』に出演しブレイクした頃。

●2014年~ 「長谷川博己期」 (代表例 高比良泉 『私・空・あなた・私』)


今やドラマや映画、CMなどでマルチに活躍する人気俳優・長谷川博己さん。庭師見習いの泉は、角ばった顔の骨格と細めの目元、大きいけど薄唇な口元が長谷川さんにそっくり。
泉の育ての親も、実は長谷川さんにそっくり。

◆ケトルVOL.57(2020年12月15日発売)
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