屋敷 「それまで長いこと『あとは足りないのは賞レースだ』って言われ続けてきたんで。俺らも賞レースで結果さえ残せば売れると思ってたんですけど、それがもうしんどくなってきて。賞レースって不確定な要素が多すぎるし、100%そこに賭けるのはしんどいなって思ったタイミングで。それで、2019年にYouTubeをはじめてから少しずつ風向きが変わっていったというか」
屋敷は社員やマネージャーなどを集め、「YouTubeをやりたい」と宣言。それを実行に移した結果、「不思議なもんで、賞レースはもういいかなって思った年に決勝行けた」(嶋佐和也)そうだが、初のM-1決勝の舞台は、やはり特別だったという。
屋敷 「決勝進出が決まったときは、もう今までで一番うれしかったです。ずっとガチャガチャ引いてたけど、当たりも入ってたんやって。行けへん人生かと思ってたけど、行けるほうの人生やったんや、って。それがすごいうれしかったですね」
嶋佐 「ラストイヤーだった囲碁将棋さんとか、ずっと一緒にやってきた先輩のダイタクさんとかに『おめでとう、がんばれよ』って言われて、泣いちゃいましたね。自然と涙が……やっぱそれだけ長いこと青春してたってことですよね」
そして翌年のM-1でも決勝に出て、評価を確かなものにしたニューヨーク。
嶋佐 「そこが一番、合っているところかもしれないですね。『おもんない』の部分は特に」
屋敷 「芸人としての生理的なもんですよね、それは。それをやる芸人っておもんないんちゃうか、っていうのはあると思います。ただ、そういうのも少しずつ変わってきますけどね。俺らもオンラインサロンやろうとしてますし、自分の版画でクラウドファンディングやりましたし。俺は個人的には、ネタがおもろかったらなにやってもナメられへんと思うんで。副業やろうがなにやろうが、ネタがおもろいやつであればいいと思います」
M-1終了後は飛躍的にテレビへの露出が増え、バラエティ番組でひっぱりだこのニューヨーク。YouTubeで公開されたドキュメンタリー映画『ザ・エレクトリカルパレーズ』は各方面から絶賛されており、2021年が“ニューヨークの年”になるのも、決して夢ではなさそうだ。
◆『クイック・ジャパン』vol.153(2020年12月25日発売/太田出版)